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イギリスのお菓子vol.3『ルバーブのバニラロースト・コンポート』

ピンクがかった鮮やかな赤い茎が特徴的なルバーブ(rhubarb)は、ヨーロッパや北アメリカといった欧米でよく食べられている「野菜」です。日本でも長野県や北海道といった寒冷地では栽培されていますが、そのほかの地域ではあまり出回っていないので知らない人も多いのではないでしょうか。

わたしもイギリスに来るまではハーブの本にのっているのを写真で見ただけで、実物は見たことがありませんでした。なので、こちらのスーパーではじめてルバーブが売られているのを目にしたときは感動しました。ルバーブは多年草で育てやすく、丈夫なので自宅の庭で育てているお宅も多いようです。

野菜だけどくだもの:ルバーブの特徴と歴史

ルバーブは野菜ですが調理法や感覚的にはくだものとしての扱いが多く、アメリカでは農業省(the U.S. Department of Agriculture (USDA) )により正式に「フルーツ」としてのお墨付きがでています。

見た目はフキ、味は「セロリのよう」とよく書かれていますが、皮ごと食べられるのでフキより下処理はラクで、セロリは食感が似ていますが味はとっても酸っぱいです。そのため、砂糖をたくさん使ってジャムにしたりパイにするのが定番です。別名pie plantとも呼ばれているほどです。

もともとは欧米だけでなく中国でも薬用として使われていたのですが、18世期はじめにイギリスが2種類のルバーブを交配したものを食用として栽培しはじめました。当初は酸味が強すぎて敬遠されていたのですが、砂糖の大量生産が可能になり庶民にも手が届くようになった頃から甘くしたルバーブが人気になりました。

(参照記事:Arnarson, Aiti. “Is Rhubarb Good for You? All You Need to Know” healthline 2019.)

現在では大まかに分けて茎が赤い

forced/hothouse rhubarb

とほとんど緑色

outdoor/garden rhubarb

2タイプがあります。さらに個別に「ヴィクトリア」などそれぞれいろんな品種名があるのですが、茎が赤いのは温室などで暗くして光を与えないからです。屋外でもバケツをかぶせて光を遮断すればできるようです。

一般的に赤いほうが繊維質でなくやわらかいとされていますが、甘さは大差なくむしろ緑色のほうが香りはいいとか。見ためで人気なのはやはり赤色で、値段もお高めです。収穫期は赤いほうが早く、1月から2月初旬までととても限られた期間にしか出回らないので、毎年この赤いタイプが店頭にお目見えすると「が近いなぁ」と季節を感じさせてくれます。

その後3月下旬から6月までは緑色がとってかわります。先月シーズン終了まぎわにすべり込みで緑色ルバーブを手に入れたので(まぁ、まだ売ってるところもありますが)砂糖煮、塩漬け、ピクルスの3種類の方法で調理しました。

バニラ・ロースト・ルバーブ

5センチ長さにカットしたルバーブを、さやつきバニラビーンズで香りをうつした砂糖と白ワインでグリルする、というシロップ漬けのようなものです。さやつきバニラはもっていなかったのですが、中のバニラビーンズだけがこしょうのミルのような容器に入っているものをもっており、それで代用しました。これは使いたいときに使いたい分だけふりかけられて便利です。

ルバーブは煮るとくずれてしまうので(ジャムが多いのはそのため)、このレシピのようにオーブンで焼くと型くずれしません。でき上がりをヨーグルトにかけることになっていましたが、そもそもこれは赤いルバーブ向け。緑色でグリルすると退色し映えないだろうなと思ったので、砂糖は上白糖ではなく黒糖にして色をだしました。ただし、そうするとせっかくのバニラの香りを黒糖の強い匂いがかき消してしまうのでは、という一抹の不安はありました。

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われながら、見事に不安は的中しました。エッセンスではない、せっかくのバニラビーンズの黒い点々も茶色い黒糖シロップで目立ちません......。それでも、いつもは必ず減らす砂糖の量を、レシピどおりの分量でたくさん入れたかいがあり、味はボヤけることなくしっかりしていました。それどころかやはりそのぶん激甘で、写真の分量ですと甘すぎだったので、なにかにかけるときは少量でよさそうです。

塩煮ルバーブで梅干しもどき

クックパッドで探していたときに見つけたのですが、海外在留邦人のあいだでルバーブは、塩漬けにすると梅干しがわりになって重宝するそうです。それまで甘く味つけることしか頭になかったので、目からうろこが落ちました。

ルバーブの量に対して10%ていどの塩をまぶして、水分が出たところを煮るのですが、またズボラなわたしはキッチリ従ったのは初めだけ。すぐにいつものように塩の量から手順まで適当にすっ飛ばし、水分が出なくても塩をふりかけた直後に鍋を火にかけます。グツグツ沸騰して、少し煮崩れる手前で火をとめてガラス瓶に保存します。

これが、いったん知ってしまうと、海外在留者としてほんっと〜に重宝するんです。とりあえずは梅干しが使われているレシピを参考にしていましたが、そのうち鶏ササミとキュウリやモヤシをさっとゆでたものを、バンバンジーのように和えたり、ナスや小松菜、ホウレン草といった野菜をおひたしにしたあと、醤油のかわりに加えたりと無限にアレンジできることに気づきました。

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なかでも、イギリスならではの組み合わせとしてお気に入りなのが、パースニップ関連記事)の塩ルバーブ和えです。どれも、味つけはこのルバーブ1点でキマリです。

ショウガと唐辛子いり、ルバーブのピクルス

さいごは、甘ずっぱいルバーブのピクルスです。普通に書くとpickles、日本語と同じ複数形ですが、イギリスのレシピや表記はなぜか単数形の

pickle

と、ピクルスの「ス」がないですね.......。picklingと、動詞としても使えます。イギリスでは小さい子への呼びかけにも使われていて、「いたずらっ子」といった意味のようですが、娘が泣きながら登校したところ

「あらあら、どうしたの pickle

と先生に言われました。初めは「なんだろなんだろ、なんでピクルス⁈」と不思議に思っていたのですが、「困ったちゃん」とかそんな意味もあるのでしょうね。

本題にもどって、今回はピクルスなのでのルバーブを使います。ちょうど買ってあったアップルサイダー・ビネガー(リンゴ酢)に砂糖、塩を混ぜたものにスライスしたショウガ、唐辛子、粒のピンクペッパー(赤い皮の粒コショウ)、イエローマスタード・シードを加えて鍋を火にかけます。

沸騰させたらすぐに、すでに瓶に入れておいたルバーブに直接かけます。冷ましたらフタをしてそのまま保存できます。やはり大量の砂糖を使うので、健康への気休めでまたしてもこりずに黒糖を使ったのですが、普通はサラッとするピクルス液がネットリしてましたね。

味は、ショウガもたくさん入っているので

ガリそのまんま!

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って感じでした。これはこれで、意図せず「日本の味を懐かしみたい」在留邦人向けに、いい保存食かもしれません。この日はちょうどバーベキューもしていたので、箸休めにつまんでみるとイイ!塩気の多い肉類ばかり食べていたお口のなかを、爽やかにまぁるくやわらげてくれます。また、コショウや唐辛子まで入っていますが、ピンクペッパーは黒コショウよりマイルドで、ピクルス液じたいもかなり甘いので、ヨーグルトなどスイーツにかけても案外イケるかもしれません。

以上、今回はこれまでもよく使ってきたルバーブという食材で、いつもとは違う調理法とレシピで冒険してみました。どれも汎用性が高く、保存がきくので日本でも見かけたら手にとってみてください。

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