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プラプラ堂店主のひとりごと㉔

〜古い道具たちと、ときどきプラスチックの話〜

風呂掃除の道具のはなし

 雪が積もった。札幌は一夜で白い街となった。やっぱり、こうでなくちゃと思う。去年は大晦日に雨が降っていたっけ。札幌で、雪のない年越しは初めてだったと思う。なんだか、すごく不気味な感じがした。やっぱり温暖化なのかなぁとか、心配してしまう。そんなことを考えている時、友人が面白い店を教えてくれた。

「札幌でもプラスチックフリーを目指している小さい店があるんだよ」

 それで、さっそく行ってみた。たった4坪!の本当に小さい店だった。でも、カラフルなENJOの掃除道具を中心に、いろんなエコグッズが所狭しと置いてある。何より店の人がすごく話楽しそうに働いていた。実際の使い方をその場で見せてくれて、親切に説明してくれた。いろいろ迷った末に、風呂掃除用のクロスを買った。ENJOの商品は、ひとつの値段としてはすごく高い。でも、環境を汚す洗剤もいらないし、長く使える。(風呂用は2年くらい使える!らしい)結果、とても安い買い物だと思う。それに、たくさんのプラスチックスポンジやらブラシを買わなくていい。そう思うと、うれしくなる。

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 家に帰ってから、それを使って風呂掃除をしてみた。本当に汚れがよく落ちる。かなり汚れが溜まった部分は…重曹とか何かあった方が良さそうだけど。日常には充分だ。綺麗になった風呂を沸かして入った。かけ湯をして湯船に浸かると、冷えていた体にじゅわじゅわと血が巡っていくのがわかる。

「ハァ〜〜。冬は風呂がごちそうだなぁ」

「ふ〜〜。わしも久しぶりにきれいになって気持ちいいですわい」

 木桶の助さんもうれしそうに言った。古道具屋で買った木桶は、もうすっかりぼくの風呂場に馴染んでいる。風呂に入った時は、二人で東京音頭を歌うのが定番だ。この木桶は職人の親方のもとにいたからか、言動が渋くてかっこいいんだ。それで「助さん」と呼ぶようになった。そう、水戸黄門の「助さん」「角さん」から。なんとなくだけど「助さん」。

「ところで、今日はいつもと違う物で磨いてもらったようですが、あれはなんですかのう?」

「ENJOってメーカーのクロスなんだ。長く使えるし、洗剤もいらないんだよ」

「はあ〜。昔は洗うモンといったら、タワシくらいしかなかったがなぁ。でも、あの洗剤がなくて気持ちよう洗ってもらいました。わしはどうも洗剤いうやつは好かんですわい。気持ち悪うなりますけ」

「そうだったんだね。ごめんよ」

「消毒するなら、お日様の光で充分。いや、それが一番ですわ」

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 本当だ。いつだって、自然には必要なものが揃っているのに。ぼくたち人間は、余計な物を作りすぎた。そして、自分たちで止められないような巨大なサイクルを作ってしまった。そのサイクルの中で息を切らしながら走り続けている。でも。本当にそろそろ…その流れを変えなければならないところまで来ているんだよなぁ。

「…どうかしましたか?」

「いや、大丈夫。日光消毒が一番って、ホントだなぁと思ってさ。今は冬だから、外は無理だけど。そうだ。風呂から出たら、一番日の入る窓際に干しておくよ。明日晴れたら、きっと気持ちがいいと思う」

「そりゃあ、ありがたい」

「うん。明日は晴れるといいなぁ」

ぼくは湯船に浸かって、助さんと東京音頭を歌った。風呂場の歌声は、いつもの倍は上手く聞こえて気持ちがいい。腹から声を出して歌うと元気が出る。

焦らず、ひとつずつ。今、できることを増やしていこう。

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