「親子のサードプレイス」を考える
こんにちは。神戸・三宮で「人生を全力で楽しむママパパとキッズのためのサードプレイス」をつくろうとしています、KOBE PLAY PORT準備委員会(※現:おやこの世界をひろげるサードプレイス PORTO)の佳山です。
今回のイベントを企画した背景
2020年末のオープンに向けて準備を進める中で、「親子のサードプレイス」ってどういう場なんだろう?なんで、園や学校ともまたちがう、そういう場所がほしいんだろう?ということを、これまでも手がけてきたゲストと、同じようなテーマに興味のある方たちとご一緒に、あらためて考えてみよう!ということで、今回このイベントを企画しました。
今回のゲスト:保育士起業家・小笠原舞さん
2016年に関東から神戸に移住し「親子まるごとを受け入れてくれる」長田のまちをこよなく愛する、1児のママであり、保育士起業家。企業・地域・分野を越えて多くの企業や自治体とコラボし、親子のための環境づくりに関する事業を展開する「こどもみらい探求社」共同代表。大人も子どもも同じ人間として平等でいられる場であることを重視した、子育て支援コミュニティ「asobi基地」や、子どもだけでなく、親子同士で対話・探求をすることで、親子で生きることを楽しむ力を身につける「おやこ保育園」を立ち上げる。
「親も子どもも生きることを楽しんでいこう」「大人も子どもも同じ人間として平等に向き合える場を」という理念や「こどもに向き合う大人として、自分自身が感覚を広げていこう」という想いでアクティブに活動されるところに超シンパシーを感じ、今回熱烈オファーをさせていただきました!!!
▲盛り上がった事前打ち合わせ直後(新長田・六間道にある「r3」にて)
大人と子どもMIXでのリアル×オンラインの同時開催
今回、KOBEPLAYPORTオープンに向けて初のイベント開催だったのですが、大人と子どもMIXでのリアル×オンラインの同時開催、という試みも初で、どきどきしながら迎えた当日。あいにくの雨降りな土曜でしたが、リアル8組、オンライン40名近くの方にご参加いただきました!
▲ゲストのまいさんもお子さんと来てくれました
▲ゲストとのトークセッションはリアル×オンラインで、終了後の交流会はリアルの方のみで、という構成
どうして「親子のためのサードプレイス」をつくりたいのか(主催者/佳山)
はじめに、主催者佳山から、今神戸市中央区で準備を進めている「親子のためのサードプレイス」についてご紹介。なんでこういう場所をつくろうと思っているのか。
私自身が一児の母として「子どもにはいろんな世界を知って、人生を楽しんでほしい!」と、習い事や土日のお出かけ先を探しては行ってみたりをしてきた中で、そう願うからこそ、親である自分自身が、子どもに一番身近な大人として、世界を広げて人生を楽しんでいる背中を見せられる人でありたいという思いが背景にあること。
そんな思いで、仕事だったり勉強だったり、自分自身の世界を広げていこうとやってきたものの、
一人の大人として広げていったものを子どもに伝える機会は少ない、自分一人で見せてあげられる世界には限界があるとずっと思ってきたこと。
「子どもの世界をひろげる」もいいけれど、「子どものために」と自分があまり楽しめないことに渋々時間を使うのではなくて、親子で一緒に、楽しみながら「世界」(といっても地域の人とのつながりだったり、日常の過ごし方の選択肢だったり)を広げられるような機会、場があってもいいのでは、何よりも自分自身がほしい!と、こどものための場所でも、親のための場所でもなく、親子の世界(過ごし方・交友関係・価値観)を広げる場所、親子のためのサードプレイスをつくろうと思ったこと。
▲具体的にどんな場所をつくろうとしているのかも、ご紹介。
そこから実際に「親子のサードプレイス」を手がけてこられた(といってもご本人は、特に「サードプレイスをつくろう」と思ってやってこられたというわけではないのですが笑)ゲストのまいさんへ。
「子育ての前に、「生きること」を一緒に親子で楽しみたい」(ゲスト/まいさん)
社会人経験を経て独学で保育士になろうと思ったきっかけから、保育士になり働いている保育園の親子以外にももっと出会いたい!と飛び出して活動をされ始めたときのこと。
「こどものおもしろさをもっと知ってほしい」「たくさんの親御さんのリアルな声を聞きたい」という自身の強い実感から、どうしたらたくさんの親子が集まり、こどもの世界を見てもらえるか・面白がってもらえるか、を模索してこられる中で「asobi基地」をつくられたこと。
こどもとの向き合い方に悩むママたちに多く出会う中で、子育ての前に「生きること」を親子で一緒に楽しむ!という観点で、保育士として伝えられることがあるのでは、とスタートされた「おやこ保育園」のこと。
などなど、具体的な取組の内容も紹介いただきながら、どういう想いで取り組んでこられたのかの部分を多くお聞きしました。
▲ちょくちょく画面チェックをしに来ていた、まいさんのお子さんらくたくん笑
その後トークセッションとして、参加者の方からお申込時にいただいていた質問や、オンライン参加の方からチャットでいただく質問をお聞きするかたちでの対談。中でも特に盛り上がったお話を5つほどご紹介します。
1 多様性を重視するからこそ、場として大切にしたい約束事を提示する
「みんなウェルカム!」というのと、多様性をそのまま受け入れる場にすること、は違う。「ありのままを受け入れる」「大人と子どもが平等な人間として接する」という価値観を場として提示することが重要な一方で、「みんな」に対してその価値観を求めてしまうと「なんでみんなそうしてくれないの?」と押しつけになってくるし、まいさんご自身も実際そうなった時期も経て。「みんな」に押し付けない、あくまでもひとつの選択肢として価値観を提示して、そこへの共感があった上で居てもらうことの大切さを実感しているというお話。
