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その時、どうする?

こんにちは。
株式会社プロタゴワークスあかねです。

いつだって、“事件”てヤツは、いつもの日常の顔をしながら何の前触れも無くやってくる。

あの日も、いつものように出社して、いつものように仕事をして、いつものようにジムに行って、いつものように帰宅して…そんな、いつもの日常を過ごすつもりでいたはずなのに、“事件”のせいでそうもいかなくなってしまったんだ。

途中まではいつものように過ごしていたんだ。途中までは。
仕事を終えて、ジムに行って、トレーニングを始めるまでは、全てが順調にいっていたはずだった。

それなのに、なんだってあんな事になってしまったのか。
自分にはさっぱりわからない。

まあ、前触れは無く起きるから“事件”なんだろうけど、出来ればそういうモノに遭遇しないで日々を過ごしていきたいんだけどなあ。

あの日は、一番キツイと感じる種目であるスクワットをやる“脚の日”だった。
キツイ種目は、一番最初にやるのがセオリーだし、自分自身もそれを一番最初に済ませておきたいと思っている。そして、出来る事ならスクワットだけやって帰りたいとも思っている。最近では、扱える重量が増えてきたのもあって、キツさがドンドン増加していて、時々はセットが終わるとちょっぴり涙が出ている時すらあるくらいにキツイのだ。

バーベルを担いでしゃがんで立ち上がる。
ただそれだけの動作なのに、何故にこんなにキツイのか。

上からの重量で潰されないように気を付けながら、自分がしゃがみ込めるギリギリの深さまで腰を下ろして、立ち上がる。その際には、腰が丸まらないように気を付ける必要がある。腰を丸めるとバーベルの重さによって腰を傷めてしまうからだ。

昔、これで腰を傷めた際には、しばらくの間まともに歩行する事が出来なくなった事もあったので、それ以来、このダイナミックな運動さの際にはこの繊細な姿勢維持に非常に気を使っている。

そんなスクワットなのでメインセットをやる前には、他の種目よりも念入りにウォーミングアップのセットをやるようにしている。まずは、プレートを付けずにオリンピックバーだけを担いでスクワットだ。これを通常のセットよりも多くの回数やる事で、スクワットに使われる筋肉にも、そして、それ以外の全身にも血流を送り込むようなイメージでゆっくり行い、じんわり全身の体温を上げていく。

ゆっくりしゃがんで、ゆっくり立ち上がる。フォームを気にしながら、股関節がしっかり動くのを確認しながら、足首、膝、股関節、腰などの各関節の動きはスムーズかどうか点検しながら、筋肉がしっかり伸び縮みするのを感じながら、全身に血液がめぐっているイメージを持ちながら、何度も同じフォームで同じ動作を繰り返す。

一枚もプレートをつけなくても、オリンピックバーだけのウォーミングアップで十分に汗をかきはじめるのもいつもの事だ。文字通り、ウォーミングしてきたし、アップしてきた感じがしている。

これを、徐々にプレートを増やしながら、回数を少しずつ減らしながら、本番のセットの重さに近づけていきながら、段々と体を(自分にとっての)高重量に慣らしていく。

そして、いよいよ本番のセットの為のプレートを付ける。自分にとっては、現状で最も重たい重量でのスクワットをこれからやる事になるわけだ。熱くなった体と共に、気持ちも燃えてきている。このバーベルをしっかり上げてやろうじゃないか!と一人、心の中で吠えるのもいつも通りのいい流れだ。

燃える心のまま、正面の鏡に映った自分を見る。
しっかりウォーミングアップが出来たからなのか、気合漲るいい表情をしているのが自分でもよくわかる。数セットに及びウォーミングアップによって、しっかり血流が入った自分の大腿四頭筋が平常時とは比較にならないくらいにパンプアップしているのがよくわかる。

「こりゃあ、いいセットになりそうだ!」

そうして、いよいよ本番のセットに入る事にした。
分厚い皮革製のウエイトベルトをギッチリ締め、しっかり息を吸い込み、ゆっくり息を吐きながら腹圧を高めていく。

準備が整い、スクワットラックにセットしてある高重量のバーベルの下に入り、しっかり肩に担ぎ、あらためて姿勢を確認して、再度気合を入れ直し、もう一度深く息を吸って肚を固めて、ラックからバーベルを外すために力を込める。

