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社会

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2020年9月の記事一覧

自殺二題

自殺についての二つの記事について簡単にコメントする。 厚生労働省は今月、昨年2019年の「人口動態統計」を公表している。 そこで驚かされるのは、15歳から39歳までの死因の第1位がいずれも「自殺」であるとだ。5歳ごとの年齢階級別に表示される死因の順位を見るとわかる。2人に1人がなるとされる「がん」よりも多い。しかも、10歳から14歳まででは、「自殺」が死因の第2位を占め、2017年には同年齢階級の第1位になっている。 死因の第1位が自殺なのは、その他の原因で死ぬ人が少ない

米大統領選挙とcritical race theory

米大統領選挙のテレビ討論会で取り上げられた"critical race theory"についての参考記事をいくつか。 “I ended it because it’s racist. I ended it because a lot of people were complaining that they were asked to do things that were absolutely insane, that it was a radical revolution

「女性の就業率があがると出生率があがるなんて嘘」を検証

タイトルには同意だが、個々のデータ分析が問題だらけで「統計くらい見ろよ」はこの著者本人にも当てはまる。 ここでの高い就業率の地方というのは、未だに農業が多く、農業はそれこそ夫婦共に稼ぐものだからだ。 グラフで女の就業率が最も高い福井県でも総人口に占める農業就業人口は2%強に過ぎないので、未だに農業が多いことが地方の就業率の高さの主因とは言えない。それよりも、職住近接や親との同居・近居との関係が強い。北陸事情については下の記事などを参照(論旨は参考にしないように)。 合計

日本とフィンランドの性犯罪比較

最近、フィンランドと比較して日本の「後進性」を嘆く記事が多いので、性犯罪について両国を比較してみる。 性犯罪の中でも最も悪質な強姦(日本は2017年以降は強制性交等)の認知件数はフィンランドが日本を上回っている。 フィンランドの人口は日本の1/20未満なので、人口比ではフィンランドの圧勝、日本の完敗である。 フィンランドなどの北欧諸国は男女平等先進国であると同時に(認知件数ベースでは)性犯罪大国でもある。 Denmark, Finland, Norway and Sw

杉田議員の正直発言

杉田議員がまた批判されているが、自称被害者の言い分を鵜吞みにしないことは、本当の被害者を蔑視することでも、女一般を蔑視することでもない。左派・リベラルにとっては目障りな杉田議員を貶めることが目的の悪質な印象操作・世論誘導だろう。 自民党の杉田水脈衆院議員は25日の党の内閣第一部会などの合同会議で、女性への暴力や性犯罪に関し「女性はいくらでもうそをつけますから」と発言した。被害者を蔑視する発言で批判が出るのは必至だ。 杉田氏は、会議で来年度予算の概算要求を受け、女性への性暴

7・8月の自殺者増加(修正版)

7・8月の自殺者数の増加については先日の記事に書いたが、警察庁の自殺者数のデータが速報値から暫定値に修正されたことと、新たな報道があったので再度取り上げる。 暫定値では7月は1818人、8月は1854人となっている。 グラフの左右の軸はスケールが異なることに注意。 韓国の現地報道は、新型コロナの影響で、非正規雇用など不安定な雇用の職業に就く女性の経済的困難が高まったほか、育児などの負担が増大したことなどが背景にあると指摘。日本でも同様の原因があるか、詳細な分析が進められ

新自由主義革命を支える日本のリベラルエリート

これ(⇩)は、西洋から数年遅れで同じ現象が顕在化してきたことを示している。 記事で取り上げられている大学教員の発言は、前回の米大統領選挙でのヒラリー・クリントンの「トランプ支持者の半分は"deplorables"だ」と同じ意味である。 "To just be grossly generalistic, you can put half of Trump supporters into what I call the basket of deplorables," Clin

