チャプター27(2007)
ジョン・レノンの悲劇を招いた
人間をむしばむ「心の闇」の恐怖
1980年12月8日、世界中が悲しみに包まれました。元ビートルズのメンバー、ジョン・レノンが40歳の若さで熱狂的なファンの男が放った凶弾に倒れたのです。
本作は、世界の音楽史にその名を残すスーパースターのあまりにも突然で衝撃的な死の真相を、殺害犯マーク・デイヴィッド・チャップマンの行動を通して明らかにしています。
チャップマンへの獄中インタビューを著した『ジョン・レノンを殺した男』を原案に、チャップマンの心の変容を描いた本作は、センセーショナルな題材とは裏腹に、驚くほど淡々と物語が進みます。
体重を増量させ、チャップマンそっくりに変身したジャレット・レトが抑制のきいた演技で、まるで嵐の前の静けさのような不穏な雰囲気を作り出しています。そうして、運命の12月8日の凶行シーンへ向けて、緩やかに恐怖が増していきます。
近年、さかんに聞かれる「心の闇」。本作から改めて分かるのは、ジョンが「心の闇」が引き起こす不可解な殺人の犠牲者だったこと。実在の殺人犯を主人公にした映画はあまたありますが、ジョンの妻オノ・ヨーコらの強い反対により、仮釈放が何度も却下され、今なお獄中にいるチャップマンについて描くことは、タブーの領域に踏み込むことに違いありません。
タブーを侵してもなお、本作が伝えたかったこと。多くの人々にとっては、無念の思いを強くする映画ではありますが、諸悪の根源である「心の闇」の解明の一助になり得るかもしれません。
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