ブランディングと、顧客の継続課金をロックすること。
Voicy No.0123 2022年2月24日放送
サブスクと定期購入モデル。
世の中でサブスクが一般用語になりました。
厳密に言うと意味は違いますが、サブスクというのは定期購入モデルです。
昔、定期購入というのと似た言葉に頒布会という言葉がありました。毎月フルーツが届くとか、通販ビジネスの大手が、毎月あるジャンルの物をお届けするという頒布会というモデルのことで、もちろん今もあります。
日本の巨大小売企業のホールディング会社で新規事業のアドバイスをしていたら、そこが老舗の通販会社を1000億ぐらいで買って、「2年ぐらいで立て直せるか見てください」と言われたことがあります。
そこはカタログ通販のビジネスモデルが古かった。
『コロコロコミック』や『ジャンプ』のようなといっても、世代によってはわからないでしょうが、昔の電話帳のような分厚い本が届いて、そのカタログで購入をするという本当にオールドスタイルの通販会社でした。
そのカタログを見て家庭の生活用品や洋服、身の回り品を買ってもらうのです。
そこには頒布会というモデルがあり、頒布会の数字も見せてもらうと売上も1000億ぐらいで、頒布会がいかに安定した収益を生むかというのを見ることができました。
その会社はおそらく50年ぐらいやっています。創業者が80~90歳とか異例の長期政権だと変わってきますが、経営者一世代でできるのが20~30年です。1世代ではないぐらい長く続いている老舗が、既に頒布会モデルで、かなりの収益を取るかたちにしていたのです。
そのあと健康食品の分野でも定期購入モデルを導入するところが出てきました。今ではサブスクで何でもできるのではないかというので、オフィス家具の月額もあるほどです。
自分は、頒布会がすごく面白いモデルだと思います。ある分野のファンの方に、季節ごとにいろいろな種類の物を送るのはすごく楽しいことですし、そのビジネスモデルは活用のしがいがあるからです。
継続されるだけでいいのか。
サブスクはアプリやスマホの世界まで派生していて、「サブスクロックしちゃう」と言う人もいるくらい。アプリで継続的にお支払いいただくわけです。
NetflixやLa Zoneも同じです。新しいタイプの新聞というか、ビジネス情報を提供しているNewsPicksも、継続課金モデルだったりします。
オレもやっているオンラインも、継続的にお支払いいただき参加していただいているからサブスクモデルだよね。それを考えると、習い事もサブスクモデルになります。
お客様との関係で、継続購入するモデルに参加していただくと収入は安定します。けれども顧客の継続課金をロックさえすればいいという考え方と、継続的にお客様やファンの方と接点を持ち続けてファンづくりをしていきたいという視点は、両方が必要です。
計算上は、毎月の新規獲得数と終了数との差異にプラスがあれば毎月の課金が上乗せされていきますが、そのビジネスモデルに乗っていることだけを考えていたら、もうブランドではなくなくなってしまいます。
きちんとやっているところは、サブスク継続課金でお使いいただくというシステム的な関わりをしながら、その方々とどういう交流をしていくか考えています。ファンコミュニケーションと継続課金の両面をしていくのがブランドです。
それを「定期購入さえしてもらえばいい」と、ビジネスシステムだけで売上を囲っていこうとするのは、ブランドのスタンスではありません。
ブランドは「あなたじゃなきゃダメ」という状況です。
ファンの方がいてくださって、そのファンの方との関係をどうするか考えるのがブランドづくりであり、ブランディングです。
ファンづくりがブランディングで、ブランドはファンがいることです。継続課金をロックしたからといって、ファンとのコミュニケーションやイベントを考えないのであれば、もう立ち位置としてはブランドではなく、強固な課金モデルをつくったビジネスになります。
でも、それはそれで、ビジネスとして考えれば素晴らしいと思う。
よくネットの世界でも騒がれているのが、解約させないビジネスシステムを持っている会社です。これだけを聞くと意味がわからないですよね。
昔のスマホのビジネスモデルの中に、着うたがありました。
月に数百円をもらって「着うた」が使えたのですが、ひどいものは、知らないうちに課金し続けていて、それを忘れさせてしまうのです。アクティブではないユーザーが課金していることを知っていて、それを放置してお金をもらい続けている企業が実際にあったわけ。
システムと愛着。
アクティブユーザーじゃない人が忘れている課金を「儲けとしてすごくうまみがある」と捉えている企業と、サブスクモデルで解約させないようにしている企業があります。ブランディングのコンサルを依頼してきた会社に、そういう会社がありました。それでは仕事を受けられないし、ブランドづくりに協力できないよね。
いつ入ってきてもらっても、いつ出ていってもらってもいいというのが、ファンの方との関係です。
ブランドとファンの関係は対等なのです。
理想的なファンの方といい関係をつくり続けたいブランドオーナーがいて、ファンの方はブランドに対して「あなたじゃなきゃダメ。なんか好きだ」という愛着があるものです。
ブランドはファンとの間で心理的結びつきなのに、それが一度登録したら解約できないサービスになったら、ブランドとは最も遠くなりますよね。
サブスク、定期購入、頒布会モデルをやりながら、ファンとコミュニケーションしていくことで、ずっと購入いただいている方をいかに楽しめるか企画すること。サブスクとファンづくりを平行してやっていくのが大事です。
「継続課金でロックして」と考えると、考え方として、ブランドからほど遠い存在になってしまうのです。
買いやすいシステムをつくる。
もちろん「ブランドにならなくてもいい。ブランドになる必要はない」という考え方もあっていいわけ。
「露出量が多いから手に取ろう」
「特に愛着はないけど」
「面倒くさいから定期購入にしておくか」
「深い愛着もないし、ここじゃなくてもいいけど、
何度も買うのは面倒くさいから定期購入しておこう」
たとえそう思われても、
買っていただけるようなシステムをつくっておくのは、
ビジネスとしてはなかなか優れています。
「ブランドになりたいけど、継続課金はできるだけロックして
解約できないようにしたい。
でもファンイベントはやらない」
こういうやり方をしたいなら、すればいいですが、
ちょっとなあと思います。
もう一つ、次回予約を入れるモデルもビジネスのやり方になります。
サロン系で、マッサージとか美容室が該当します。
「次回予約入れ率を追え」というのはもちろん大事です。店舗型ビジネスは、次の予約が入っていればビジネスは安定しますから。
ミシュランで星を取るような人気店は次の予約を入れているからですが、次回予約率という数字だけを見ていったら、ブランドの熱は下がってしまいます。
結婚は、結婚という書面にサインをして、はんこを押したから結婚が成立しているのか。
お互いの気持ちが「共に歩みたい」と思い続けているから結婚と言えるのかという話と同じですよね。
店舗ビジネスで、飲食や健康・美容系のサロンが次回予約率を追うのはいい。けれども、ファンの方が「ここじゃなきゃダメだ」と思ってくださっているか、そう思ってもらえるようなイベントや施策を並行してやっているか。これを考えることがブランディングになります。
「仕組み」と「心理的関わり」の両面を見ていきましょう。
以上、久々野智小哲津でした。
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