伊集院静先生 と なぎさホテル
伊集院静先生が亡くなられた。
生前、先生が出した電子書籍「なぎさホテル」にて、先生が30年ぶりに訪れた逗子海岸で、話されていた動画の一コマを、ふと思い出す。
「あの7年余り過ごした なぎさホテルは なくなっていて、あるのは逗子海岸のみだった。」と。
「なぎさホテルで、家族のように自分を大切にしてくれた I支配人、お年寄りのホテルの従業員たち、それは遠い昔、確かに存在していたけれど、なぎさホテルがないと、まるで白日夢のように感じる。」と。
寂しさを噛みしめ、逗子海岸の静かな波をずっと眺めていらした先生。
あのときの先生の横顔を、私は決して忘れられない。
先生の生き方は、波瀾万丈で、賛否両論あると思うが、私は、先生の生きた時代や、先生を優しく取り囲んでいた人達の温かな人柄を決して忘れない。
また、先生の太い幹のような一本貫いた生き方も、忘れられない。
そして、今、逗子海岸のあの場所では、なぎさホテルもなくなり、気がつけば伊集院静先生までもが天に召されてしまった。
あの頃の、あの温かな記憶を知る大切な人が、また一つ星になられてしまった。
それが、ただ ただ、今は悲しい。
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