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記憶を消す子

今でこそ、我が子は発達グレー(ASD+AD/HD)と診断され、児童精神科に通い、エビリファイとアトモキセチンという薬を処方されながら、学校生活をそこそこ・それなりに過ごせています。

でも、昨年まではずっとずっとずっと、困ったことがあっても誰にも言えず静かにパニックを起こし、トイレにこもり、頭痛を訴えて保健室で休み、(衝撃度の高い)イヤな出来事があれば記憶を消しているということを繰り返していたのです。

我が子は、学校ではいわゆる「いい子」です。世間一般から見ても「いい子」。聞き分けもよく、先生のお手伝いを積極的に行い、友達とも分け隔てなく付き合える、普通の子。そんな子が、

「記憶を消す」

なぜこれが分かったかというと、放課後に先生から電話があり、
「学校で今日こんなことがありました、ショックを受けてないといいんですが・・・帰ってからの様子は大丈夫ですか?」
と聞かれたけど本人はけろっとしていて、落ち着いているようだからと電話を切り、本人にその日あったことについて先生からもらった情報と合わせて聞いてみると、なんと4−5時間くらいの間の学校での記憶がすっぽり抜けていて、

「え、覚えてない・・・・」

ということが、頻発したのです。
そもそも、学校の先生は30人前後の児童を一度に管理しなくてはならず、ある程度のいさかいやトラブルは子どものこととして基本的にしょっちゅう親には報告しません。(ケースバイケースですよ。全部じゃないですよ。)

ただ、我が子は昨年4月の休校中に大事件を起こし、6月に新学期が始まってすぐ、発達グレーと診断されました。そのためもあり担任の先生には通院が始まることや、学校での出来事、家での出来事を相互共有しようということになり、そのため比較的頻繁に先生から連絡をいただいていたのです。

なので、もし、子どもが事件を起こさず、なんとなく面倒くさい子として家でも学校でも、今もずっと放置されていたら事態は不登校まで進んでいたのかもしれません。

そんなことで先生からの定期的な電話連絡から発覚した、記憶消し
なにより、嘘をついてしらばっくれているならいいものの、本気で消しているのだとしたらそれはかなりの大きな負担を脳に強いていることになります。

脳外科に行く・・・?とよぎり、
いやいや、ただでさえ多重アレルギー、アトピーに加え、発達グレーも発覚して、ここでさらに脳疾患ときたら、さすがに私ももう目が回るかもしれない・・・(いや、もう回ってる)

そんな不安を抱え、児童精神科の通常診療の日。

医師「お母さん、それは消してるのではなく、記憶していないのですよ」

「記憶していない・・・?」

医師「はい、お子さんのように自閉傾向がある子は自己感覚が鈍くて、自分が辛くなっていることに気付きにくいんです。そのため、簡単にオーバーヒートを起こします。だからいわゆるキレたときに記憶がなくなるのは本当で、でもそれは忘れているのではなく、”記憶していない”状態です」

「それは、つまり・・」

つまり、
我が子のような自閉(ASD)傾向の強い子は、
自己感覚が鈍い(セルフモニターが悪い、というらしい)
→疲れていることに気づいてない。

だから、自分のキャパオーバーに気づいた時はもう爆発した(キレた)時、という場合がほとんど。
そしてキレた時というのは人間の脳は動物の本能でしか働かなくなり、記憶しない(できない)のだそう。

・たたかう(泣く)
・にげる
・かたまる

というポケモンのような3択でのみ動くようになる、と。
(注:先生はポケモンとは言っていません)

確かにたしかに。
泣いてます。固まります。逃げます。やってます・・・

そして、記憶できないので、ショックな出来事を経験として学習し次回に生かすことも難しいのだそうです。(あちゃー)

全くその通りです。同じ状況で同じミスを繰り返すし、同じように怒られ(注意され)て泣き、固まり、覚えていません・・・

医師「だから脳に負担をかけているわけでもなく、むしろ初めから記憶していないので、負担がかからないように制御している状態ですね!」

「なるほど・・・!」

とりあえず、記憶を消している(脳負荷が増えている)わけではなかったのでよかった。
とはいえ、記憶しないのか・・・それはそれでどうなの。

そうです、まさにこの記憶しないが、その後我が子の課題となるのですが、これも元を辿れば、あらゆることに過敏でストレスを溜めやすい性質があることから生きているだけで疲れる状態になるから。
それをエビリファイという薬でストレスを緩和させ、その量を先生と話し合いながら調整していき、まさに今も、日々試行錯誤しながら生きています。

もし、我が子の発達グレーを知らず、児童精神科にもかからず、記憶を消していると思い込み、脳外科に連れて行っていたら、やはり原因不明で露頭に迷っていたかも知れません。

記憶を「消す」のではなく「しない」。ちょっとの違いですが、専門医でないと分からないことも多く、学校や家庭環境、今までの教育の常識だけではわかり得ないことも多いです。特に、発達の凸凹は今や珍しいことでもなく、誰にでもあり、困り感も個人によって異なります。

個性だから、誰だって大変だから、という言葉でくくらず、その子がどうしたいか、どう感じているか、を見て欲しいと思っています。

もし、お子さんのこんなことが心配、ちょっとおかしいんじゃないかな、という直感に響くものがあったら、それもたとえ「すごく」じゃなくても、親としての勘を大切にしていただきたい。

そして、何に困っているか、お互いに一緒に考える機会をもつことができたら、新たな道が開けるかもしれません。



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