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同年代の作家とデザイナーが語る、”こども向け”にとらわれない絵本の魅力――北村人さん×坂川朱音さん対談

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1月に刊行されたばかりの絵本『カシャッ!』。気鋭のイラストレーターとして活躍中の、北村人さんによる新作です。
カメラを持った男の子が、身近な食べ物たちを「カシャッ!」と写真に撮りながら、「いいおかお」を見つけていきます。ページをめくった瞬間、ぱっと表情を変える、食べ物たちのかわいいアクションに注目の一冊です。

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デザインを担当したのは、事務所の朱猫堂を立ちあげ、多方面で活躍する坂川朱音さん。
同い年でもあるお二人に、新刊『カシャッ!』のこと、共通の友人や絵本のことなど、ざっくばらんに語っていただきました。
緊急事態宣言発令の中、オンラインで対談を行いました。「こども向け」あるいは「大人向け」といった枠にとらわれない、お二人の絵本に対する姿勢を知ることが出来ました。

北村 人 (きたむら じん)
1981年東京生まれ。絵本作家、イラストレーター。
絵本に『おひさまでたよ』(絵本館)、『はーい おはよう!』(福音館書店)、『万次郎さんとおにぎり』、『万次郎さんとすいか』(ともに本田いづみ・文 / 福音館書店)、挿絵を手がけた書籍に『そして生活はつづく』(星野源・著 / 文藝春秋)、『ぼくの守る星』(神田茜・著 / 集英社)などがある。
坂川朱音(さかがわ あかね)
1981年北海道生まれ。神奈川県出身。デザイナー。
坂川事務所で10年間の勤務のち2016年独立。2018年に朱猫堂を設立。主に書籍や映画のポスター、パンフレットなどを手掛ける。2020年に急逝した坂川栄治と坂川事務所の回顧展(http://queuegallery.com/fumufumu.html)を2021年8月までプロデュース中。


同年代としての共感と安心感

北村人さん(以下、北村) はじめてお会いしたのは、いつでしたっけ?

坂川朱音さん(以下、坂川) たぶん24、5くらいの時だったかな? 私が坂川事務所(坂川朱音さんのお父様、デザイナーの坂川栄治さんの事務所)で働いていた時にいらっしゃって。作品のファイルを見て、「ああ、同い年の人だ」って思って。坂川事務所に来るイラストレーターの方は、基本的には自分より年上の人ばっかりで、こんなに若い人とお仕事することが無かったので、とても珍しかったです。

北村 そうですね。ありがたいことに、若いうちからお仕事をいただけて。当時は、どこに行っても年上の方が多かったので、あれから多少キャリアを積んできたと思うんですけど、ずっと下っ端感が抜けないというか。(笑)

坂川 今でも?(笑)

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(左・坂川朱音さん 右・北村人さん)
2021年1月12日 オンライン対談にて

北村 あと、デザイナーさんの知り合いで同年代とかになると、かなり限られてきますよね。

坂川 あ、でも、北村さんが絵をかいた本のデザインもしてる新井くん(新井大輔さん)は、私と同級生ですね。新井くんもそうなんですけど、誰から聞いても北村さんって評判がいいですよね。

北村 ほんとですか?

坂川 みんな口をそろえて、「いい人、いい人」って。なんだ、仲いいの私だけじゃないんだと思って。(笑)

北村 ははははは! なんですかねえ、ちょっと面白味が無いと言えば、無いですね。(笑)

坂川 以前、北村さんに「友だち連れてくから」って言われて、みんなで一緒に飲んだことがありましたね。北村さん含めて3人全員、野に咲く花のような人たちでした。(笑)みんな中学生みたいだったもんね。3人でキャッキャッて。(笑)

北村 あれ? デザイナーの黒ちゃん(黒瀬章夫さん)とは、元々知り合いだったんだっけ?

坂川 そう。彼が展示を企画したりしていて、そこに誘われて仲良くなって。

北村 そうかー。特に同年代として集まったことは無いけれど、友だちも繋がっていたり、坂川さんとは共感出来る部分が多いですね。

坂川 なんか安心感がすごい。(笑)

北村 ですね。(笑) 今回(『カシャッ!』で)お仕事出来たのも、すごく良かったです。

坂川 安心感と言えば、坂川事務所で北村さんに最初にお願いをした『渚の旅人』(著・森沢明夫)という、上下巻2冊の旅の本がありましたよね。

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『渚の旅人1 かもめの熱い吐息』(著・森沢明夫/東京地図出版)

坂川 表紙だけでなく中面もかいてもらっていて、国内の「ここに行きましたよ」みたいな部分的な地図が何度か出てくる。それで、その地図に県境の線を1本引くだけなんですけど、北村さんに何度言っても、違うところに線を引いてくるんですよ!(笑)

北村 あはははは! ちょっと! 今、褒められると思って聞いてたんですけど。(笑)

坂川 「そういう事ってあるよね~」って思いながらやってました。私もその口だから、なんか安心して。(笑)たしか新潟県だったと思うんですけど、やっと正しい位置に線が入った!と思ったら、一番最後に、今までずっとかけてた新潟の「潟」の字を間違えていて。(笑)

北村 あははははは!

