「女性の就業率があがると出生率があがるなんて嘘」を検証

タイトルには同意だが、個々のデータ分析が問題だらけで「統計くらい見ろよ」はこの著者本人にも当てはまる。

ここでの高い就業率の地方というのは、未だに農業が多く、農業はそれこそ夫婦共に稼ぐものだからだ。

グラフで女の就業率が最も高い福井県でも総人口に占める農業就業人口は2%強に過ぎないので、未だに農業が多いことが地方の就業率の高さの主因とは言えない。それよりも、職住近接や親との同居・近居との関係が強い。北陸事情については下の記事などを参照(論旨は参考にしないように)。

合計特殊出生率とは、一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均を示す

これもよくある誤りで、ある期間の15~49歳の各年齢の出生率(age-specific fertility rate)を合計したものが合計出生率(total fertility rate)である。下のグラフの面積がTFRを表す。

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追記すれば、一人当たりの母親が産む子どもの数は、第二次ベビーブーム時代と変わっていません。

これが誤りであることは検証済み。

東京は全国的に合計特殊出生率が最下位といわれているが、それは出生が少ないのではなく、未婚者が多いからだ。その証拠に人口千対の粗出生率においては、東京はむしろ上位に位置するし、絶対人口比からして、東京の出生数が日本の全出生の12%を占めているわけで、むしろ東京の出生こそが今の日本の出生を支えていると言っても過言ではない。

これも意味不明で、未婚者が多いから出生が少なくなっている。「人口千対の粗出生率においては、東京はむしろ上位に位置する」のは人口構成が相対的に若いからである。しかし、2015年には20~30代の女の人口の13%程度を東京が占めていたが、出生数は11.3%(2019年は11.8%)だったので、東京が「産む機械」の稼働率を引き下げていることになる。

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就業率が大幅に増えたのは、子育てが一段落した45歳以上の妻の就業率だからだ。

そうではない。

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当該年齢の女性の就業率があがるほど出生率は下がるといえるのです。

相関関係を見るのであれば、合計出生率ではなく当該年齢の出生率で比較しなければならない。25~29歳は負の相関だが、30~34歳は弱い負の相関になっている。

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女性の就業率の増加は、明らかに女性の平均初婚年齢の高齢化とリンクしています。

これは就業率up→晩婚化というよりも、晩婚化・非婚化→寿退社が減る→就業率upの因果関係が強いと考えられる。晩婚化・非婚化には高学歴化が影響している。なお、平均初婚年齢の上昇が近年鈍化したのは、30歳が節目として強く意識されているからではないかと考えられる。

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女性活躍も少子化対策もすべて茶番なんです。

官庁や大学や大企業・マスメディアで働くエリート女(とその夫)が、「弱者特権」を拡大するために女性活躍や少子化対策という大義名分を利用していることも見逃せない。

男女共同参画社会は、霞が関エリート女性官僚と、上野氏を中心としたフェミニズム/フェミニストたちが推し進めてきたと、この動きの中にいた大泉博子氏が明確に述べている。

男女平等先進国の北欧のエリート女はもっと露骨である。

お金をばらまいて地方の小さな町の出生率が少しあがりました、なんてマヤカシの施策はどうでもいい

これについては下の記事で検証している。

30年間も平均給与があがっていない先進国なんて日本だけです。そっちの方がよっぽどおかしい。

これについては下の記事や[経済]を参照のこと。キーワードは人口減少・金融資本主義(株主至上主義)・グローバリゼーションである。

少子化関係の記事の大半は、フェミ系イデオロギーのために客観性を欠いたものか、人口統計の知識を欠いたものなので注意してもらいたい。


「日経COMEMOは、様々な分野から厳選した新しい時代のリーダーたちが、社会に思うこと、専門領域の知見などを投稿するサービス」ということだが、はっきり言って、この著者には「専門領域の知見」が不足している。

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