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経済

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2022年2月の記事一覧

賃金の格差と上昇率

結論部で賃金格差の話が賃金上昇率の話にすり替わっている。 小規模企業や対人サービス業の賃金が低くなるのは、生産性(1人あたりの付加価値)が低いからだ。そして、生産性が低いのは、資本装備率が低いからだ。 もし労働への分配率の違いが賃金格差の原因であれば、企業に賃上げを要請したり、税制によって賃上げを促したりする政策が賃金を引き上げるかもしれない。しかし生産性が低いのが原因であれば、こうした施策は意味がない。 大企業と中小企業の生産性格差は今に始まったことではないので、賃金格

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デフレと不況

アトキンソンがツイートしているこの記事に関する参考情報。 同趣旨の論文は他にもある。 大恐慌は例外 財・サービス価格ではなく資産価格の下落が不況と関連する(←信用収縮)

日本の科学研究の欠点「お金が無い」

この番組で、日本の大学改革の「成果」を示すコメントがあったので紹介。 北海道大学大学院水産科学研究所の和田哲教授のコメント。 ――和田さんは、赤潮発生直後に現地調査が出来ず、重要なデータを集めきれなかったことが、被害の把握を難しくしたと言います。 日本の科学研究の欠点、ていうものを浮き彫りにした出来事だったかなというふうには感じています。多くの研究は、今回のように新しい出来事がぱっと起きても、そのために使えるお金が無いんですね。そうすると、調査も実験もできない。急に起こ

日本経済と株主還元

《全文公開・・・有料設定はサポート機能の補完》 投資家には不評のようだが、国内外の株主の利益だけではなく日本国民全体の利益も考慮するなら、構造改革によって資本に傾いた分配の見直しは不可避と言える。 安倍政権が企図した「経済の好循環」が空回りに終わった背景には、「成長の果実」の多くが株主還元と内部留保(→現預金と対外直接投資)に回ったために、家計消費と設備投資の勢いが足りなかったことがある。 構造改革以降の👆と👇のデカップリングに注目。 大企業が株主重視経営に転換して株

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「円の実力」の低下は「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」の帰結

《有料設定はサポート機能の補完で全部読めます》 海外との相対的物価水準(→購買力)を示す実質実効為替レートが半世紀前の水準に低下した。 ほぼ適正水準だったと推定される2002年Q1=100としたものが下のグラフ。Narrow指数は先進27か国・地域、Broad指数は60か国・地域が対象。 Broad指数の2022年1月の水準は、Narrow指数では変動相場制移行(1973年2月)直前の1972年10月~1973年1月に相当する。 円の購買力がこれほどまでに低下した構造

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国民負担率

MMTの理想状態に近づいた日本経済

《有料設定はサポート機能の補完で全部読めます》 本家本元のMMTerによると日本はMMTの真逆の政策を続けてきたが、現実の日本経済はMMTの理想状態をほぼ実現していた。 MMTの主な主張は 政府は資金不足(赤字)/民間は資金余剰(黒字)に 信用拡大は民間企業ではなく政府が主体に 政策金利はゼロまたはニアゼロ 政府の調達金利は市場ではなく政府または中央銀行が決める(→日本銀行の長短金利操作) 物価安定 失業ゼロ(希望者は全員就業) 法人税廃止(→実効税率を19

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消極財政でも政府債務は激増

《有料設定はサポート機能の補完で全部読めます》 説明すると、そもそも積極財政ではない。 国の一般会計歳出で増えているのは社会保障関係費と国債費で、その他計は1990年代半ばから増えていない(1995年度と2019年度を比較すると、社会保障関係費は+19兆円、その他計は-3兆円)。むしろ消極財政である。 歳入面では消費税は増税、所得税と法人税は減税されたが、民間部門の投資誘発には有効ではなく、税収増にもつながらなかった。 反緊縮派ではこれ👇が定説になっているようだが誤り

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国内投資の不足は解決困難

《有料設定はサポート機能の補完で全部読めます》 民間企業設備投資は名目では未だに1991年のピークを超えられないでいる。 アメリカとの勢いの違いが歴然としている。 特にソフトウェア投資の差が大きい(IT化⇔非正規雇用化)。 その主な要因を四つ挙げる。 ①人口減少 ②株主重視・資本効率重視(株主資本コストの上昇) ③グローバル化 ④雇用の低賃金化・柔軟化 ①は人口減少のために国内需要が増加していく見通しが立たなくなったことである。将来の需要が現状維持~先細りなら、企

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トルコのインフレが加速

トルコの1月のインフレ率は48.69%に上昇した。 2021年末からのインフレ率の急上昇は、外国為替市場でのリラ急落が影響している。 エルドアン大統領の「インフレ抑制には利下げ」が資本流出→リラ安→インフレを招いたことになる。 先行き懸念もあれば、 リラ安効果による持ち直しへの期待もある。 トルコ経済について異色の見方をしていたのが現代貨幣理論(MMT)の教祖の一人モズラーで、インフレ沈静化と為替レート安定のためにゼロ金利政策を提唱していたが、それが間違いだったこと

就業率に表れる日本経済の構造変化

先日の記事で触れた「女と高齢者の労働力化」をデータで確認する。 縦線は企業リストラがほぼ完了し、外需主導の戦後最長の景気拡大が始まった2002年。 新たに「動員」された労働者の属性が、技術革新・生産性向上とはマッチしないことは明らかだろう。 一方、海外ではprime age(25~54歳)の男の就業率低下が問題になっている。 こちら👇は日本。企業が「三つの過剰」の解消に走った1997→2002年の低下が激しく、依然として金融危機前の水準を回復していない。 働き盛りの

反緊縮派の「そう見えるでしょう経済学」

当noteでも度々取り上げてきた反緊縮派のアホグラフが東洋経済オンラインにも登場した。 政府支出の増加が名目GDPの増加につながるのは当然だが、それは中長期的に政府支出の伸び率が名目GDPの伸び率を決めていることを意味しない。 物価や賃金が上がれば公共サービスに必要な金額も増える。また、経済成長すれば、社会保障の拡充やインフラストラクチャー整備等々、国民の公共サービスへの要求水準も高くなる。一方で、国民は増税には抵抗するので、政府はそのバランスを取って、政府支出の対GDP

「政府の赤字は民間の黒字」のナンセンス

れいわ新選組の山本太郎代表が、また「自国通貨建て債務では財政破綻しない」「日本銀行は政府の子会社」「25年のデフレ、25年の不景気」などとデマを飛ばしまくっていた。 今回は、ミスリードを誘うこれ👇を取り上げる。赤字・黒字とは資金不足(純借入)と資金余剰(純貸出)のことで、損益ではない。 この主張の問題は、家計部門と企業部門をまとめて「民間」としている点にある。 健全な成長軌道にある経済では、企業は設備投資を賄うために外部資金を調達する(→資金不足)のが普通である。ところ