国内投資の不足は解決困難

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民間企業設備投資は名目では未だに1991年のピークを超えられないでいる。

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アメリカとの勢いの違いが歴然としている。

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特にソフトウェア投資の差が大きい(IT化⇔非正規雇用化)。

その主な要因を四つ挙げる。

①人口減少
②株主重視・資本効率重視(株主資本コストの上昇)
③グローバル化
④雇用の低賃金化・柔軟化

①は人口減少のために国内需要が増加していく見通しが立たなくなったことである。将来の需要が現状維持~先細りなら、企業は生産能力の増強に消極的になる。

②③は特に大企業に関係する。

2000年代からの大企業の株主重視・資本効率重視への転換は、潜在成長率が低い国内投資の抑制につながる。

資本主義の根幹を成す株式会社が継続的に事業活動を行い、企業価値を生み出すための大原則は、中期的に資本コストを上回るROEを上げ続けることである。なぜなら、それが企業価値の持続的成長につながるからである。この大原則を死守できなければ資本市場から淘汰される。資本主義の要諦は労働分配率にも配慮しながら、資本効率を最大限に高めることである。個々の企業の資本コストの水準は異なるが、グローバルな投資家から認められるにはまずは第一ステップとして、最低限8%を上回るROEを達成することに各企業はコミットすべきである。もちろん、それはあくまでも「最低限」であり、8%を上回ったら、また上回っている企業は、より高い水準を目指すべきである。

経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト(伊藤レポート)最終報告書

同時に企業のグローバル経営が一段と深化したことで、日本よりも成長余地が大きい海外の需要の取り込みも、国内設備投資→輸出から、対外直接投資→海外生産へと変化した。

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④は②と関係するが、資本コストが上昇した一方で、労働コストは雇用の非正規化などによって低下あるいは変動費化したために、資本から労働へのシフトが促進された。

これらの四つの構造的要因は、政府が減税や財政支出拡大で民間にカネを供給するだけでは解決できない。現預金の貯め込みと投資の海外シフトは民間企業の生き残り策としては合理的なので、過少投資→供給力の弱体化→世界経済における地位の低下は止められそうにない。

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