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プアン/友だちと呼ばせて(2021)

失われた愛を求める過去への旅
洗練された映像で魅せるタイ映画

 
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(’17年)で注目されたタイ出身のバズ・プーンピリヤ監督による、ニューヨークとタイを舞台にした、ちょっぴりほろ苦い友情と愛の物語です。

『恋する惑星』(’94年)、『2046』(‘04年)のウォン・カーウァイがプーンピリヤ監督の才能に惚れこみ、製作総指揮を務めています。

【ストーリー】
ニューヨークでバーを経営するボス(トー・タナポップ)の元に、タイで暮らす友だちのウード(アイス・ナッタラット)から電話がかかってきます。白血病で余命宣告を受けたウードに会うために、タイへ戻ったボスは、ウードから「元カノたちに会いに行くから運転手をしてほしい」と頼まれます。死期が迫るウードのたっての望みを無下にもできず、ボスはウードの元カノたちをめぐる旅に付き合うことになります。
ウードが会いに行くのは3人の元カノたち。ダンサーを目指していたアリス(プローイ・ホーワン)は夢あきらめて社交ダンスの先生になり、女優志望のヌーナー(オークベープ・テュティモン)は女優になったものの、うまく演技ができずに悩んでいました。そして、唯一ウードを温かく迎えてくれたルン(ヌン・シラパン)は夫と別居中です。

ウードが元カノに会いたい理由は彼女たちに謝罪と感謝を伝えること。若い時には素直になれなくて、互いを傷つけ、別れてしまったけれど、かつて自分の人生を輝かせてくれた日々を過ごした恋人たちには「幸せでいてほしい」。そんな切なる思いを秘めて、元カノたちと会ったウードに対する元カノたちの反応はさまざまですが、彼女たちも元カレのウードと出会ったことで、現在の悩みを吹っ切り、心新たに自分自身の道を歩き出していきます。

ボスは元カノたちをめぐる旅を終えたウードを自分の故郷のパタヤへ連れていきます。そして、ここからはボスと彼の元カノ、プリム(ヴィオーレット・ウォーティア)との別れを辿る旅が始まります。そして、その別れにはウードが思わぬ形で絡んでおり、『友だちと呼ばせて』というタイトルに込められた哀しい意味が明らかになります。

ビーチリゾートのパタヤと大都会ニューヨークのバーを舞台にした、ボスとプリムのラブストーリーがムーディーで洒落ています。

かつてのウォン・カーウァイ監督作をほうふつとさせる魅惑的な映像が、失われた愛を求めるノスタルジックな旅へと誘ってくれます。

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