坂川 「惜しい!」って。(笑) さっきまで合ってたのに……。私も事務所の下っ端で、ミスして、怒られてばかりいたから、その時は「そうだよね~、20代こんな感じだよね~」って思って。(笑)

北村 そうでしたー。ありました、ありました。(笑)懐かしいですね。


イラストレーターとして、そして絵本作家として


坂川 最初に出会ったのは、まだお仕事の数が少ない時だったけど、徐々に本屋で北村さんの装画を見かける頻度が増えてきて。「わー、売れてるなー!」って思いながら見てたら、今度はどんどん仕事の規模が大きくなってきた。だから、同年代の人で売れていく様子を一番間近に見た人かもしれないです。

北村 いやー、ありがたいです。最近友人とも話したんですけど、僕はここまで100%運で来ていると思っていて。(笑)

坂川 いやいや。(笑)だとしても、この絵本は、ズルいですよ! わりとセンスあると思うんですよ!(笑)

北村 わりと!(笑)

坂川 イラストレーターの人が絵本作る場合って、なんて言うか、お話でつまずくことが多い印象があって。考えすぎちゃったりしていて。でも、(北村さんの絵本って)シンプルで、なんか巨匠みたいな作りじゃないですか。(笑)なんだろう、頭いいのに、足も速いみたいな……ズルい!(笑)

北村 (笑)でも、逆に言うと、ワンアイデアを繰り返しながら展開していくような、シンプルな作り方じゃないと出来ないというか。頭からお尻までしっかり物語、みたいな作り方は、ちょっと難しくて……。
この『カシャッ!』に関しては、元々2019年に出た『1分えほん これよんで!』の中の一話「はいっ チーズ」を発展させた形なんですけど、素案というか、アイデア自体はもっと前からあって。たぶん「いないいないばあ」の変型というか、そういったものを作りたいと思っていたような気がします。

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『カシャッ!』の原型になった
『1分えほん これよんで!』(ポプラ社)の「はいっ チーズ」

北村 はじめての絵本は、絵のオファーをいただいた『万次郎さんとおにぎり』(文・本田いづみ)だったんですけど、その後「文章もどうですか?」と言われて、考えていく中で、いくつかあがってきたうちのひとつがこれでした。

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『万次郎さんとおにぎり』
(文・本田いづみ 絵・北村人/福音館書店)

坂川 今後は、物語性のある作品をかくかもしれないですか?

北村 僕はたぶん、絵本というものに対して、ちょっと距離感を持っているところがあるのかもしれないんです。だから物語の世界にどっぷり入るというよりは、すこし引いて見ているところがある。もちろん有名な作品にはこどもを通じて触れてはいるんですが、しっかり読んだり、特に詳しいほうでは無いと思うんです。
ただ最近、長新太さんの『キャベツくん』を読んで衝撃を受けて……。こうなってくると、何が正解か分かんないなって。(笑)

坂川 (笑)

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『キャベツくん』(文・絵 長新太/文研出版)
キャベツくんとブタヤマさんの予測不能な会話が続く、
長新太さんのナンセンス全開な絵本。

北村 そう思うと同時に、絵本は(かかれるものが)何であっても成立するんじゃないかという心強さがあって。物語というほど大仰なものではなくても、何かそういうものにチャレンジ出来たらいいな、という思いはありますね。

大人向け? こども向け? 絵本って何だ!?

北村 僕は絵をかくのが仕事なので、普通の同世代の男性と比べれば絵本と接することが多かったと思うんですが、やっぱり元々は少なくて、こどもが生まれてから触れる回数がぐっと増えました。自分で絵本をかくようになって、本屋でチェックすることもありますけど、あえてそれほど見ないようにしているところがありますね。日常の中での絵本といえば、こどもと一緒に読むものという感じです。

坂川 あえて見ないというのは、他の作家さんに影響されたくないということ?

北村 そうですね……イラストレーターになりたいという動機でこの世界に入ってきて、「絵本作家」というものを志していたわけではないので、絵本を生活のために作るものにしたくないというか。ご飯を食べるために絵本を作る、ということになってくると、今の時流とか、世間が求めているものを意識せざるを得なくなってしまうので。イラストレーターの仕事は生活のお金をしっかり得るためのものとしてあって、絵本に関しては、普段の僕のいろいろなものを背負わない形で向き合いたいというか。そうじゃない作り方を確保するため、見ないようにしているところがありますね。

坂川 本屋の絵本売り場って、普通は大人になると、ある時期から行かなくなってしまうじゃないですか。でも、私は大学の時に衝撃的な出会いがあって。学生時代から絵本作家のみやこしあきこさんと友達で、友達同士で誕生日プレゼントをあげる機会があったんです。彼女は当時から絵本作家になりたいと言っていたので友達が彼女にエドワード・ゴーリーの『華々しき鼻血』って本をプレゼントしてたんです。その時に私もはじめて読んで、みんなでゲラゲラ笑って、ほんとに狂ってる!と思って。(笑)超シュールで、絵も大人っぽいし、どちらかというと怖い。話も一見支離滅裂だけど、訳のすごさもあって言葉の言い回しもトリッキーで、これが絵本の売り場にあるっていうのが、すごく衝撃だったんです。そこで疑問を感じはじめるというか、「絵本って何だ!?」みたいになった。(笑)

