【短編小説】 因果律の奏で
鉄橋の上を電車が滑るように走る。3本の川を渡れば県境を越えてそこからは千葉県だ。僕は電車のなかで長い手紙を書いていた。とても長い手紙。このフレーズは小沢健二の楽曲〈ぼくらが旅に出る理由〉を彷彿させる。
とても長い手紙。このフレーズは同時に夏目漱石の小説『こころ』で、先生が主人公に宛てた手紙。あの長い手紙を読んでいる主人公の様子を想像すると、僕はいつもくすりと笑ってしまうのだ。
ちなみにこのブログ面白いですよ。あんなに長い手紙。読むほうも大変だが、書くほうも書くほうだ。
そして、小沢健二の歌詞に戻る。僕が長い手紙を書いていたのは、〈ぼくらが旅に出る理由〉と同じで、僕に宛てられたハガキが1枚届いたから。その手紙はきっと摩天楼で書かれたに違いない。きらきらと輝いているけれど、どこか虚ろな文体。僕はそれをぎゅっと握りしめた。今日こそ僕はそのハガキに返事を書こうとした。
電車が県境を越えるまでに僕はそれを書ききることができなかった。続きはまた今度、気が向いたときに書くことにする。手紙とはそういうものだ。文通とはそういうものだ。
今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。 これからもていねいに書きますので、 またあそびに来てくださいね。