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読んだ本を僕なりに解説とか紹介しています。

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  • 小説家が書かれた小説 を読む

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最近の記事

たゆたう・長濱ねる

たゆたう・長濱ねる・角川文庫・2023年9月1日初版発行、を買った。2019年に欅坂46を卒業した長濱ねるの初エッセイ本、雑誌『ダ・ヴィンチ』の連載「夕暮れの昼寝」(長濱「ねる」であるから、こういうタイトルにしたんだろーね)から自選、加筆修正し、文庫化したもの、とのことである(「はじめに」「おわりに」と「私の仕事」は書き下ろし)。数えてみると、全部で22のエッセイが入っていて、それプラス「はじめに」「おわりに」である。それら題字のすべては、本人の直筆文字となっているのもキュー

    • 浪花少年探偵団・東野圭吾

      新装版 浪花少年探偵団・東野圭吾・講談社文庫・2023年2月15日新装版第23刷発行、を読んだ。五編収録のユーモアミステリである。連作短編ではあるが、これが著者の最初の短編集である。収録作品のいくつかを、あらすじ紹介等を以下に。 その朝、竹内しのぶが自分の受け持つ6年5組で生徒の出席をとると、いまだ休んだことのない友宏の返事がなかった。一時限目の授業をしていると、教頭がやってきた。廊下に出ると教頭はいう、友宏の父が亡くなったという連絡があったと。友宏の父は、大阪の大和川の堤

      • どくとるマンボウ航海記・北杜夫

        どくとるマンボウ航海記 増補新版・北杜夫・中公文庫(2023年2月25日 初版発行)を読んだ。 ドイツ国に行こうと思った神経科の医者である著者(マンボウ先生)は、留学生試験を受けたが、文部省当局に書類選考で落とされた。が、医局の先輩でニューヨークの病院に一年間勤めていて帰ってきたばかりのMが、「船医になったらどうだ。そうして逃げちまうんだ」といった。それはいい、と思った。水産庁の漁業調査船が船医を探しているというので、乗ることにした。船は照洋丸という瀟洒な船で、居室は二人部

        • 書店ガール・碧野圭

          書店ガール・碧野圭・PHP文芸文庫(2015年4月28日第1版第28刷)を読んだ。稲森いづみと渡辺麻友の出演で2015年にテレビドラマ化されたことでも有名な、書店が舞台の小説である。書店ガールはシリーズ化され、第7作目で完結。今回読んだのは、その1作目である。 ストーリーは、6月のある日、小幡伸光と北村亜紀の結婚披露パーティーから始まる。伸光は大手出版社の一ッ星出版のコミック編集者、亜紀は大手書店のペガサス書房の店員である。二人の出会いは1年ほど前である。ペガサス書房で漫画

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          わしらは怪しい探険隊・椎名誠

          椎名誠の「わしらは怪しい探険隊」(角川文庫・令和4年3月15日76版発行)を読んでみた。東ケト会で行く男たち探検隊の話。 「東ケト会」とは「東日本何でもケトばす会」のことで、日本のさまざまな離れ島に出かける会。7回目の東ケト会では、三島由紀夫の『潮騒』の舞台にもなったことがある、三河湾に浮かぶ三重県の島に行くことになった。7日末日、伊良湖岬で小さな漁船をチャーターして、島に到着した十名の東ケト会探険隊の男たち。その顔ぶれは、以下である。    椎名誠=東ケト会の会長で、隊長

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          裏切りのホワイトカード 池袋ウエストゲートパークXIII・石田衣良

          今回読んだのは、石田衣良の『裏切りのホワイトカード 池袋ウエストゲートパークⅩⅢ』文春文庫(2019年9月10日第1刷)である。池袋の西一番街の果物屋の店番のマコトが街のトラブルを解決する、おなじみのIWGPシリーズの13作目である。いつものように、小説誌「オール讀物」に掲載された、4つの季節の話が収録されている。 三月の土曜、マコトの店に宅配便ドライバーをしているジュンジが小三の息子のトオルを連れてやってきた。ジュンジは離婚して半年以上になり、トオルとは離れて暮らしている

