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イギリスのお菓子vol.7「リンゴの三角スコーン」

「あ、パンがない......」

と気づいてなにかかわりになるものを、といつもの愛用レシピ本をひらいて最初にそれらしきものを見つけたのがこのお菓子「リンゴのスコーン(Apple scone round)」。スコーンといえば言わずもがなイギリスの代表的な伝統菓子で、スタンダードな形状は小ぶりの丸型です。

同じく伝統的なお菓子でショート・ブレッドもありますが、こちらは棒状のほかに丸型や円盤、ハート、四角などさまざまな形に変化したものをよく見かけます。けれどそういえばスコーンはもっぱら小さい丸型ばかりで、むしろそれ以外私は見たことがないなぁ、と思っていたらこちらのスコーンは円盤型でした。

スコーン、名前の由来

イギリスのスコーン地域議会(そんなものまであるんですね......)、Scone & District Community Councilによると......

……

すみません、出端からつまずきました。「スコーン団体」とか「スコーン協会」とかならわかるけど、なぜまた「地域(district)」?!、なんか自治体のホームページみたいだな、と思ってたら、

自治体のホームページでした(笑)

今回調べてはじめて知りましたが、イギリスにはスコーン(Scone)という場所がもともとあるんですね!つまり、スコーンとは地名にちなんだ名前というわけです。この手の無知はわたくし結構多く、スポーツのラグビー(Rugby)や温泉(バス)の名前の由来であるバース(Bath)というのがイギリスの地名だということも、こちらに来てはじめて知りました。

話を戻しスコーンの名前の由来ですが、そのまま地名にちなんだことにしておけばいいものを、このスコットランドの小さな町名だという説以外に、「美しいパン」という意味のオランダ語だという説もあり、現在にいたるまで真相は不明だそうです。また、スコーンという語感も、単に地名ではなく正確には

Stone of Destiny スクーンの石

が由来で、これはスコットランド語のStane o Scuinで、代々のスコットランド王が、この石の上で戴冠式を挙げたとされるとのことです。スコットランドはウェールズ、北アイルランド同様、英国にありながら独自の文化と言語まで持っているので、来たばかりの頃は混乱しました。

けれどそのおかげでこうしてスコーンやショート・ブレッドといった「英国」を代表するお菓子が生まれ、英国にとってもありがたい?ことではないでしょうか。政治的にはそんなに簡単にはいかないでしょうが。(参照:Foodreference.com’SCONES: A SHORT HISTORY’)

スコーンの歴史

スコーンの成りたちはその昔1500年代初期の頃に、スコットランド人が簡単な食事がわりのパンとして作ったことに起因します。現代版では小麦粉をメインにオーブンで焼きますが、もともとはこれまたスコットランドの特産物であるオートミールを使って、より手軽にフライパンで作っていたそうです。

アメリカでも「ビスケット」と称するスコーンとほぼ同じようなものがありますが、おもに朝食として食べられています。対してイギリスではご存知のとおり、アフタヌーン・ティークリーム・ティーの定番で、茶菓子として食べられることが多いです。

人気の発端となったのが1840年代に第7代ベッドフォード公爵の夫人、アンナ・マリア・ラッセルによって始められたアフタヌーンティーです。(関連記事

また、スコーンという発音にも米英の違いがあり、イギリス人の多くは「スコン」といいます。スコットランドと北イングランド地方の人たちは「スコン」で、イングランド南部の人たちは米カナダから入ってきた文字どおりの「スコーン」だという説(参照:The Nibble ‘The History of Scones’)や、はたまた「上流階層はスコン限定」なんて記事も見かけましたが、実際のところは知りません。

ただ、日本人としては断然スコーン派なので、こちらで「スコン」といっている人を見たときは「ホントだぁあ、スコンって言ってる〜‼︎」とひそかに興奮しました。

実際に作ってみて:改善点

百科事典のブリタニカによると、昔ながらのスコーンは「usually triangular」で三角形だそうです。今回作った全体の形は円盤型ですが、8等分にカットするとあら不思議、たしかに「二等辺三角形」に。愛用レシピは伝統菓子の本なので、コレがきっと由緒正しきスコーンの原型なんでしょう。

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生地に練りこむ食材も、たいていはレーズンや変わり種ですとラベンダーなどがありますが、リンゴというのはこれまたはじめて知りました。「apple scones」で検索すると、みごとに今回作ったのと同じ円盤型で切ると三角形になるタイプの写真ばかりがズラ〜っと出てきたので、リンゴのスコーン=円盤型というのが常識のようです。

でき上がりは通常のスコーンのようなボソパサ感がなく、リンゴがしんなり蒸しパンのような食感に。スコーンというよりリンゴケーキのようなイメージ。もともとバターは少なくてよいお菓子ですが、いつも250gとかバンバン入れるようなレシピばかり最近作っていたので、久しぶりにこんな60gしか入れなくていいものを作り、「バターが少なくてもこんなにおいしいんだ」と感じ入りました。

恒例の「砂糖減らし作戦」も、同じくもともとが60gしか入れなくてよかったので、珍しくレシピ通りの分量で全量入れました。そのせいもあって、しっかり甘みがあり家族には好評でした。反省点は表面にふりかける砂糖で、本当はデメラシュガーというブラウンシュガーの細かいザラメのような砂糖じゃないといけなかったのに、なかったので黒糖を散らばしました。

見た目に影響がでるので、色がついてないけど同じザラメのグラニュー糖の方がいいかと迷ったのですが、「ブラウン」の色を優先して黒糖を選んだら、固まって焦げたように見えて失敗しました。

やはりレシピどおりの食材にすべし〜〜。と、ときは既に遅しですが、反省してさっそく購入しておきました。


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