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第1回 今宵ゴッホは我々のもの(大澤→丸山)

株式会社との丸山さんと往復書簡を始めることになりました。

丸山さんとの出会いは…出会いと呼んでいいのかわからないのですが、確か私が丸山さんの経営されている本屋さん「museumshop T」へ押しかけたことが始まりだったように思います。

丸山さんとの出会い

だって、名前に「ミュージアムショップ」がついている本屋さんですよ?行かないわけにはいかないわ。事務所で私の自費出版誌を渡して、ミュージアムのこと、本のこと、いろいろお話させていただきました。

それから、千葉市美術館で一緒にミュージアムグッズに関するワークショップをやったり、拙著『ミュージアムグッズのチカラ2』にて、これまた丸山さんが経営されている、千葉市美術館のミュージアムショップBATICAの取材をさせていただいたり。

娘と東京に遊びに行った際は、丸山さんとおいしいご飯食べたりもしましたね。私がトイレに行っている隙に、娘と将来の話をしたでしょう。私には全然教えてくれないんですけどね。

でも感謝しています。そうやって、娘にとって「親以外の大人」でいてくださること、真摯に人と向き合う姿を見せてくださること…そういう大人が世の中にいるんだって、今は気づけなくても、彼女が大人になってから効いてくる、漢方のような力があると思います。

往復書簡を始めるきっかけ

往復書簡を始めることになったのも、確かその日の食事の席でしたよね。

丸山さんがぼんやりと「アウトプットって難しいよね」というお話をされていたのが口火だったかしら。

長文を書くのって、なかなかきっかけがないと難しいですし、見えない相手に投げるボールって手ごたえがなくてなかなか継続できないですよね。

SNSで何となく流れてしまう灯篭流しのように、とめどない思考の手がかりが流れて行ってしまう。なんだかそれってもったいない。でも暗闇にボールを投げるキャッチボールも難しい。

そこで、丸山さんと私とで、往復書簡ならできるかもね、っていう話になったのですよね。

あらゆるアウトプットの形を用意する

丸山さん、私最近、短歌を始めたんです。

学生の頃からたまに楽しんでいたのですが、最近は趣味と言えるくらい、なにか心が動く出来事があったら歌にしています。

きっかけは俵万智さん。

「プロフェッショナル仕事の流儀」に出演されたのを機に、Twitterで短歌の形式で短歌を作る企画があったんです。友達に誘われて私もまた短歌を始めました。

身がよじれるような悲しい出来事も、心に焼き印を残すような熱い夜も、全部歌にできるんだと思えばあんまり未来が怖くなくなりました。むしろ全部歌ってやるからどんとこい!という気持ちです。

出来事や気持ちって、「あーこれは短歌よりnote向きだな」「SNSで適当につぶやくくらいなら作品に昇華しよう」など、適するアウトプットがあるように考えています。

私なら、ミュージアムのことはSNSで下書きを兼ねてつぶやきながら整理する→長文にまとめて有料noteや原稿のネタにする、みたいに。これはどちらかというと「ミュージアムグッズ愛好家としての自分」を残すときですね。

でもそこに「大澤夏美という人間としての自分」「女としての自分」「生物としての自分」はいない。なので短歌という形態を今は使っています。

お友達と歌集ZINEを作るのが最近の目標。それぞれの人間にしか見えない景色を歌い、一冊にまとめるのが楽しみで楽しみで。

最後に、俵万智さんの企画で作った一首をここに置いて、この往復書簡の締めといたしますね。

筆圧に背中の爪痕よみがえる
今宵ゴッホはわれわれのもの

https://twitter.com/momonokeMuseum/status/1632701499770798080

ゴッホの作品を愛し合う二人で見る展示室。「これは私のための作品だ」と来館者が心から思った瞬間を歌ってみました。

丸山さんからのお便りは1週間後の月曜日に更新されます。みんなで楽しみにしていましょうね(どうかプレッシャーに思わないで)。

それではまた。札幌はまだ肌寒いです。東京のソメイヨシノがうらやましい。

大澤夏美より

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大澤夏美(ミュージアムグッズ愛好家)

1987年生まれ。札幌市立大学でメディアデザインを学ぶ。在学中に博物館学に興味を持ち、卒業制作もミュージアムグッズがテーマ。北海道大学大学院文学研究科(当時)に進学し、博物館経営論の観点からミュージアムグッズを研究し修士課程を修了。会社員を経てミュージアムグッズ愛好家としての活動を始める。現在も「博物館体験」「博物館活動」の観点から、ミュージアムグッズの役割を広めている。

丸山晶崇(株式会社と)

東京都生まれ。デザイン事務所や制作会社勤務を経て2009年に独立。2010年4月より2012年6月まで「国立本店」の店長を担当。2011年、国立市谷保に建築家を中心とした市民協働プロジェクト『やぼろじ』を始める。また、2013年7月から2017年11月まで同施設にてギャラリー兼ブックショップ『circle [gallery & books]』を企画・運営。グラフィックデザインの仕事を中心として美術館のビジュアルディレクションや書籍のデザインの他、各種の企画からデザインまでを幅広く担当。
また2014年からmamoru(サウンドアーティスト)/下道基行(アーティスト)/芦部玲奈(アートマネージャー)と『旅するリサーチ・ラボラトリー』の活動も続けるなど、アーティストとの共同プロジェクトなどにも積極的に参加。「デザイナーとは職業ではなく生き方である」をモットーに、デザインを軸にしたその周りの仕事を進めている。長岡造形大学非常勤講師。


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