「んっっ!」

気合混じりの声がほんの少しだけ漏れる。ジム内は大声禁止なので、出来るだけ声が響かないように気を付ける必要がある。

肩から伝わってくるバーベルの重さが全身を通って脚の裏へ伝わっている。まるで、地面にずぶずぶ沈んでいきそうな感覚がするのもいつも通りだ。マジで重たい。

バーベルを担ぎ上げたその態勢のまま、その場から少し後ろへ後退する。
そのまましゃがむと、バーベルがまたもやラックに置かれてしまうので、下がらざるを得ないのだ。

いよいよ、スクワットの開始だ。

バーベルの重さに潰されないように慎重に、とは言え、自然なスピードでゆっくりしゃがみ込む。まだ最初のセットの1回目なのでそこまでのキツさは無い感じがする。よし。しっかり深くしゃがむ事が出来た。腰が丸まらないように気を付けながら、立ち上がる動作をする。ここでは、出来る限り爆発的な動きをするイメージで立ち上がるようにしている。

とは言え、実際には自分にとっての高重量がのしかかっているのでそんなにスピードが出るわけもなく、はた目にはノロノロ立ち上がっているように見えるんだろう。だけど、自分の中では全力全開で立ち上がっている。

正面の鏡に映る自分を見ながら立ち上がる。
よし。なかなかいいフォームだ。

続いて、2回目だ。

深くしゃがみ込んだその時、“事件”は起こった。

「ブチブチブチッ!」

!!!

なんだ?何が起きた?

途轍もなく嫌な音が耳に入ってきた。
何かが千切れるような音だというのは瞬間的にわかった。
ハッキリとは思い出せないが、いつだったかこれと同じ音を聞いた記憶が蘇りかける。

しかし、今はスクワットの最中だ。しかも今が最もしゃがみこんでいるタイミングだ。もしかして、自分の体内から聞こえてきた音なのか?いや、痛みはどこにも無い。だけど、確実に何かが千切れた音がした。とは言え、立ち上がろう。思いっきり地面を踏み込んでもどこも痛くない。という事は間違いなく自分の体ではないという事だ。立ち上がる最中も痛みは感じない。これならスクワットは継続できる。

2回目を終えて体の異常が無い事がわかったので、そのまま3回目に突入して、また深くしゃがんだ。

「ブチブチブチッ!」

またもやさっきと同じ音が聞こえてきた。

音がどこからしてくるのか、これでようやくわかった。
これは、間違いない。

トレーニングパンツの後ろ側が裂ける事で聞こえてくる音だ。

鏡に映っている自分は正面の姿なので目視は出来ない部分。
それなのに、なぜ確信をもってわかるのかと言えば、これと同じ音を聞いた事があるからだ。

いつだったか、仕事中に重たい荷物を持ち上げる為にしゃがんだ瞬間、スーツのズボンから響き渡ったあの音と、間違いなく同じ音だったんだから。

あれは、夏の暑い日の仕事だった。
その日は、朝からイベントの為の搬入作業を一人でしていた時の事だ。
「ああ、責任者はつらいなあ」なんてブツブツ言いながら、汗をかきつつ忙しく動いていた。一通り、下準備を整えて、あとは大きくて重たいケースに入った資料を脇に片付けるだけ。そうしてそれを持ち上げるために、一度しゃがんでそのケースに手をかけ、脚に力を込めて立ち上がろうとしたその時、「ブチブチブチッ!」という音が自分のお尻の部分から聞こえてきたのだ・・・。

そんな、過去を思い出してノスタルジックな気持ちに浸りそうになりかけたが、今はそれどころじゃない。気を確かに保たないと、高重量を担いだスクワットの最中だ。

4回目も同様にズボンが裂ける音が聞こえてくるので、5回目はしゃがみを少し浅くしたら、「ブチッ」くらいにおさまったので、6回目ももう少し浅めにやってみたら音が聞こえなくなったので、一旦この辺で止めておくことにした。

