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経済

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日本が貧乏国に転落したのは日本人がエコノミック・アニマルだから

日本が貧乏になっているという言説が増えている。 実のところ、1人当たり実質GDP成長率は他の主要先進国と比べて低くなかったのだが、賃金が上がらない+円安のために、国民の購買力が相対的に著しく低下している。プラザ合意後によく聞かれるようになった「内外価格差」という言葉も、いつの間にか「高い日本」から「安い日本」の意味に逆転している。 その急速な貧乏化の原因だが、日本を敗戦からわずか23年後(1968年)に世界第二位の経済大国へと成長させ、1979年にはアメリカ人に"Japa

企業所得倍増は達成済み

加藤氏の話を補足してみる。なお、デフレ期は30年間ではなくその半分の約15年である。 加藤氏の言う「国民の所得」は労働者の所得≒雇用者報酬のことのようだが、確かに1990年代後半からわずかしか増えていない。 それに対して、法人企業所得(法人企業の分配所得、海外直接投資に関する再投資収益支払前)は約2倍に増えている。 配当に至っては約8倍に。 設備投資が雇用者報酬と同程度の増加にとどまっていることや、企業の現預金保有額が大幅に増えているのは企業が成長志向から利益率・投資

「所得倍増」と言われても

実質ベースで国民の所得を倍増させることは事実上不可能なので、人気欲しさに口から出任せを言っているとしか聞こえない。 この👇時代とは日本経済のファンダメンタルズが全然違うので再現は不可能。 最近の自由民主党の総裁には 安倍「日本を取り戻す」⇒もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました/グローバル化の道しかない(There is no alternative.) 岸田「所得倍増」⇒資産所得倍増 と騙され続けているので、もう期待する方がバカである。 安倍も岸田もグロー

株式時価総額が示すこと

日本経済が株式投資家を儲けさせるための構造へと変化したことを示すデータである。 株式時価総額の対GDPは1980年代後半のバブル期のピークを上回ったが、当時とはvaluationが全く異なり、企業利益に裏付けられたものである。 そのことを示すのが株式の実質期待等収益率を含意する益利回りで、バブル期は実質経済成長率を大きく下回る1.5%程度だったが、構造改革後は逆に実質経済成長率を大きく上回る4.5±1%程度、1980年頃の水準となっている。 👇は雇用者報酬との比較。

「少数精鋭で仕事しないと日本はやっていけない」のはその通りだが…

ファーストリテイリング財団の柳井正理事長の話だが、結局のところ、人口減少にどう対応するかに尽きる。 柳井・前澤両氏にはそれぞれ理があり、どちらが正しいとは言えないのが難しい。国全体の限界集落化は不可避だが、どのような衰退を選ぶかという選択の問題になる。米山隆一議員が言うところの「衰退マネジメント」だが、👇の救済計画を思い出してしまった。

円安と輸出

この👇ような懸念は杞憂だとする主な論拠は「円安は輸出競争力を高める→輸出と国内生産が増える」というものである。 円の実質実効為替レートは1960年代後半の水準まで低下している。 しかし、輸出数量は見ての通り。 リフレ派・アベノミクス支持者は10年以上も「🐷積みをもっと増やせば日本経済復活」と言い続けていたわけだが、同じ面々が今度は「円安が進めば進むほど日本経済にプラス」と言い続けているように見える。

日本経済のヤバさを示す二つの指標

この👇ような懸念に根拠があることは単純な経済指標からも分かる。 👇は有名なエンゲル係数で、生活が豊かになると低下する普遍的傾向があることが知られている。しかし、日本のエンゲル係数の低下傾向は2000年代初頭に止まり、第二次安倍政権期からは反転上昇している。 これと似た推移をしているのが消費者物価指数の財価格とサービス価格の比(相対価格)である。財とサービス(情報通信関係を除く)では技術進歩や機械化による労働生産性向上に差があるので、生産性が上がりやすい財の価格は上がりにく