          裏切りのホワイトカード 池袋ウエストゲートパークXIII・石田衣良

          変身・カフカ

          超有名なカフカの『変身』(新潮文庫 改版 2022年4月30日121刷発行)を読んでみた。この小説を読んでひとつ思ったのは、仕事に行きたくないからといってももう大人なんだからぜったいにそこからは逃れられないんだかんなコノヤロー、なメッセージを向けた、大人のための小説だなあと。子どもの場合は、自分の意思で学校に行きたくなければ行かなくても別にいいんだかんね……。 あらすじはこうだ。朝、グレーゴル・ザムザが目覚めると、巨大な虫の姿になっていた。自分の部屋のベッドの上で、仰向け状

          変身・カフカ

          十字屋敷のピエロ・東野圭吾

          今回読んだのは、十字屋敷のピエロ・東野圭吾・講談社文庫・2020年10月9日第91刷発行。 この小説を読んでいって、まず、ユニークであるという感想を持った。それは、「ピエロの視点」という構成が、である。ピエロはただの人形だ。なのに、まるで人間のように、その目で見たことを、小説の途中途中で、一人称「僕」の視点で、読者に向けて語ってくれるのである。 どうなってるんだ、これは。読者の僕は思った。ひょっとして人形の目に小型カメラが仕込んであって映像としてみれるしかけなのか。あるい

          十字屋敷のピエロ・東野圭吾

          女學生奇譚・川瀬七緒

          川瀬七緒の『女學生奇譚』徳間文庫(2019年7月15日初刷)という小説を読んでみた。こんな話。 ある日。フリーライターの八坂駿は、火野正夫編集長に呼び出され、仕事の依頼を受けた。ある女性が、古本に挟まれた「この本を読んではいけない……」で始まる警告文が書かれた紙を見つけた。本は彼女の兄の家にあったもので、兄は謎の失踪をしている。それはこの警告を破って読んだせいではないか、と彼女は思っている。今回の仕事の依頼は、彼女と会い、謎を探り、記事にしてくれ、というものであった。 さ

          女學生奇譚・川瀬七緒

          芽むしり仔撃ち・大江健三郎

          大江健三郎の「芽むしり仔撃ち」新潮文庫(2014年4月25日47刷改版•2023年4月5日53刷)を読んだ。小説は「夜更けに仲間の少年の二人が脱走したので、夜明けになっても僕らは出発しなかった」で始まる。猛々しい雨の翌日の朝遅く、僕らは、村人たちの視線の中で、連れ戻された仲間二人と再び顔を合わせた。脱走はまたも失敗だった。感化院の院児である僕らは、教官に引率され、集団疎開を受け入れてくれるところを探し求めていた。この旅は一週間で終わる予定のはずが、受け入れてくれる先がみつから

          芽むしり仔撃ち・大江健三郎

          悪意・東野圭吾

          柴田翔の『されど われらが日々──』は、遺書や手紙が長い、と僕は前回の読書ブログに書いた。で今回読んだ小説、これも手記や記録の文章が長かったりするのだ。みなさんそんなに長く書いて疲れませんかね??…… そんな小説は東野圭吾の『悪意』(講談社文庫)である。小説は、容疑者の手記で始まる。 4月16日、事件は起きた。その日、児童文学者の野間口修は、人気小説家の日高邦彦の家に行った。日高は来週からバンクーバーで暮らす予定で、当分会えないので、友人の野間口は会いに行ったのだ。家に行

          悪意・東野圭吾

          されど われらが日々──・柴田翔

          ── そりゃさ、若いころはムツカシイことに頭つっ込みたくなるけれど、そのめくるめく過剰さの正体は何なんだ?…… ということで今回読んだのは『されど われらが日々──』(文春文庫新装版)。柴田翔の第51回芥川賞受賞作である。1964年、文藝春秋新社から刊行された。そのあらすじを紹介すると……。 夕方の秋の雨の日、主人公の東大大学院生の「私」(大橋文夫)は、古本屋に寄った。発売して日が浅いHの全集を見つけ、買った。数日後の土曜日、私の下宿に婚約者の節子(私の遠縁の親戚)がやっ

          されど われらが日々──・柴田翔