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私、メンズエステで働いてます。【運営者編】

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「私、メンズエステで働いてます。」の中で、メンズエステを運営するオーナーやスタッフ側の視点で暴露されるシリーズ。
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#エッセイ

店長兼セラピストかすみの暴露 最終話 「大物AV女優がいる店の真実」

店長兼セラピストかすみの暴露 最終話 「大物AV女優がいる店の真実」

 もうすっかり秋だというのに、まだ半袖でも過ごせそうな暖かな日であった。

 世の中は新型コロナウイルスの第三波による感染者数が増えていたり、プロ野球ではソフトバンクホークスが日本シリーズで四連覇を果たしていた。

 かすみは都内某所の小洒落た喫茶店で、他のメンズエステ店の店長兼オーナーの三十代半ばの女性、祥子と近況を話し合っていた。

「コロナの影響どう?まだ続いてる?」

 かすみはきいた。

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店長兼セラピストかすみの暴露 5話 「行き過ぎた戦慄の恋」

店長兼セラピストかすみの暴露 5話 「行き過ぎた戦慄の恋」

 あれは二年前の春のこと。

 その日、かすみは珍しく稼げない日で、深夜に事前予約が一件入っているきりだった。
 

 その予約の客は、初めてお店に来る人だ。

 勿論かすみも初めて会うのだが、通常初めましての客だと90分コースか120分コースで予約するのが一般的であるのに、この初回の客は240分、4時間の予約を取っていた。

 偶におしゃべり好きの方が150分の予約を新規であってもする事はあるが

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店長兼セラピストかすみの暴露 第4話 「史上最狂の面接応募者」

店長兼セラピストかすみの暴露 第4話 「史上最狂の面接応募者」

 日がだんだんと沈んできて、空は真っ赤に染まっていた。

 かすみはいつも面接の場所に指定するカフェで、入り口が見えやすい席に座っていた。

 だが、約束の時間を過ぎても中々来ない。

(これはまたドタキャンかな)

 とりあえず電話を掛けてみようと思ったその時、入り口から一人の女性が来店してきた。

 遠目からでも分かるゴワゴワの金髪に、体型のせいで白い花柄が伸びて変形している膝丈のノースリーブ

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店長兼セラピストかすみの暴露 第3話 「霞ヶ関の官僚たち」

店長兼セラピストかすみの暴露 第3話 「霞ヶ関の官僚たち」

 生ぬるい雨が町を包む、煙い夜のことだった。

 かすみは二十歳の新人セラピストとカフェで落ち合った。

 彼女は働き始めてから一ヶ月程で、それ以前にメンズエステの経験はなく、まだマッサージの技術は伸ばさないといけないが、小柄で可愛らしい顔立ちの上に、愛嬌がよく、何より一生懸命に仕事に打ち込んでいた。

 リピート率もそれなりに高い。

 そんな彼女の近況を聞くために、かすみは彼女の仕事前に少し話

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店長兼セラピストかすみの暴露 第2話 「かすみ」

店長兼セラピストかすみの暴露 第2話 「かすみ」

 かすみは青森の侘しい農村で生まれ、実家は貧乏だった。

 新しい物を買ってもらったこともなければ、お年玉だってお札でもらったこともないくらいに家計は困窮していた。

 それも全て、父親の借金のせいだ。

 貧乏は悪いことではないと思っていたが、不便であった。

 たとえば、何を買うにしても、これが欲しいから買うというわけではなく、ただ他のどれよりも安いからという理由だけに縛られた。

 だからと

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店長兼セラピストかすみの暴露 第1話 「インド好きの女」

店長兼セラピストかすみの暴露 第1話 「インド好きの女」

 午前10時ごろ、日本の空は冬の曇天模様に包まれていた。

 風が冷気とともにまゆの顔に吹き付ける。

 

 空港の外に出ると、人々は白い息を漏らし、風がそれを散らしていく。

 まゆはリムジンバスを待ちながら、かすみという店長兼セラピストの女性に電話をした。

「もしもし、かすみさん、まゆですけど」

 連絡をするのは、実に半年ぶりだ。

 ふたりは同じ年だが、メンズエステ歴はかすみの方が長く

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店長青木の暴露 後編 「面接あるある〜ヤバい女たち編〜」

店長青木の暴露 後編 「面接あるある〜ヤバい女たち編〜」

 

