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ビンチェンツォと北朝鮮(2)6月4日

 6月4日と言えば天安門事件の日として知られているが、1937年6月4日の夜には普天堡の戦いが行われている。

 金日成主席をはじめとする軍団が、当時日本統治下の朝鮮半島の駐在所を襲撃した事件である。以来金主席には賞金がかかり、その名は有名になった。金主席当時25歳。

 イルカに乗った少年。いや違う。これでは城みちるだ。白馬に乗った将軍の姿は伝説化している。その後も戦いを続け、終戦を迎え、1945年10月に金主席は初めて表舞台に立つ。

 その後朝鮮戦争でアメリカをはじめとする国連軍と戦い休戦(北側は勝利と宣言している)し、中国、ソ連、アメリカ、日本、韓国など地政学的に厳しい環境の中、北朝鮮は今現在も存在している。

 北朝鮮に行くと必ず、万寿台の金主席と金正日総書記の銅像に花束を捧げ、金主席の生家を訪れる。普天堡の戦い以前の主席の話も色々聞くが、長くなるのでここでは書かない。

 さてここで、北朝鮮の音楽をひとつ紹介したい。하나의  대가정「ひとつの大家庭」という歌である。北朝鮮を象徴する歌とぼくは考えている。

花咲く楽園に喜びはあふれ
人民はひとつの家庭 自慢はあふれるね
ラララ ララ ラララ 歌を ララ ラララ 歌おう
幸せな私の国一つの大家庭

人々はみな 一つに固まり
指導者同志を仕い 従って
ラララ ララ ラララ 歌を ララ ラララ 歌おう
幸せな私の国一つの大家庭
幸せな私の国一つの大家庭

ラララ ララ ラララ 歌を ララ ラララ 歌おう
幸せな私の国一つの大家庭

激しい嵐が吹きすさぶとも
私たちの大家庭は 気安くあるね

ラララ ララ ラララ 歌を ララ ラララ 歌おう
幸せな私の国一つの大家庭
幸せな私の国一つの大家庭

 北朝鮮という国をどう捉えるか。独裁国家をイメージする人は多いだろう。金王朝などという人もいるが、ぼく個人は疑似家族国家と捉えている。こう書くと誤解されるかも知れないが、いわゆる宗教団体やヤクザの一家と似ているいうのが印象に近い。ビンチェンツォのイタリアンマフィアというのも、疑似家族集団と言えるだろう。

 そのせいか、北朝鮮と真っ向に対立すると思われる右翼関係者には、北朝鮮に妙なシンパシーを抱く人が稀にいる。一貫した反米の姿勢も、彼らには好意的に写るようだ。

 とはいえ、こういった疑似家族には脆い印象がある。だが、北朝鮮は本気で疑似家族国家を目指していると感じる。北朝鮮では生命は2つあるとされる。肉体的生命と政治的生命。肉体はいつか滅んでも、その人の政治的生命は永遠に残る。そして父母もふたりずついる。自分の両親と、国父である金主席、金総書記、金正恩委員長(総書記になったが、区別のため委員長とする)。母親は朝鮮労働党である。

 国父は植民地だった北朝鮮を日本から解放し、アメリカをはじめとする帝国主義者から守り、一方で生活への気配りをする。特に学齢に達した子どもに無償で与えられる制服や教科書は、国父からのプレゼントとされる。実の父に比べ、国父の方が圧倒的にやって来たこと、与えるものが大きいのだ。

 実の父ちゃんよりも甲斐性のある国父。そのことが今も、北朝鮮の今の体制を堅持する一要因とぼくは見ている。

 疑似家族と父性。以前街を歩いていたら、統一教会の文鮮明氏の自伝を貰ったが、彼らは文氏のことを「お父様」と呼ぶ。既存の家庭を上回る疑似家族。もしかするとこのかたちは、一定数の朝鮮民族にしっくりくるスタイルなのかも知れない。

 植民地時代ひ弱だった人民たち。自らの国も持てず、植民地の中で汲々と、日本人に使役されざるを得なかった人民たち。

 そこに金主席が現れた。白馬に乗って。イケメンな指導者に出会い開明した人民たちは従い、自国の自主を守り、帝国主義と戦う。このストーリーはまさに「ビンチェンツォ」そのものだ。20回で放送は終わったが「北朝鮮版ビンチェンツォ」のストーリーは、1937年から80余年、今も続いているのだ。

■ 北のHow to その115
 小話をひとつ。北朝鮮の保育園を訪れたアフリカの代表団の男性が、そこにいた10数人の子どもたちに「君たちのパパはどこにいるんだい?」と聞いたという。
 すると子どもたちは声をそろえて答えたという。「私たちのお父様は金日成首領様です」と。え?みんな金日成主席の子どもなの?とその男性は仰天したそうな。

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