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怪談百物語#17 回転寿司

回転寿司に行くと珍しいメニューに出会える。
ミーオボール寿司、ハンバーグ寿司。
シイラの漬けやアン肝軍艦。
予算で握ってもらう寿司屋と違って面白い。
あっちはあっちで日によって仕入れが違うという。
しかし、「今日は良いコーンが入りました。マヨコーン軍艦です。」なんてことはないだろう。

色とりどりのネタが回るレーン。
最初は決まって赤エビ。
1貫110円の、少しお高い皿。
だからネタも大きく、そして美味い。
最高のスタートが切れる。
次は海鮮サラダ軍艦。
イカとカニカマとコリコリの貝、それとマヨ。
米に合わないはずがない。

通は回転レーン上の寿司は取らない。
あれは回るメニューだ。
こんなネタがありますよ、とわかりやすく紹介してくれている。
おお、向こうのレーンを流れるあのこってりとした豚肉はなんだ。
イベリコ豚の照り焼き寿司か。
かき立てられた食欲に、早速タブレットに指を這わせる。

注文が届くまで待っている間、天ぷらを選ぶ。
エビにするかイカにするか。
揚げたての食感を想像しながら悩む。
盛り合わせは作り置きだ、選択肢に入らない。
悩む私の傍を通り過ぎた皿と、なんだ?
横目に入ったそれが気になった。
厨房を覗き込むようにしてレーンの奥を見る。
今のゲソっぽいの、たぶん違うけど。
あれ、手だったよな。
赤ん坊のものと思われる大きさの、真っ白な手がさらに乗ってレーンに流れているように見えた。
気のせいか?
また回ってくるかもと思って見ていたが、結局おあいそまでに回ってくることはなかった。
誰かあの皿を取ったのだろうか。

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