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怪談・百物語

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私の書いた百物語 Youtubeで創作配信しています。 よければ遊びに来てください。 一緒に百物語を作りましょう。
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#怖い話

怪談百物語#1 面影

入院していた祖父の退院が近付いた頃の話だ。 私が小学生だったころ、よく祖父のお見舞いに行っていた。 祖父が入院した理由は覚えていない。 重い病を患ったのだろう。 というのも当時、両親が相当バタバタしていたから。 幼い私は早く祖父に帰ってきてほしい。 病名や病状も、何も知らずにそう思っていた。 退院の準備で忙しくなったある日、父が遊んでくれなくなった。 休日でもバタバタと退院の準備する両親を見ていると、寂しさと共に不安を感じた。 私のことを誰も見てくれなくなるんじゃないか。

怪談百物語#6 よく見つけたね

ノリで肝試しに行くことになった。 売り言葉に買い言葉、サークルのなめてかかってくる後輩達の口車に乗せられて。 幽霊が出るという山に向かうことになった。 心霊現象とかあったことない。そもそもあいたくない。 ほんといやなのに何でこうなった。 俺の雄姿見に来い! なんて言って後輩達にもついてきてもらうことになった。 良かった。一人とか怖すぎる。 何か、何人かニヤニヤしてるけど なにあれ?ドッキリでもしかけてる? 怖いんだけど。 車を出しに一旦家に帰る。 家に着いた。一応準備

怪談百物語#7 どこからでも

このマンションは家賃が安い。 まわりと比べても暖違いだ。 理由は簡単、でるんだ。幽霊が。 毎晩0時になると、どこかの部屋に霊が現れる。 ――ピンポーン ほら、こんな風にドアホンが鳴って え? 来たの?うちに? 気いてはいたが信じていなかった。 本当に来るんだ。 ええと、どうするんだっけ。 契約の時に聞いた話を思い出す。 「あそこ霊がでるんですけど、いやほんとなんですって。  だから安いんですよ。  リフォームしてるんで家主さんは賃料高くしたいみたいですけどね。  

怪談百物語#8 お前も見える

家族でアフリカに行った。 両親がお土産を選んでいる間、僕は近くにいた子に話しかけられた。 あそこみてみろ。 そう言って指された先を見ると、透明なカメレオンがいた。 あいつしんでるのにきづかないんだ。ほらみてろ。 カメレオンは目の前を飛ぶ蠅に、透明な舌を伸ばす。 何度も何度も、取れないのに。 ばかみたいだろ。 ははッ、と陽気に笑う少年。 おまえも霊がみえるんだな。こいよ。 こっちにはもっといっぱいいるんだぜ。 少年は黒い目を、輝きようのない二つの穴をこっちに向けて 僕の手

怪談百物語#9 木漏れ日

私は小学生の時、短いだが間入院していた。 車にはねられて両足を折る重傷。 術後二か月、小児病棟で過ごした。 その時たくさん友達ができたのだが、これはその中の一人に聞いた話。 僕の入院していた病院は都会にあった。 周りは田舎だから、ちょっと重い病気になると皆ここへ見てもらいに来る、 地域で一番大きな病院。 小児病棟のみんなも、知らない学校や町から来た子が多い。 その子達の中に僕の親友がいた。 その子も僕と同じで両足を骨折していたんだけど、 僕とは違って山で遊んでるうちに転がり

怪談百物語#10 怪人とは

「学校の近辺にまた不審者がいるとのことだ。  今日は集団下校。気を付けて帰れ。以上。」 帰りの会が終わり、同じ町の子達が集まる。 最近いつもこうだ。 不審者。 僕たちは赤い怪人と呼んでいる。 夕方に現れるから夕日に染まって真っ赤だとか 攫った子どもを殺して、赤い血を浴びているからだとか 色々言われている。 「僕見たんだ!あのひと髪が真っ赤だったから、きっとあの人が赤い怪人だよ!」 「嘘つけよ。赤い髪の人なんてこの辺にいねえよ。」 「お前のほかに誰かいたか?いたやつらも同じ

怪談百物語#11 影からの応援

「こんなつなつー!  あの日別れた思い出の人系Vtuber、憧憬なつかです!」 毎週水曜日の定期配信。 初配信の時から続けてきた、思い入れのある配信。 色々あったけど、今日は一周年記念配信。 お世話になった人や仲良くなった人 沢山の出会いがあった一年。 通話できる人は一部だけだけれど、できる限り沢山の人にお礼を伝えたい。 三ヶ月前から少しずつ企画を進めて リスナーさんにドキドキしてもらえるように 裏でアポを取りながら 配信中にどれだけ祝ってもらえるか、電話を待つ配信をした。

