MMTの理想状態に近づいた日本経済

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本家本元のMMTerによると日本はMMTの真逆の政策を続けてきたが、現実の日本経済はMMTの理想状態をほぼ実現していた。

It is normally prudent for the private sector to run a surplus—to avoid financial fragility as saving and accumulated financial wealth in the private sector provides security for households and firms. […] For those reasons, a persistent budget deficit should be expected.

MMTの主な主張は

  • 政府は資金不足(赤字)/民間は資金余剰(黒字)に

  • 信用拡大は民間企業ではなく政府が主体に

  • 政策金利はゼロまたはニアゼロ

  • 政府の調達金利は市場ではなく政府または中央銀行が決める(→日本銀行の長短金利操作)

  • 物価安定

  • 失業ゼロ(希望者は全員就業)

  • 法人税廃止(→実効税率を1990年代前半から20%ポイント強引き下げ)

だが、これらはコロナ不況前には実現またはほぼ実現していた。

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政府部門の資金不足拡大・・・実現
MMTでは民間企業の債務拡大は金融を不安定させるとして否定される。
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民間部門の資金余剰拡大・・・実現
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政府部門の負債増大・・・実現
MMTでは「民間部門の純金融資産」を増加させることが重視される。
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企業部門の負債縮小(deleverage)・・・実現
物価安定・・・実現
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縁辺労働力の受け皿はMMTでは公的セクターの最低賃金での雇用(JGP)だが、現実では民間セクターの非正規雇用になっている。

高度成長→安定成長→バブル景気→バブル崩壊と推移してきた日本経済は、1997年11月の金融危機以降、長期停滞を続けているが、その長期停滞とはMMTの理想状態への移行期間だったとも言える。

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長期停滞が理想状態になるのは、MMTではboom&bustにつながる民間の債務拡大・投資主導の経済成長は追求されないためである。成長よりも全部雇用と物価安定がMMTの目標なので、好景気の実感がないのは悪いことではない(むしろ望ましい)。

MMTの逆をやっていたらMMTの理想がほぼ実現したというのは面白い。

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