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雑誌でお会いしましょう

 東京、もとい全国の空家率は過去最大の値を示していて、この先の少子高齢化でさらなる加速が予想される。

 でも買い手(厳密には借り手)市場かというとそうではない。高齢者、単身者、そして外国人にとっては。

 特別永住者と呼ばれる人たちにとっても同じこと。「外国人NG」という物件はほぼなくなったというものの「外国人・ペットOK」と併記されている物件は未だ。「私たちは犬や猫と同じ扱いですか」と憤る人たちがいる。新婚生活を始めるにあたって100件以上の物件で断られ、ようやくよさそうなアパートを見つけたら「日本人の知合いの連絡先を教えてください」といわれた在日コリアンの友人。

 困り果てた友人はあろうことか、ぼくに電話をかけてきた。
「不動産会社に連絡先を教えてもいいですか」
「いいけどさぁ…。保証人や判子押すのは勘弁な」
「それはないです。ぼくの知合いか確認の電話は入るかも知れませんが」
「でもさぁオレだぞ?よく考えろ?信用ってことばの意味はわかるよな」

 ぼくは説得を重ねた。別に面倒だからではない。ぼくが「信用に足る人間」とは、自分自身でも到底思えないからである。社会的信用度はゼロに近い。そして断られたら友人も大変だが、ぼくだって少なからず傷つく。

 一方で臨戦態勢にも入ったのだ。いざ電話がかかってきたら、文句やイヤミのひとつやふたつやみっつ言ってやるぞと。

 手ぐすね引いて待っていたのだが、電話はいつまでたっても鳴らない。そして友人は無事にアパートを借りていた。結果は最高だが「何だったんだいったい?」という違和感は今もぬぐえない。

 その話を担当編集者にしたところ「それ、書きましょう!」という話に。こっちは笑い話のつもりだったのだが、急に話は進んだ。「企画会議に出すから簡単にまとめて!」といわれて「簡単といわれるほど難しいのだよ」と200字でまとめて出したら、なんと4ページも割いてくれることに。

「多様性と調和」を旗印に、東京の空の下オリンピックは強行されていた。「やらなくていいよオリンピックなんて」とぼくはぶつくさ文句を言っていた。その同じ空の下で、友人は新居を探しまわっていた。

 日本社会で育ち、これからも日本で生きていくことを決めた若い夫婦。まだ社会に出たての不安いっぱいのふたりに、少数者である外国人である友人たちに「家を貸さない」というのは、余りに冷たくないか。

 そしてぼくたちは、特別永住者という隣人に対し、余りに無知でないか。

 そんな内容の記事がたぶん年内には載ります。

 インタビューあり、資料引用あり、取材あり。ここ最近ずっと、特別永住者のことを考えていました。
 考えるきっかけをくれた友人に感謝です。

■ 北のHow to その130
 特別永住者とは特別永住者とは1991年の「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」で定められた在留資格を持つ人を指します。戦前統治下、朝鮮半島、台湾出身者は日本国籍を有していたが、サンフランシスコ講和条約の発効(1952年4月28日)と共に、一律に日本国籍を喪失することになりました。
 当時日本国籍者であり続けるか、韓国籍・朝鮮籍・中華民国籍に戻るかの選択は当事者に与えられず、そのまま日本に留まった人たちとその子に特別永住者の資格が与えられました。いわゆる在日コリアン、オールドカマーたちの多くが、特別永住者の資格を持ち今も日本に住んでいます。 

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サポートいただけたら、また現地に行って面白い小ネタを拾ってこようと思います。よろしくお願いいたします。