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読書録

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柳流水の読書録です。
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2022年2月の記事一覧

【読書録】まるで友達の家に遊びに行ったらだんだんその友達の厄介な性格が見えてきた時のよう

 スーフィズムの、現在の教祖である、シャイフ・ハーレド・ベントゥネスの著書『スーフィズム イスラムの心』の続きを読んでいる。
 読み進めるごとに、手放しに称賛することが、だんだんためらわれてきた。

 コーランの世界の中では、ムハンマドは最初の預言者なのではなく、最後の預言者であるとされ、イエスやモーセは、コーランの中でも偉大な預言者のうちの一人であると数えられている。
 簡単な理解だが、イスラム

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【読書録】ベルクソン『物質と記憶』4

『物質と記憶』の終盤に差し掛かって、終盤というのは、「要約と結論」という章に入ったからなのだが、今までわからなかったことが、ここへきて全体的視点を得ることができる、あるいは、そこまでいかなくとも、今まで読んできて全く分からなかった点を、何かしら読み換えるヒントのようなものがある、ということに期待をしていたのだが、それは完全に裏切られた。この「要約と結論」においてまとめられていることは、今まで辿って

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【読書録】それでは実際のスーフィーの言葉をお聞きください

 先日から話題にしている、井筒俊彦の『イスラーム哲学の原像』、これに影響され、現代のではあるが、スーフィーと呼ばれる、密教的修行を行っている教団の導師の、インタビューを乗せた本をネットで取り寄せて読んでいる。
 シャイフ・ハーレド・ベントゥネスの、『スーフィズム イスラムの心』である。

 こうして、今まで解説でしか触れなかった宗教の、導師の言葉を実際に目にすると、遠く近く、今まで抱いていたイメー

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【読書録】井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』2

 これから、いくつかこの本から得たことを、引用しながら紹介したいと思う。
 余談だが、珍しく、この本は電子書籍の形で読んだ。スマートフォンに表示させたり、パソコンに表示させたりした。器用な読み方をしたものだ。しかし、興味をもって、腑分けするように、足を踏みしめながら読むように読み進めれば、読む媒体というのは関係ないのだ、という洞察を得た。
 もちろん好みとしての読み方というのもあるが、たとえば電子

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【読書録】中井久夫『私の日本語雑記』1

 嫁が、いつだったかに、まだご存命である、中井久夫に、直接会いに行くということを発想したことがあった。嫁は精神科医療の仕事に就いている。著書を読んで、ただならぬ人だと感銘を受けて、現在の職場の現状に倦んだこともあるのだろう、そういう発想に至ったのであろうが、僕にはとんでもないことに思えた。
 まず、一私人と面会するには、相応の理由が必要であろうという当然の事実は、嫁の頭にはなかったらしい。私塾を開

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