怪談百物語#12 兎の血

私が生まれた村では誰かが亡くなると、通夜で鶏をしめてふるまう風習がある。 そのため、どの家庭も二羽ほど鶏を飼っていた。 鶏が居ない家には周りの家が都合して貸してやることも多々あったという。 その見返りはまあ、昔からの風習と言うことでそんなに明るいものではない。 大体一晩か二晩と言ったところだ。 安いと思うか高いと思うか、それは知らないが。 そんな風習がある村。 だがある時期に、鶏が村に一羽もいなくなることがあった。 戦か不作か。 米も野菜も取れず、川は濁って魚は死んだ。 山

怪談百物語#13 鎮痛剤

今日は飲み過ぎたな。 緊急事態宣言が解除されたら、さっそく飲み会に誘われた。 上司も先輩も乗り気でもう大変。 久しぶりだと皆ペースがおかしいんだ。 何本飲んだ?わっかんねえ。たぶんケースは空けてそう。 気持ち良いを通り越して気持ち悪い。 夜風が頭を冷ますけど、もう無理だ。 うげ あー、ダメだ。本当に無理だ。 スマホを取り出してタクシーをぼうとするが、手指が震えてロックが解除できない。 クソッゆっくりでいい、落ち着いてひとつずつ。 ゆっくりと指紋認証を試すが認識しない。 こう

怪談百物語#14 ラジオアプリ

「みんなラジオって知ってる?アプリで聞けるんだけど。 ずっと人が話してて、たまに曲流れたりして結構楽しいんだ。 たまに聞いてる人からメールが届く時があって、それを読んだり、相談にのったりしてて。 みんな色んな事悩んでるんだなー、とか。 こんな考え方があるんだなー、って勉強になるからさ。 一度、聞いてみなよ。ラジオ。」 ツイッターのタイムラインに、こんなツイートが流れてきた。 ラジオか。祖父のいる実家でよく流れてたな。 祖父は毎朝7時前に、分厚いスマホみたいな機械を手にして庭

怪談百物語#15 コスプレ

私はコスプレが趣味で、年に何度か撮影イベントに参加する。 貸し切った敷地内に用意された様々なセットを使って写真を撮る。 今回参加するのもそんなイベント。 一緒に参加するのはいつもの友人達。 これまでにも同じメンバーで何度か参加したことがる。 撮った写真をまとめて作品として販売して、そこそこ売れてびっくりしたのも良い思い出だ。 今回合わせるコスプレはすぐに決まった。 私達が仲良くなったきっかけの、一番推している作品。 衣装づくりの進捗が続々とグループチャットにアップされる。

怪談百物語#16 わんこ

うちの子はすごくやさしい。 その上、世界一かわいい。 自慢のわんこ。 保健所から引き取った雑種の男の子。 いつもそばに来て、撫でてって甘えてくる。 でも家族の誰かが落ち子出る時は、ペロペロして慰めてくれる。 私が子どもの時。 日課の散歩へ連れていったら派手に転んだ時だってそう。 私がびえびえ泣いていると、傷をペロペロしては「大丈夫?」と言いたげな表情でこちらを見て気遣ってくれた。 ある日父の帰りが遅くなった。 「ただいま。帰りがすごく混んでて遅くなった。どこかで事故でもあっ

怪談百物語#17 回転寿司

回転寿司に行くと珍しいメニューに出会える。 ミーオボール寿司、ハンバーグ寿司。 シイラの漬けやアン肝軍艦。 予算で握ってもらう寿司屋と違って面白い。 あっちはあっちで日によって仕入れが違うという。 しかし、「今日は良いコーンが入りました。マヨコーン軍艦です。」なんてことはないだろう。 色とりどりのネタが回るレーン。 最初は決まって赤エビ。 1貫110円の、少しお高い皿。 だからネタも大きく、そして美味い。 最高のスタートが切れる。 次は海鮮サラダ軍艦。 イカとカニカマとコリ

怪談百物語#18 習字教室

娘の通う小学校で体験した奇妙な話をここに記します。 PTAの総会の帰り道、友人から相談を受けた。 「学校の放課後、習字教室が開いてるんだけどさ。友達一人もいなくて寂しいんだよね。よかったら一緒に来てくれない?」 お願い!と頭を下げられた。 字が綺麗になるし、まあいいかな。と来週一緒に体験しに行くことにした。 午後7時。 教室に入ると懐かしい大きさの机、イス、窓からの風景が目に入る。 ノスタルジーを感じていると、先生が入ってきた。 初老で優しい雰囲気の男性。 挨拶も終わり、