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トラウマの仕組み

誰しも1つはトラウマがあるだろう。

子供の頃に経験した地震や犬に噛まれた経験、又は虐待やレイプ、いじめなど、きっかけは様々である。

そして、その恐怖や辛い記憶が強すぎるとPTSD(Posttraumatic Stress Disorder)を発症するリスクが高まる。

昔は、戦争に出ていた兵士や軍隊で戦っていたベテラン達に多いので、彼ら特有の状態だと考えられていた。

しかし、最近になって、戦争以外でも起こり得るという事が分かってきたのがトラウマである。

そもそも、なぜトラウマが発達するのだろうか?どのような仕組みで発達しているのだろうか?

いくつか説はあるが、最も有効なのが「古典的条件付け」である。

聞いた事がある人も多いのではないだろうか?

有名なのは、Ivan Pavlovが行った犬の実験であろう。

古典的条件付けは、「刺激」と「反射」の関係を利用した学習の方法で、2種類の刺激と反応が関わっている。

まずは「無条件刺激」と「無条件反射」である。

例えば、小さい子供が父親に顔を殴られたとする。

この場合、「顔を殴られる」というのが無条件刺激で「殴られた時の痛み」が無条件反射である。

つまり、自然に起こる刺激と反射の関係である。

そしてもう一つが「条件刺激」と「条件反射」である。

例えば、上の例の場合、殴られた子供はそれ以降、父親が手を上げるだけで恐怖を感じ体が反応する。

この「手を上げる」という動作が条件刺激で、それに対する「恐怖」が条件反射である。

つまり、「手を上げる」というどうって事のない動作も、無条件刺激によって恐怖の対象になるのだ。

古典的条件付けでは、なんの反応も引き起こさなかった条件刺激を無条件刺激と一緒に与える事で、無条件反射に似た条件反射を引き起こす事が出来るのである。

この考え方を始めて実践したのはJohn B Watsonという心理学者である。

彼の「Little Albert」という実験は心理学の世界ではものすごく有名だが、倫理的な問題で今は出来ない。

この実験では赤ちゃんを部屋の中に入れ、白いネズミと遊ばせる。

最初は赤ちゃんはネズミの事を気に入り遊んでいる。

その最中にWatsonは赤ちゃんの後ろに回り、金属の棒同士を叩き大きな音を起こす。

当然ながら赤ちゃんは怖くて泣き出す。

それを何回か繰り返すと、赤ちゃんは白いネズミも怖くなり遊ばなくなる。

この実験の無条件刺激と無条件反射は、「大きな音」と「恐怖」である。

そして条件刺激と条件反射は「ネズミ」と「恐怖」である。

無条件刺激と条件刺激を同時に与える事で、条件刺激(ネズミ)に対する条件反射(恐怖)を生み出したのだ。

トラウマの仕組みはまさにこれである。

過去の恐怖体験や辛い出来事が無条件刺激で、その出来事に対する恐怖や苦しみが無条件反射である。

そして、その出来事を思い出すような出来事や映像、音、匂いなどの刺激(条件刺激)によって強い恐怖(条件反射)を感じる。

つまり、トラウマを克服するためには無条件刺激と条件刺激の強いリンクを断ち切る必要があるのだ。

そこのリンクを断ち切る事が出来ればトラウマは解消していくだろう。

あなたのトラウマは何か?そのトラウマの無条件刺激と無条件反射は?また、そのトラウマの条件刺激と条件反射は?

ぜひ一度考えてみてほしい。トラウマの仕組みがよく理解できるだろう。

トラウマの仕組み。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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