多様性≒玉石混交

新生・国民民主党の玉木代表が「我が党の最大の強みは多様性です」「特に、15人の国会議員のうち5名が女性です」と強調していた。 しかし、短距離走やバスケットボールは西アフリカ系黒人、長距離走は東アフリカ系黒人が席巻しているように、一般的には、トップレベルになるほど多様性が失われて似たような人だらけになる。STEM分野では女が少ないことが非難されるが、超優秀なIT技術者の多くは似たような雰囲気の男である。囲碁や将棋やチェスもプロは男だらけである。 Her comments f

妻は奴隷ではなく家畜

女は男に「出産や家事の義務など」を強制される奴隷のような存在というのがフェミニズムでは自明とされている。ここから、女の解放・社会進出・男女平等は絶対的な正義という観念が出てくる。 私は幸運でした。私は出産や家事の義務など女性を隷属させるいろんなものをまぬがれていましたから。それに、職業的にも私が若かったころは本格的に勉強をする女性はわずかで、哲学の教授試験合格に合格することはエリート女性であることを意味しました。要するに私は男性に自分を認めさせたわけです。 個人的な面では

反差別運動とキリスト教

西洋で激化しているBLMなどの反差別運動の本質を示す事例を二つ。 一つ目は、アメリカでコロナウィルスでの黒人の死亡率が高いことに、 タンパク質分解酵素のTMPRSS2の人種間の差異が関係している可能性を示した研究。 これがracismだとして批判されている。人種は生物学的な根拠が無いsocial constructとされているからである。 もちろん、そのような批判に対する批判もある。一例がこちら(⇩)。 二つ目が、エディンバラ大学が"Equality, Divers

兵庫県明石市の子育て支援策を検証

メディアで絶賛され、一部の国会議員も注目する兵庫県明石市の泉房穂市長の子育て支援策だが、全国展開できるものではなく、持続可能性にも疑問があり、甚だしい過大評価と結論せざるを得ない。 産む予定の人がお金を目当てに市外から転入してくれば、明石市の出生率は上がるが、転入者の以前の居住地の出生率は下がる。以前からの明石市民の出生率が上がらなければ、全国ではゼロサムである。 市の税収は増加基調にあるものの「6年連続」ではない。全国の市町村税収もほぼ同じ推移をしているので、明石市の「

女性棋士がいない理由~フェミニストにとっての不都合な真実

この答え(のヒント)は文中にある。 Simon Baron-Cohenによると、systemizing(システム化)は男>女、 empathizing(共感)では女>男になっている。将棋はシステム化能力を競うものであり、分布の端では人数比が極端に拡大するので、棋士が男だらけになるのは自然なことである。 システム化能力は「対象への極端な熱中≒オタク気質」とも関係する。重要なのが対象の違いで、例えばガンダムオタクの場合、男はメカや戦略・戦術にも関心を示すが、女は登場人物に関心

リベラリズム布教に狂奔する日本の社会学者

アメリカのBLMに呼応して、日本でも社会学者が日本人をリベラリズムに従わせようと必死だが、ロジックが出鱈目過ぎて成功しているとは言えないようである。 一つ目がフェミサイドだが、 警察庁の最新のデータによると、世界的に見て殺人件数が少ない日本では、殺人によって命を奪われる女性は100万人当たり3人以下と非常に低い水準となっている。 しかしながら懸念すべき点として、殺人事件の犠牲となった319人のうち女性は181人と過半数を超えており、日本は被害者の女性比率が世界で最も高い国

「少子化対策」と言えば何でもあり

政治家が理解しているのか理解していないのかは不明だが、少子化対策と言えば何でもありの状況になっている。 菅官房長官が「不妊治療に保険適用」と述べたが、年齢や回数の制限を付けるべきである。 保険適用にする以上は費用対効果を考えなければならないので、成功の可能性が低いものや救済に適さないものへの給付は制限されて当然である。「自助・共助・公助」と言うのであれば、共助や公助の前にまずは自助、すなわち若いうちに妊娠・出産することを奨励するべきだろう。「遊び惚けていたために夏休みの宿