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サウナで考えるおじさんの存在感

基本的にサウナは無音、あるいは音楽のみを流しているところのほうが好みではありますが、その一方で、サウナで野球中継を視るのは好きです。

何がいいって、熱心な野球ファンの方々からは怒られそうですが、別に特定の球団を応援しているわけでもないので、どちらが大々的にホームランを打とうが、どちらがボロボロにミスをしようが、最終的にどういう試合結果になろうが、他人事としてひたすらボーッと視ていられる。

ボーッと視ているうちに強い選手の名前やチームの監督の顔をなんとなく覚えていくので、職場などで野球の話題が出た時に、ある程度はついていけるようになるというメリットもある。

あと、野球を視て気分が落ち込むことはまずない。

スーパー銭湯は早い時間から開いているのが長所ですが、昼間にスーパー銭湯のサウナに行くと、テレビで流れているのが高確率でワイドショーなのがつらい。

どこかで子供が車内に置き去りにされて亡くなったとか、どこかで家族間の揉め事が原因の殺人事件が起きたとか、気が滅入るような情報ばかりが高温の室内で頭に入ってきて、健康促進のために来ているはずなのに、不健康な気分になっていけない。

これが理由で、自分はあまり早い時間にスーパー銭湯に行かなくなりました。

しかしながら、サウナにテレビがないことも多い一般の銭湯は、早いところでも開店は14時。陽の照っているうちに風呂に入るのが楽しいのになあ。

いっそ、18時に閉店とかでいいので、朝10時とかから開店している銭湯ができてほしい。6時半から営業している旭区の神徳温泉みたいな例もあるので不可能ではないと思うが、まあコストも労力もかかるんだろうなあ。

サウナにテレビがないことも多いとは書いたものの、もちろんテレビがある一般銭湯もあります。そういうところはだいたいサウナは入浴料とは別料金で、ある程度サウナに慣れている人が来るので、客層は基本的にスーパー銭湯よりも良いです。

一般銭湯なので身体に立派なドラゴンなどをお彫りになられている方もいらっしゃいますが、そういう方もサウナでは物腰やわらかく、「失礼します」などと挨拶されてびっくりする。というか、スーパー銭湯に屯している大学生集団とかよりよっぽどマナーが良い。

銭湯としては早い時間に行くほうが楽しいのですが、サウナでテレビを視るのなら、だんぜん19時から20時がいい。野球中継だとこの時間帯は佳境に差し掛かっているし、それ以外のチャンネルは雑学クイズ番組が流れていることが多い。

かつてヘキサゴンファミリーと呼ばれた人たちが一世を風靡したのは10年以上も昔のことですが、今でもテレビのバラエティといえば雑学クイズが主流のようで、『有吉の壁』『東大王』『呼び出し先生タナカ』など、各局が人気を競っています。

以前はこの手の番組に1ミリも興味がなかったのですが、サウナだととても楽しく視られる。野球と同じく、視ていて落ち込むことがないので。

なにせ、正解すれば褒められるし、誤答してもツッコんでもらえるので芸能人としておいしい。誰も傷つかない優しい世界。そして、いずれもゆるいクイズ番組なので、誰も本気では怒らない。それがいい。

若い頃に比べて(今も若いが)、強い刺激があるものや、感情の起伏が激しい人を見るのがしんどくなっているので、できるだけゆるいコンテンツを欲しているのですな。

これに気づいたのは『僕のヒーローアカデミア』を読むのを初期の段階で断念した数年前で、常に何かにブチギレている爆豪くんを見ているのがとにかくしんどくて、途中でやめてしまったのですよね。

ちゃんと読めば彼の良さがわかると言われたこともあるのですが、それまでにあのブチギレかっちゃんに付き合う度量が今の私にはない……。

なので、テレビ向きにシフトしたほうの伊集院光さんを見ると謎に安心する。昔は深夜ラジオの激しいほうの伊集院さんが好きで、毒の抜けたテレビの伊集院さんを見てもなんとも思わなかったのに。

あと、最近になってわかったことが、関根勤さんの凄さ。何が凄いって、あんなにもいくつものバラエティ番組に出ているのに、関根さんの発言で印象に残っているものがひとつもない。

言い方がちょっとアレですが、毒にも薬にもならない発言しかしていないのです。

これは、コンプライアンスが叫ばれる昨今に於いては最も重要なこと。芸能人のデタラメゴシップを書いてX(Twitter)で総スカンを食らっている一般人のムーブよりも、関根さんのムーブを観察したほうがいい。

老害を回避するためのヒントは関根さんに隠されているとすら思う。失礼ながら、充分におじさんと呼ばれる年齢であるのに、全くそれを感じない。あれで御年70歳だぞ。

自分も思い当たる節があるのですが、歳を重ねると知識と経験が増えるぶん、他人の身振り手振りに対して、それはちょっと変なのではないかと指摘したくなる場面というのが出てきます。

もうそんな時代ではないのは承知の上ではあるものの、未だに金髪でピアスだらけの人を見るとヤンキーかバンギャだと思ってしまうし、ポチャッコのアクキーを男子高校生がぶら下げていると、野郎のくせにサンリオグッズ付けて同級生にからかわれたりせんのか?といらん心配をしてしまう。

だが、関根さんが他人に対して少しでも否定的なことを言っているのを見たことがない。M-1グランプリ出身の中堅芸人とは30歳ほど、AKB系列のグループのメンバーなどとは50歳ほどの年齢差があるというのに、誰を相手にしても、「今の人は……」のような発言をいっさいしない。

だからこそ印象に残らないわけですが、そもそもおじさんが嫌われる理由の多くは、印象に残るようなことをしてスベっているからで、むしろおじさんはいかにして存在感を消すかについて考えたほうがいい。のかもしれない。もうそろそろ他人事ではないからなあ。

身体にドラゴンを彫ったおじさんも、サウナでは存在感を消していることが多いです。それに倣おう。ん?今日のおじさんはけっこう存在感があるぞ?あ、阪神が負けてる……。

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