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ハウルの動く城(2004)

老いの戸惑いも、戦争の苦しみも乗り越えて! 
恋する90歳のソフィー婆ちゃんの活躍に注目

戦争や高齢化社会など、世の中には憂慮すべき問題が溢れ、最良の解決策は当分見つかりそうにありません。

宮崎駿監督の『ハウルの動く城』は、これらの厳しい現実を反映させながらも、押し付けがましいメッセージはありません。“素直な心で感じてほしい”というのが監督の願いで、公開時、作品を宣伝するための資料は一切公開しないという徹底ぶりでした。

宮崎アニメだからといって過剰な期待も偏見も抱かず観てほしい。何を感じ、どう考えるか、自分自身の価値観が分かるから。

【ストーリー】
主人公は邪悪な荒地の魔女に呪いをかけられ、90歳の老婆に変えられてしまった18歳の少女ソフィー(声・倍賞千恵子)。生真面目で消極的な彼女はひとまず人目を避けるため山に向かい、魔法使い
ハウル(声・木村拓哉)の住む動く城に迷い込んでしまいます。
ハウルは世間では美女の心臓を食べると恐れられていましたが、しわくちゃ婆さんになったソフィーにそんな噂は怖くありません。掃除婦という役割を見つけ、ハウルの城で暮らしはじめます。

まずはソフィー婆ちゃんの活躍に注目です。老化したことで潔さと大胆さを身に付けたソフィーは、荒地の魔女の仕打ちに落ち込むどころか、怒りをエネルギーに変えて精力的に働きまくります。その意欲に満ちた態度は、自己中心的なハウルを始め、恐ろしい力を秘めた火の悪魔カルシファー、そして憎き荒地の魔女の心さえ溶きほぐします。

愉快痛快な老人力!とも言うべきソフィーの言動がユーモアたっぷりに描かれます。でも、そこには歳をとったからこそ知りうる苦楽がしっかりと盛り込まれています。

愛すべきわがままな魔法使いたちとの生活を通して、愛の力も備えたソフィー。アニメ史上最高齢のヒロイン、ソフィーの物語はれっきとしたラブストーリーです。

ソフィーへの呪いを解く方法はハウルとカルシファーとの間に交わされた契約を解くこと。この謎を下敷きにしながら、ハウルとソフィーが愛を育くんでいく様子が描かれます。

しかし、戦争の激化とともにハウルの正体が明らかに。ミステリーとファンタジーを含んだラブストーリーの中で、戦争の矛盾を突くことも決して忘れません。

少女と老婆、両方のソフィーを演じた倍賞千恵子のすがすがしくも威厳ある声に心洗われる一方で、ハウルの声を演じた木村拓哉の変身ぶりに驚かされます。日頃、メディアで氾濫する彼のイメージはまったくありません。

人間にも物事にもすべて無限の可能性が存在します。目の前の悲劇に囚われず、可能性を信じて努力すればどんな現実でも変えられます。

私はそんな勇気の出るメッセージをもらいましたが、みなさんはどうでしょうか?

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【宮崎駿監督10年ぶりの最新作が2023年7月14日より公開】

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