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初恋をいかに短く表現出来るか試してみる(店の子)②〖終〗

「ねぇ、あのおっさん! 昨日もまた来てたでしょ!? ヤバいって、絶対アンタ狙われてるよ……!」

 裏で作業をしていると、ギャルの友達が声を掛けてくる。

「え?」
「前にも言ったじゃん! アンタが居ない時は、絶対店に来ないおっさん! シフト把握してるって、ストーカーでしょ!?」

 派手な見た目と裏腹に、仕事も丁寧で、よく気遣ってくれる。
 そんな純粋に優しい彼女へ向かって、俺は首を傾げる。

「うん?」
「だーからー! あんな一回り以上離れたおっさんに付きまとわれてるの、ヤバいって! 店長に相談しよう!」
「うーん……お得意さんって事だろうし、仕事の都合で同じ曜日に来るだけかもしれないぞ」
「のんびりし過ぎ! 寂しいけど、最悪バイト辞める事も考えなきゃかなぁ……」

 心配してくれる彼女に、笑って返す。

「辞めないよ。ここのバイト、俺好きだし」
「う〜……だったらやっぱ、店長に相談しよ!」
「平気だって。本当に何も無いし。何か問題が起きたら、相談するよ」
「だーからー! それじゃ遅いって〜!」

 再び笑って返しながら、時計を確認する。


――そろそろ仕事が終わって、ここへ寄ってくれる時間。


 目の前の作業に区切りを付けて、表へ戻ろうと向きを変える。

「あの人なら大丈夫だよ。本好きなら、良い人だって」
「いやいやいや」

――あ、今日はもう少し遅いかもしれない。確か会議の予定がパソコンに入っていた。


 歩いている途中、こっそりとスマホを触って、あの人のSNSが更新されていないか確認する。

「向こうに戻るの? 本当に気を付けなよ」
「ありがとう」


――あの人がやっと声を掛けてくれた。

 本好きだから、職場の近くの本屋なら接触するチャンスがあるかもしれない……そう考えたのは正解だった。


 昔――俺が落とした合格祈願のお守りを、あの人は雨の中、わざわざ届けてくれた。

 俺の一目惚れ。初恋。

 一瞬だったから、何も聞けなかった。
 ただ唯一分かったのは、持っていた封筒に書かれた職場の名前だけ。

 でも恥ずかしくて、とても自分からは何も出来なくて……。


――だから、今が凄く嬉しい。

 人は恋をすると周りが見えなくなって、何でもすると書かれた本を以前に読んだ。

 確かに、何をしてでも相手の事を知りたくなる。
 もっと自分の事を知って、存在を認識して欲しいと願ってしまう。

 特に初めての経験だと、限度が分からない。


――でもきっと、皆が通る道。


 これがハッピーエンドに繋がれば良いなと、切に思う。

「いらっしゃいませー」

 あの人が入ってくる姿を視界の端で捉えつつ、俺は本棚への補充を続けた。



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