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コンビニ人間…多様性とか普通とか

書評⭐️⭐️⭐️⭐️

この物語の主人公は世間からは一風変わった目で見られるであろう36歳のコンビニ🏪アルバイトの女性が主人公です。彼女の目を通じて見える世界は、普段、我々が普通と考えている(と思われる)世界観や、価値観からは逸脱したものに映ります。しかし、そう言う彼女が社会で自分の生き方をどう見い出して行くか、それが一つのテーマになっている様に思います。

損得は別にして、現代社会で多様性と言うものが尊重されるならば彼女の様な生き方もあるはずですが、多数が賛同する普通と言う世間一般の価値観に抗って生きていく事は困難です。だから普通に従順に生きていく事が賢く正しい事なのか❓個人の本当に感じる実在感とは…❓作者の問いかけは其処にあるでしょうか。主人公の彼女の考えや行動は極端に偏って奇異にも映りますが、そう言う彼女を通じて世界が描かれる事で、読書は一層、普通と言うものを考えさせれられる。それでよりメッセージ性の高い作品になっており、対人関係性が人とは違う彼女(アスペルガー症候群かも?)が自分の生き方をどう見いだして行くか面白く書かれているのもポイントです。詳細は以下で。

※ネタバレも含めますので、ご注意下さい。

主人公の古倉恵子は36歳のコンビニ🏪アルバイト。大学を卒業以来、就職した事が無く、彼氏が出来た事も無く、もちろん結婚しておらず、しかも処女👶🏻。大学時代に始めたアルバイトを18年間続けており、アルバイト先の店長も8人目。そんな彼女は子供の頃には、人との関係性において一風変わった奇妙がられる女の子でした。死んだ小鳥を見て「これ食べよう」と言ったり、けんかする男の子のけんかを辞めさせる為に頭をスコップで殴ったり、ヒステリーを起こして怒る若い女の先生のスカートとパンツ👖を下ろしたり。それらは奇異な言動にも映りますが、彼女にとってはそう言う言動を取る合理的な理由がちゃんとあるのです。しかし、周囲からは受け入れられず両親もどうしたら「治る」のだろうと悩んでしまいます。そう言う彼女は人付き合いが上手くいかず、休み時間もいつも一人で過ごしていました。

大学時代にアルバイトに興味のあった恵子は、コンビニ🏪のアルバイトに魅かれます。そして、整然とマニュアルの整ったコンビニ🏪のアルバイトをこなす事で初めて世界と関係を持ち、世界の正常な部品として存在する自分を感じました。

その後、就職活動などもやったのですが上手くいかず、執拗と言って良いほどコンビニ🏪のアルバイトを続けていました。ただ規則正しいコンビニ🏪のバイトだけが彼女を世界に対して存在足らしめているそう感じながら…。

そんな中で地元の友達と会う機会がありました。周囲は結婚やら就職やら其々ある訳ですが、恵子だけが何も変わらずコンビニ🏪アルバイトで、誰かと付き合った事も無いと正直に応えてしまうと周囲は気まずい雰囲気に…。そんな中で恵子はコンビニ🏪で働く自分を想像して安心します。妹の家を訪ねてみると、普通の妹は結婚💒して子供もおり姉の事をリハビリ中だと気づかいました。

コンビニ🏪にまた新たな新人が入って来ます。35歳で無職の白羽と言う男です。この男は自分もコンビニ🏪店員でありながらも、コンビニのバイトを見下して喋ったり、口癖は「底辺」で、コンビニ🏪アルバイトを始めたのも婚活の為だと言う男です。この男と恵子はとある理由で、後に一緒の部屋に住む事になります。そして、この白羽は常連客の女性に対するストーカーが疑われアルバイトを辞める事になります。

また友達と皆で、今度はバーベキューをやる事になりました。そして就職しない理由を聞かれたり、結婚を勧められる。その中で恵子が「このままではダメなのか?何でダメなのか?」と問うと、「やべえ」と言うつぶやきが聞こえました。彼女はアルバイトを辞めさせられた白羽と同じく自分が世界の異物になったと感じ、家族が自分を治そうとしている理由を知りました。

バーベキューの帰り掛け、恵子は白羽と出会います。フェミレスで白羽と話しをする事にした恵子ですが、白羽は恵子に自分は少数派であるが誰にも干渉されたくはない、しかし、ムラからは弾かれたくはないので結婚💒するのだと言います。それを聞いた恵子は白羽に自分と婚姻届けを出さないかと持ち掛けました。恵子にしてみればそれにより、ムラの方針に従えれば都合が良い訳です。

白羽を家に呼ぶ事にした恵子は、妹や友人にそれを話しますが、妹はそれを聞いて大喜び。友人もそんな恵子を歓迎します。当の恵子にしてみれば、白羽が家にいる事で都合が良い訳で、動物を飼って餌を与えて住まわせているその様な感覚です。勤め先のコンビニ🏪でもそれを告げると店長をはじめ皆大喜び。コンビニ🏪の仕事よりも恵子のゴシップを気にする周囲に恵子は違和感を、周囲が「店員」ではなく「ムラのオスとメス」になっていく不気味さを感じました。

それから1ヶ月後のある日、白羽の義妹が白羽の借金の返済を迫りに恵子宅を訪ねて来ます。白羽は自分は家の事とネット企業に専念し恵子が働く、お金💰は恵子の就職先が決まったらそこから返すと言い、そうして義妹を帰しました。そして恵子はコンビニ🏪のアルバイトを辞める事になりました。

恵子がコンビニ🏪のアルバイトを辞める時、皆は祝福します。恵子は皆が祝福する普通の人間になって行くことが不気味でした。コンビニ🏪のアルバイトを辞めた恵子は、コンビニによって行動の合理性を考えていた基準を失った状態で喪失感を感じました。

コンビニ🏪のアルバイトを辞めた1ヶ月後に恵子は就職活動を続け、派遣の仕事の面接を受ける事になりました。面接先へ向かう途中、コンビニ🏪に立ち寄りました。すると、恵子の耳👂にコンビニ🏪の「」が流れ込んで来ます。まるで細胞に語りかける、音楽の様に。コンビニ🏪が何を求めているか、手に取るように分かります。恵子は自分がコンビニ🏪の為に生まれて来た、人間である以上にコンビニ人間である事に気付くのでした。それに気付いた恵子は白羽と別れ、たとえ人間として歪であってもコンビニ🏪人間として生きていく事を決心するのでした。

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周囲の圧力があっても、自分の生きる道を自覚した恵子です。ハッピーエンド❓なのかもしれませんが、そんな恵子を周囲も認め、社員になる事を勧めるとか、コンビニ🏪ではないがもっと大きな店舗型の店での仕事を勧めるとかやり様はあるように思いました😂コンビニ🏪にとって都合が良すぎる人間ですよね。しかし、こう言う表現にする事でメッセージ性が高くなっていると納得しました。普通と言う世間の及ぼして来る圧力は、私自身も感じたりしますが、現代の生き辛さの一つはそこにあるかなと思います。そう言う生き辛さも表現された作品でした。

(了)




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