2 子どものありのままを受け入れながら、親の多様な価値観も受け入れるバランス
いろんな価値観、子育て観の人がいる中で、集まった人たちがどうすれば心地よく過ごせるか、ということについて。他の人の子育て観に口出ししない、「そういう考え方の人もいるんだ」とサラッと流せる人もいれば、他のお母さんが注意しないことに「なんで注意しないの?」と気になってしまう人もいたり。「子どものありのままを受け入れる」ことと、いろんな価値観を持つ親のことも受け入れることの、バランス。「〜しなきゃ」と普段からたくさん感じているお母さんの感覚も受け入れながら、そこからどうやって心地よく解放できるか。
3 親や保育者でない大人が参加する魅力を伝える、難しさ
お母さんにリラックスして過ごしてもらう上で、子どもと一緒に遊んでくれる保育士さんの存在はもちろん大切。だけど、親になって初めて子どもに向き合うのではなくて、子どもを持つことをまだそんなに意識していない人が子どもと過ごす経験をする場をつくりたい、というのもあり、親でも保育者でもない人にこそ、関わってもらいたいと思っていること。子どもにとってそれが大切、というのはもちろんだけど、大人にとっても、子どもと接することで気付くこと(例えば、自分が持っているバイアスなど)や学ぶことが多いというところを、押し付けずに伝える難しさを今も感じていること。
4 親子の場もオンラインにシフトする?できる?
親子が家族以外の人と出会う場、触れ合う場は、子どもにとっても、親にとってもやっぱり大事だと思うし、リアルでしか感じとれないものもたくさんある。そこの重要性はこれまでやってきた実感からも、変わらないのでは。ただ、コロナの影響で親子のためのコンテンツもオンラインでできないか模索する動きが全体として増えたことについては、子どもが小さくおでかけしづらい時期でも参加できる選択肢が増えたという意味でとてもポジティブに捉えていて、まいさん自身も「おやこ保育園」をオンラインでやってみようとチャレンジしているというお話。(無償で、恩送り式で届けたい!と今クラウドファンディングにも挑戦されています!)
5 一番身近な大人として、親自身が心地よくいられる選択をすること
「子どものための場所では大人が楽しむことは後回し」「大人の場所では子どもには我慢してもらう」という感覚を持つ人も多い。もちろん、時と場合によって、大人/子ども、と分けた方がいいこともあるし、子どもを預ける、預けないの選択も人それぞれ。いずれにしても親の感情を子どもはしっかり感じ取っているし、親自身が心地よくいられることを大切にしてもいいのでは。子どもには「のびのびと自分のやりたいことをやってほしい」といいながら、親がいろんなことを我慢して過ごす、という矛盾について。
また、これまでたくさんの親子と出会ってきたまいさんの実感として、「子どものために」とたくさん我慢しているお母さんほど、本当の気持ちに目を向けてもらうことが大切だと。子育てに限らずかもしれないけど、良かれと思って我慢することが当たり前になると、自分の気持ちを無視してストレスになる。その結果として人に厳しくなったり、他者にフラットに接することができなくなること、許容度が下がることにもつながってしまうことがあるよね、という話。(会場、チャットともにここへの共感度、とても高かったです)
さいごに
「親子の」といっても、子どものための場所が多く、大人も子どもも心地よく、我慢せず、一緒に世界をひろげることを楽しめるような場が、もうちょっとあってもいいよね。今回のイベントを通じ、そう感じられている方が多いことをあらためて実感しました。
一方で、「人の子育て観、価値観を否定しない」「子どもに身近な大人として、自分が心地よい選択をする」という価値観だって、必ずしも正解じゃないこと。何かの価値観を強く押し出すということは、そうじゃない価値観をもつ人を排除することになり得ること(その意図がなかったとしても)。本当はもっとこうしたい!と思いながら、いろんな事情でその選択をできないときだってあるし、状況やコンディションによってグラデーションはあれど、他の人の選択や価値観に「ん?」と感じてしまうことも、ある。同じ価値観をもつ人だけの空間は心地よいかもしれないけれど、その心地よさに自分が浸りたいわけでも、子どもをそこに染め上げたいわけでも、ない。
でも、だからといって、「他の人がどう思うか」に気を使いすぎて自分の価値観を大切にできないのは、ちがう。どんな価値観も人それぞれだよね、みんなちがってみんないい、と提示したい価値観をぼんやりさせてしまうのも、ちがう。
どっちの視点も、しっかり持っておきたい。その上で、いったりきたりしながら、正解がないことをかみしめながら、落とし所を探り続けていきたいなと。
子どもと向き合うという、特にそれぞれの価値観が強く現れる場で、模索しながらチャレンジを続けているまいさんのお話を聞いて、あらためて思ったのでした。
※大人と子どもMIXでのリアル×オンラインの同時開催という初の試みで、特にオンラインでご参加いただいた方、音声が聞こえづらいといった部分も多い中、あたたかく視聴くださり、本当に感謝しております。子どもも大人も、我慢せず一緒に気持ちよく過ごせる場をつくっていく上で、改善できるところはたくさんあるなと思っております。あたたかい気持ちでご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!
この記事は、「おやこの世界をひろげるサードプレイス PORTO」オープン準備期間中に投稿していた記事の再掲載となります。
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