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#介護

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑲

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑲

 そんな記憶の断片を思い出していると、
「今日はゆっくり休みな」
 と井上さんに言われ家に帰って行った。

 いつも会社まで自転車で来ているが、歩いてゆっくりと家まで帰った。
 自分の住んでいる街に、高齢者がこんなに住んでいると思わなかった。

 授業でも、どんどん高齢化が進み日本はどんどん少子化社会になっていくと習った。
 自分の住んでいる近くにも沢山の高齢者が住んでいるし、孤独の老人もいるの

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑫

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑫

 初任者研修に通いながら、訪問介護(以下ヘルパー)で実践する事は凄く為になった。コンビニという仕事はコンビニの上司に習うだけだが、介護という仕事は、介護を熟知した先生に習うので面白かった。

 勿論、井上さんに聴くとがあったが、自分自身が何が不得意なのかもわからなかった。学校の試験でも何が不得意という分析など自分自身に何が必要という事を考えなかったからかもしれない。

 授業を受けた事で、井上さん

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑥

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑥

 年齢は大正14年生まれで、90になるかならないかだった。
 高級住宅なので、内装はとても綺麗だったが、使われていない部屋は散乱していて、昔描いたような絵画が沢山あった。

 こんなに大きな家に一人暮らしなのかと、僕は印象を受けた感じだった。 
 逆に大きな部屋が孤独なのかなと感じる程であった。
 朝の食事を社長が作り、女性に提供した。
 「ありがとう」
 と、言って黙々と女性は食事をしていた。

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑤

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑤

 その日夜に、電話がかかって来た。
 着信を見ると、昼に面接にいった介護の所だった。
「どう、働いてみない?」
「いえ、僕には向いてないと思うんですよね?」
「最初から、向いている人はいないわよ」
「でも…」
「ベテランの人と一緒に最初は行くから大丈夫よ」
「そうですか…」

 半分、僕は上の空で聞いている感じだった。
 やっぱり、僕にはコンビニ店員がいいのだと思った。今から新しい事をするのは、実

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》④

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》④

実家に住んでいると、何も得ないでこの世を去ってしまうと思ったのだろう。
 一個人としては、別に楽しい刺激も欲しくはないし、可愛い女性を見ても付き合いたいとか、一晩を共にしたいなんて思わない。

 草食系と言うよりも、無気力系な男なのだろう。
 就職未経験で大丈夫なのは、清掃員や警備員やマンション管理者、工場の軽作業しかないのだ。他は介護の仕事くらいだった。
 この中でも僕が出来るのは清掃員、警備員

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介護小説 《アリセプト〜失われる記憶》 ③

介護小説 《アリセプト〜失われる記憶》 ③

 自分自身が就職して、バリバリ仕事をこなす星の下で生まれて来なかっただけなのだと心得ているのかもしれない。
 大学も卒業していない。高校の成績もよくなくさらに、コンビニのアルバイトした事がない僕に今後、何が出来るというのだ…。
 そんな事を考えながら、就職を探す。

 普段は使わないパソコンで《就職 都内》で検索すると、沢山出てきて、全く訳の分からない世界に飛び込んだみたいになり、コンピュータより

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