 また、目覚ましが爆音でなっている。

 3回目のスヌーズだ。

 青木は目を開けたが、起きあがろうともせず、スマホをいじり始めた。

 この2週間、面接はひとつもない。

 応募はあったが、面接までに至らなかったのだ。

 メンズエステの求人応募にも閑散期と繁忙期がある。

 店のセラピストが立て続けに何人か辞める度に、同時に求人応募も殺到する。

セラピスト達は、客入りや待遇の悪さ、職場

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店長青木の暴露 中編 「メンエスあるある〜清楚系女性編〜」

店長青木の暴露 中編 「メンエスあるある〜清楚系女性編〜」

 (前回の直前から)

 青木は冷め切ったコーヒーを口に運んだ。

 と、同時にスマホのバイブが鳴った。

 カップを口から離して、スマホを確認した。

「本日はよろしくお願いいたします。今、喫茶店の前に着きました」

(早えぇ……。ん、いやいや、5分前集合なんだから良いのか)

「ご連絡ありがとうございます。入って一番奥の席に座っております。」

 青木はメッセージを返すと、コーヒーの代わりに水

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店長青木の暴露 前編 「面接あるある〜レースクイーン編〜」

店長青木の暴露 前編 「面接あるある〜レースクイーン編〜」

 耳元で大きな音が鳴っている。

 青木は重たい瞼を開け、布団から手を伸ばして手探りでスマホを探した。

 だが、スマホが見つからない。

 仕方ないので、気怠い体を起こして、ベッド脇に落ちたスマホを拾い上げ、目覚ましを止めた。

 時刻は午前10時半。

 最初に目覚ましをかけていたのは、午前9時だった。

 それから、3回目のスヌーズになる。

(さすがに、支度しないとまずい)

 青木は寝室

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スタッフ久田の暴露 「ムカつく、ムカつく、ムカつく」

スタッフ久田の暴露 「ムカつく、ムカつく、ムカつく」

 もう疲れ切っていた。

 大阪・心斎橋にある店舗型のメンズエステの部屋を掃除しながら、久田はセラピストに対する怒りが沸々とこみ上げてくる。

(もっと、ちゃんと掃除しろ! いつも言ってるだろ!)

 しかし、いくら注意しても直してくれない。

 いや、そもそもセラピストたちは掃除が出来ない者が多いのだろう。

 セラピストが帰った後の部屋は床がオイルでベトベトだ。

 マットの上のタオルは綺麗に

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オーナー今井の暴露 後編 「地雷客」

オーナー今井の暴露 後編 「地雷客」

 セラピストのココが、掲示板の爆サイに悪口を書き込みされていると、最近今井に相談してきた。

『ココは地雷。入ったら後悔する』

 という旨の内容が、日に何度も何度も書き込みされているというのだ。

 ありふれた内容だが、彼女を傷つけるには十分だった。

 書き込みをしたのはおそらくひとりだけ。

「匿名で書き込みできるのをいいことに、複数人に成りすましてるに違いありません」

 と、ココは言う。

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オーナー今井の暴露 中編 「夫公認セラピスト」

オーナー今井の暴露 中編 「夫公認セラピスト」

「ここで働くことはご主人には内緒で?」

 今井は沙紀に興味本位で聞いてみた。

「いえ、知っています」

 彼女はそう言うと、詳しいことを話し始めた。

 結婚七年目だが、もうとっくに夫婦関係は破綻している。

 夫は沙紀のことを女としてではなく、家政婦としか見ていない。

 家事は何一つやらないどころか、服や食べたの物をその辺にほっぽらかしていて、片付けをすることなど全くなかった。

 いくら

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オーナー今井の暴露 前編 「身内が次々と死んでいくセラピスト」

オーナー今井の暴露 前編 「身内が次々と死んでいくセラピスト」

 午前8時の中目黒の一角、オーナー兼店長の今井はメンズエステの施術ルームとして使用しているマンションの一室に入った。

 彼は40代半ば、バツイチで別れた妻との間に8歳の息子がいる。

 親権は元妻が持っており、養育費を払っている。

 今井は玄関で靴を脱ぎ、キッチンが併設されている廊下へ進んだ。

 キッチンの横に小さな冷蔵庫があり、そこに待機中のセラピストが食べられるようなお菓子、飲物、冷凍食

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オーナー森脇の暴露 「セクハラ講習」

オーナー森脇の暴露 「セクハラ講習」

 森脇はメンズエステ激戦区の中目黒、Nというメンズエステのオーナーである。

 今日は中目黒のマンションの一室で、長身で目がくりっとした小顔の新人にスキルチェックの講習をしていた。

 全くの未経験者だし特に美人というわけではないが、彼女だったらマッサージの技術以外でも客は来ると踏んでいた。

 

 森脇は正直、どの新人セラピストにもマッサージスキルはそれ程求めていない。
 

「とりあえず、次

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