今日のトレーニングパンツは、黒色のナイロン製サテン生地。伸縮性は無い。長年愛用してきたトレーニングの相棒だった。買った当初は、随分とオーバーサイズだったので、伸縮性が無くても何の問題も無く、とても重宝していたものだ。それが、いつの間にか、自分自身がオーバーサイズになってしまい、トレーニングパンツ自体がジャストサイズになってしまっていたらしい。その為に起きた悲劇だったんだろう。だけど、幸いな事に、トレーニングをする際には、滴り落ちる汗を吸収させるために、トレーニングパンツの下には常に黒のロングスパッツを履いている。人一倍汗っかきの自分は、下半身はロングスパッツ、上半身はロングスリーブのラッシュガードを着用するのがいつものスタイルだ。そうでもしないと、腕から脚から汗がだばだば流れ放題になってしまってタオルが何枚あっても足りなくなってしまうので、どんなに暑くてもジムの中では必ずこのスタイルで通している。そうすると、使用後のマシンの掃除も楽なのだ。

そんな装備なので、黒のトレーニングパンツが多少破けたとしても特に違和感は無さそうだ。あからさまに慌てふためいてしまうと、周囲の人に不審がられそうなので、何事も無かったかの如く、恐る恐る破れたであろう箇所を確認するも、鏡に映しただけでは視認する事ができず、全くわからない。

「よし、これなら大丈夫」

そういう事にして、2セット目に突入する事にした。

もちろん、2セット目も、その後の3セット目も、同じような音が耳に届きつつのスクワットになった事は言うまでもない。

しかし、例え物理的にはトレーニングパンツが破損していたとしても、傍目でわからなければ何の問題も無いだろう。しかも、立っている状態や、マシンに座っている状態であればその部分は人からは絶対に視認される事は無いわけだ。もし、人から見えるとしたら、先ほどのスクワットのように、立った状態からしゃがみ込んだ時にだけ。

だけど、今日のメニューは、残りの種目全てがマシンを使用するものだけだ。
であれば、何の問題も無い。

そうして、何事も無かったかのようにいつも通りのメニューをこなしてジムを後にした。


“事件”が起きたとしても、その起きた出来事に、どう対応するのか。
重要なのは、ただそれだけ。


この日もそうだったけど、そう言えば、“あの日”スーツのズボンが朝イチで破けた後も、誰にも気づかれる事無く1日がかりのイベントを平然とこなす事が出来たのも、今日と同じ発想をしたからだった。

あの日は、スーツのズボンのお尻の部分が破けた後、即座にトイレにかけこみ、内側からガムテープでそれ以上広がらないように出来る限りの事をして貼り付けたんだった。だけど、ガムテープとスーツの生地では色味が違いすぎるので、ズボンを手に取るとしっかり視認できてしまうのが難点だった。どうやっても見えなくする事が無理だったので、諦めてその破損したスーツのズボンを着てトイレから出て、とりあえず、トイレの鏡で自分の背中側を映して振り返った状態で裂けた部分を確認したら、なんと、「姿勢良く立っていれば」破れたズボンの箇所は視認する事が出来なかったのだ。

もちろん、深くお辞儀をしたり、しゃがんだりすればその部分が人目に触れる可能性が出てくるけど、少なくとも姿勢の良い立ち姿でいれば絶対に人目に触れる事は無かった。

そうして、いつも以上に姿勢良く過ごしたお陰で、多数の来場者があるイベント運営をしたにもかかわらず、その日一日誰にも気づかれる事無く、無事に仕事を終える事が出来たんだった。

“事件”があった時でも、絶対に諦めない。
どうすれば無事に切り抜けられるのか、その場の“在りモノ”でどうしたら難を逃れられるのか、咄嗟に考えて対処する。

そんな力を、いつだって磨き続けていれば、自分自身にとっての窮地に陥った状況だったとしても“何かしらの”抜け道や生き残れる道は、実はどこかにあるのかもしれない。

そんな事を、あらためて考えるきっかけになった、今回と過去の“事件”。

「ズボンのお尻が破ける」なんて、漫画みたいな出来事が、大人になってから二度も起きるなんて。

いつだって、“事件”てヤツは、いつもの日常の顔をしながら何の前触れも無くやってくる。

だけど、こんな“事件”には、できればもう二度と遭遇したくないので、今後は、「パンツの素材は伸縮性があるモノにする」というのは、自分の人生における重要なルール、いや、家訓にしていく必要だってあるのかもしれない。

それが、”事件”から身を守る為に必要な事なんだったら、やるしかないだろう。


あかね

株式会社プロタゴワークス

https://www.protagoworks.com/


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