デジタル小作人と再版農奴制

先日の"つぶやき"に関してもう少し詳しく書く。 「小作人」は言い得て妙だが、これは再版農奴制を想起させる。 東欧が後進的になってしまったのは、世界システムの分業体制に組み込まれて「周辺」に位置付けられてしまったからだが、 日本がデジタル小作人(⇔格安見世物小屋)になったことにも同様のメカニズムが働いているのではないかと考えられる。 食料・資源・エネルギーを輸入に頼る日本が経済的に豊かな「中核」であり続けるためには技術立国の路線しかないが、「もはや国境や国籍にこだわる時

中野の財務省批判の混乱

中野剛志が恒例の財務省批判をしているが、怒りに任せて書き殴ったようで論理が詰められておらず、説得力を欠いている。 これの問題は、租税収入(ここでは歳入の合計と等しいとする)や財政赤字、インフレ率との関係を無視していることである。 名目GDPが100の二つの国AとBがあり、Aは高インフレで租税が自然増収中、Bは名目・実質ゼロ成長で税収も停滞中とする。翌年度にAは自然増収分を支出に充て、Bは景気対策として減税する。 A:税収50・支出50(均衡財政)→税収60・支出60(均

日本とロシアの経済構造改革の類似と相違

これ👇の前半は大筋では当たっている。 👇も同様の主張。 「植民地化」される前の日本型経済システムではメインバンクの株式保有が重要な構成要素の一つだったが、1990年代後半から、債務超過の危機に陥った銀行や生保に保有株式を売却させる→外人投資家が安値で買うことで株式分布が劇的に変化した。「植民地化」は金融ビッグバン・金融再生の裏面だったと言える。 このプロセスはソ連解体後のロシア連邦によく似ている。 吉川顯麿「市場経済移行と今日のロシア資本主義 ─ 特異な「民営化」とそ

インフレが明るい兆し?

岸田首相はインフレで膨れたものを「明るい兆し」と言っているだけのように見える。それから、値上げが相次いでいるのに「デフレ脱却」と唱えるのはいい加減に止めてもらいたい。 「賃金の上昇や民間投資の大幅な増加」 政府と御用学者がデフレを不況や長期停滞と同義としたために、インフレが好況・成長志向を意味することになってしまった。

国力低下と円安

この人👇は冷静で堅実な分析が持ち味なのだが、この記事は「トンデモ」と言いたいがためのストローマン論法になってしまっている。 「国力」の確立した定義がないのは事実だが、一般的にこのような文脈では「経済力」「財・サービスの量×質の生産力及びその成長力」という意味合いで使われていると思われるので、「経済学を逸脱している」という批判は当たらない。また、これらの論者は為替レートが常に「国力」によって決まっていると主張しているわけでもないので、「意味不明の概念では為替相場は説明できない

円は実質「1ドル=360円」時代に逆戻り

対ドルの円相場は160円に迫る34年ぶりの円安水準だが、実質で見るともっと凄いことになっている。 プラザ合意のあった1985年を基準年とすると、日本の物価(ここではGDPデフレータを用いる)はほぼ同じだが、アメリカの物価は2倍以上になっているので、名目為替レートが同じだと実質為替レートは約半分に減価することになる。 👇のマーカーは名目1ドル=158円だが、実質為替レートは(1985年基準)は約360円で、58年前の1966年の水準に相当する。「昔の1ドル=360円はまだま

円相場の長期チャート

円為替レートの長めのチャートを示す。 ロシアのウクライナ侵攻が「有事の円買い」ではなく円安を引き起こしている。 👆の逆数の1円=○ドルとしたもの。 👆の月次版を1965年から。 同期間の名目実効為替レート (27 economies)。 日本は他国よりもインフレ率が低い状態が続いているので、実質為替レートは名目為替レートよりも円安が進んでいる。先進国通貨対象のnarrow指数では1969年の水準まで減価している。 円安の原因は一言では説明できないが、思い切って単純