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【教室の風景】「うちの親、めっちゃ厳しいんですけど」

教育と探求社では「コーディネーター」と呼ばれるメンバーが、各地の学校の探究学習のお手伝いをしていて、探究学習の授業にもよくお邪魔しています。

探究している生徒たちから、おびただしい数の言葉や表情が生まれては消え、生まれては消えていく様を間近で見る中で、時折思いがけないような言葉や場面に出会うことがあります。

コーディネーターたちが受け止めてきたそんな瞬間を、紹介します。

「困っている人」は自分だった

「ソーシャルチェンジ」に取り組むクラスを訪問した時のこと。

「困っている人を助けて、笑顔にする企画を考える」が趣旨のプログラムなので、「困っている人」が誰なのかを、決めておく必要があります。

まず、自分が考える「困っている人」を付箋にあるだけ書き出し、仲間と話し合いながら、一つだけ選びます。それぞれの価値観や思い入れがあるだけに、難しいところです。

グループディスカッションでにぎやかな教室で、シーンとしているグループがありました。全員黙って、机の真ん中あたりを見つめたまま。

机には「困っている人」の候補が書かれた付箋が2枚。
「親がきびしい人」と「授業中にお腹が空く人」。

「何してるのー?」メンバーに声をかけてみました。

「なんか、(「困っている人」を一つに)決められなくてどうしようと思って…」
少し投げやりな返事で、男子生徒が付箋を指差します。

「お腹が空く人」を提案したのは、授業中にお腹が鳴るのを気にする女子メンバー。「俺は『親がきびしい人』に(提案)したんですけど」

なるほど…。そもそもなぜ君はこれを提案したの?

目を伏せがちだった彼が顔を上げ、私を見て話し始めました。
「これ、うちの親のことなんですけど。うちの親、めっちゃ厳しいんですけど」

何をするにも、すごく反対される。やりたいことを、なかなか自由にさせてもらえないんです。

「困っている人」は、彼自身でした。

話を受け止めている間、男子生徒は続けます。「お腹が空いたら何か食べればいい。それで解決することじゃん」
女子生徒も返します。「だって予期しないときに鳴っちゃうんだもん」

平行線が続きます。

「自分たちでも助けられるから」

同じクラスの、別のグループにお邪魔しました。ややダレ気味で「休憩中」。

いま、どんな感じなの?

「(「困っている人」の候補が)2つ出てるんですけど、どっちも助けたいってなってて。どっちかに決められなくて、お手上げの状態なんですよね」と、男子生徒。

見ると、
「世界中のウクライナの国民」と「シングルマザー シングルファーザー」

そっかあ…じゃあ心が動くのはどっち?

「それでいうと、自分たちでも助けられそうだな、と思えるのはシングルマザーの方かな」と女子生徒。

「ウクライナの人たちは、自分たちでなくても何かしら支援はあると思う。シングルマザーの方が、自分たちでもできることが何かしらありそう」と続けます。

「自分たちでもできることがありそう」が補助線になったのか、止まっていた言葉が再び出始めました。

見てきた人:須藤正美
前職時代、教育と探求社が開催するイベントに参加。その場で生徒たちや関わる大人たちの熱量に触れて感激し、転職しました。子どもたちが社会に出ることや大人になることに不安になるのではなく、ワクワク、ドキドキするような出会いや場を創りたいと思って、学校コーディネーターをしています。

【7/30(土)開催 先生向け】ナレッジカフェ Vol.1「これからの“教科の授業”を考える」

「総合的な探究・総合の時間」の実践を深める一方で、従来の「教科の授業」へのモヤモヤを抱える先生方からのお悩みをよく耳にします。

「ずっとこのままでいいのか?」「教科にも探究のエッセンスを入れられないか?」……。

そんな悩みを、実践豊富な3人の先生方の事例から解きほぐす実践事例共有会 と ワークショップを開催します。

教科と探究が生み出すシナジーについて、じっくり考える2時間!同じ課題を抱えた先生方を、是非たくさんお誘い合わせの上、ご参加ください。

事前申し込みURL
https://quest.eduq.jp/knowledge-cafe-1/
<日程>
2022年7月30日(土)  17:00-19:00
■リアル会場:ナレッジキャピタル ナレッジサロン(グランフロント大阪 北館 7F)
■オンライン会場(ZOOM)
お申し込み後にZoomのURLが記載されたメールをお送りしております。ご確認をお願いいたします。ZOOMのチャット機能を使用します。

(リアル会場:16:30〜入室開始/オンライン会場:16:50〜入室開始)

【登壇者】
石川 萌先生(東海大学付属大阪仰星高等学校中等部・高等学校、英語)
中等部2年(中学2年) 英数特進クラス担任
2019年度から東海大学付属大阪仰星高等学校に勤務し、中学校英語・高校探究を担当。おまかせHR研究会会員。毎年4回、大阪大学で教職実践演習の授業を担当。大阪私学情報化教育研究会役員。
バトントワリング全国大会グランドチャンピオン4回、世界大会で2連覇など、世界を舞台に活躍。現在も国内外でバトン指導を行う。

吉澤 陽先生(聖心学園中等教育学校、社会)
2013年度から聖心学園中等教育学校に勤務。自分らしく社会に参加していく態度や能力の育成をめざし、地域を巻き込んだ探究学習「飛鳥プロジェクト」を主導する。2019年度からは、6年間の探究学習の体系化に着手し、探究学習全体のカリキュラムを統括する。教科教育では、中学校地理・歴史・公民、高校世界史・日本史・地理・政治経済・倫理を担当。地域経済分析システム(RESAS)を活用した中高生向け副教材作成に携わり、内閣府RESASの専門委員。奈良県高等学校教育研究会「総合的な探究の時間」部会幹事。

延沢 恵理子先生(山形県立東桜学館中学校・高等学校、国語)
7年前に開校した山形県初の中高一貫校で、2期生の学年主任を担当して6年目。教員生活28年中23年間進路指導に携わる。2022年6月には東北大学高等教育フォーラムに登壇。他県の進学校や県進連会議での講演経験も多数。震災後、自ら立ち上げた「全国女性進路指導研究会」「山形若手中堅進学指導研究会」「山形県高等学校国語学習指導改善研究会」など5つの会の事務局を担当し、現場を探究している。

モデレーター:本田友美
教育と探求社 大阪営業所コーディネーター。大阪の学校をサポートする傍ら、神奈川県の私立高校で非常勤として数学と探究の授業を担当。勤務校でクエストエデュケーションのプログラムを自ら実践し、そこで得た知見をコーディネーター業務で活かしている。

<お届けしたいこと>
・教科と探究を接続されている先生の取り組み
・教科と探究が生み出すシナジー効果
・教科学習で探究の要素を実践するための秘訣
・今日から実践できること
・同じ課題を持った仲間とのつながり

【参考】
自ら課題を発見し、その解決を探究する「ソーシャルチェンジ」のサイト
探究学習はじめの一歩!【実例】探究学習のテーマ16種
「探究学習」の最先端 教育と探求社の総合パンフレット
教員向けイベント情報

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