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ちょっぴり読書感想vol.1

「ひと」「まち」 小野寺史宜

今回は小野寺史宜さんの「ひと」「まち」の2冊の感想をちょっぴり書いていきたいと思います。
※ネタバレを含む場合があります。

本屋さんに立ち寄ったときにふと手にとったのが、「まち」でした。題名に惹かれて、気づいたら購入していました。

登場人物は違えど、「ひと」「まち」ともに、舞台は同じ。東京都江東区の砂町銀座商店街や荒川などその周辺。
どちらも孤独な青年が、ひととのつながりや縁から故郷や居場所みたいなものを考え、成長していく物語。
こんな感じのテーマだからこそ、この舞台がなんか良いと感じてしまう。

「ひと」の主人公・柏木聖輔
「まち」の主人公・江藤俊一
どちらの主人公は、比較的似たような性格だと思います。両親がすでにいなかったり、田舎出身だったりと境遇も。明確には境遇は少し違うけどそれはまたあとから。
性格的には、謙虚なところや積極的ではないところとか。個人的な主観ですけど(笑)


「ひと」の主人公は、高校生の時にお父さんを事故で無くし、大学進学を機に東京へと出てきます。ただ、在学中にお母さんが亡くなり、大学を中退します。たまたま「おかずの田野倉」で揚げたてのメンチカツをまけてもらい、スタッフ募集の張り紙を見て、働かせてくださいと言ったところから人とのつながりのはじまりです。
田野倉で働く中で、店主のご夫妻やそこで働く人々とのつながり、商店街の人々とのつながり、高校卒業して久しぶりに会った同級生とのつながり、辞めた大学のバンドの仲間とのつながり、亡くなったお父さんの足跡をたどるなかでのつながり、時には断ち切らないといけないようなダメな人とのつながり。両親の死によって1度無くなってしまった人とのつながりを実感し、紡いでいきながら、成長していく物語だと感じました。
描写的には、出会った人のフルネームが良く出てくるのですが、はじめは、カタカナで書かれているのがとても印象的でした。

「まち」の主人公は、小学生という幼い頃に火事で両親を亡くしています。そのため、高校卒業までおじいちゃんに育ててもらいます。「ひと」違う点は、おじいちゃんとの関係・つながりも描かれており、地元とのつながりも比較的描かれている点です。おじいちゃんは、人生ずっと田舎で暮らしており、今では絶滅危惧種、もしくはないかもしれない「歩荷」という職業を営んでいます。おじいちゃんは、今の世の中のことをあまり良く知りません。そのため、主人公に東京に上京して、よその世界を知れ、知って、人と交われと諭します。そして、主人公は東京の暮らしの中で、様々な人と関わっていきます。4年後、おじいちゃんは、余命宣告を受けたことを隠して最後に主人公に会いに、人生初の東京に行きます。おじいちゃんが亡くなった後の主人公のたくましさには、感動しちゃいます。「まち」では、人とのつながりだけでなく、地元と東京に対してとか、故郷、居場所という少し広い視点までアプローチしてくれます。

「ひと」「まち」どちらも何気ない日常の中の、等身大の登場人物たちの、機微を感じ取れるところが1番好きでした。
どちらの主人公も普通の若者より不幸と捉えられるような主人公かもしれないし、両親の死に関するトラウマもあるかもしれない。でも、日常の中の人とのつながりから幸せを感じ、成長し、たくましく生きていくことが描かれた素晴らしい小説だと感じました。
個人的に「ひと」の中の中心舞台である「おかずの田野倉」が、「まち」でさらっと登場するシーンにほっこりです(笑)


大学で、まちづくりや地域づくり、人と人のつながりというのがキーワードのようなものを学んでいたからこそ、心に残る小説だったのかなと思います。
私も主人公の2人ような青年になりたいと純粋に思います。


最後まで読んでいただきありがとうございました。
また次回。

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