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『華々しき鼻血』
(著・エドワード・ゴーリー 訳・柴田元幸/河出書房新社)

坂川 こどもは売り場に置いてあっても、まず手に取らなそうだし。その絵本を買ったのも、セレクトショップ的な本屋で、通常のコーナー分けがされてないから見つけたそうなんですけど。
探せば大人っぽい絵本ってのは、海外でもたくさん出てるじゃないですか。でも、それって限られた本屋でしか売っていない。普通の街の本屋には、なかなか置いていない。海外は、大きい都市だと絵本専門の本屋がわりとあったりして。店内を見ると、こどもじゃなくて、大人が普通に読んでいたりする。でも日本の場合って、大型書店だと大人の本とフロアが別れていて、児童書売り場がファンシーなことになってるから(笑)、大人の男の人なんかはこどもがいなかったりすると近づきにくい。でも、じつはそこにゴーリーみたいな内容の絵本がいたりして。だから日本の現状だと、それがこども向けの「絵本」っていう括りになっちゃうのが惜しいなって思って。その間の領域の、アートブックとして受容されないのかな? 「大人向け絵本」ってすると、またカテゴリーに入っちゃうから嫌なんですけど。もっと絵本の捉え方、読者の間口が広がるといいのになと、最近ほんとに思います。

北村 いま人気絵本作家って言われている人の本も、じつはこどもが大好き!という内容の本ではなかったりしますよね。意外に読者の年齢層が高いんじゃないかなって。だから内容は実質アートブックでも、肩書としては絵本作家だったりして……。

坂川 たとえばマンガの売り場って、おじさんもいるけど、こどももいる。おじさんが読める「絵本」もあって、気軽に足を踏み入れられるコーナーになると面白いかも……。
一概には言えないけど、売れている絵本って親が買いたいと思うものが多くて、それって結局大人向けということじゃないですか。逆に、ほんとうにこどもに受けるものって、分かんないですよね。かがくいひろしさんの『だるまさんが』とか、なんであんなに1歳児がゲラゲラ笑って熱狂するんだろうって思うじゃないですか。(笑)

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『だるまさんが』(作・かがくいひろし/ブロンズ新社)

北村 それはほんとうに、こどもが生まれて実感しましたね。なぜか反応がすごい。最近毎週、絵本作家の友人の米津くん(米津祐介さん)と、金澤くん(かなざわまことさん)と、大学の先輩と4人で、オンラインゲームをやってるんですけど。(笑)

坂川 仲良し!(笑)

北村 先日もやってて(笑)、そこでまさに『だるまさんが』の話になって、「いやー、やっぱりああいう絵本は狙って出てくるようなもんじゃないよね」って。だから、絵本って一口に言ってもいろいろあって、分かんないもんですね。(笑)

坂川 そんなにいろんな話をしながら出来るゲームなんですか?(笑)

北村 はははは! 一試合大体15~20分くらいやって、一区切りがついたら、誰かが最近こんなことあってねって話はじめて。で、その話題はもういいか、じゃあ次の試合やろっか、って感じです。(笑)

坂川 でも、そのメンバーすごいですね。なんか、みんなで売れていってる感じで。TEAM NACSみたいな。(笑)

北村 はははは!

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笑顔……よく見ると、じつは笑っていない?


坂川 元々クレヨンでかいているということもあるけど、北村さんって明るい印象の作品が多いじゃないですか。今回の絵本は「カシャッ!」って言ってみんな笑っているけど、普段かくイラストはよく見るとそれほど笑ってない絵が多いですよね。(笑)印象は笑ってる感じなんだけど、よく見るとじつは笑ってない。(笑)

北村 あはははは! 陰と陽で言えば、基本はこどもの本は陽であるべきかなと思っているんですが。

坂川 でも北村さんって、文章のない絵だけで悲しみを表現した『アンジュール』(著・ガブリエル・バンサン)みたいな本も作れそうですよね。『アンジュール』は技巧的なデッサンなので、ほんとうに悲しい!という感じがするんですが、北村さんみたいな素朴な絵でやると、さらに悲しく見えるかもしれない。(笑)

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『アンジュール ある犬の物語』(著・ガブリエル・バンサン/BL出版)

北村 (笑)たしかに悲しみを表現するような本もチャレンジしてみたいです。元々はどちらの感情にもとらえられるような絵をかきたい、という気持ちがあって。余白の多い絵というか。

坂川 クレヨンっていう不自由な画材なのに、なんとも言えない哀愁のある表情ですよね。

北村 知り合いの人が、(安西)水丸さんの教える塾に通っていたのですが、そこで生徒に「画材は出会いだ」ということをおっしゃっていたと聞いて。ほんとうに、その人の性格などが反映されるなって実感があります。クレヨンは結構不自由な部分も多いんですが、良い意味で「うまくならない」画材だと思っていて。そういったところが自分にすごく合っているな、と感じてますね。

坂川 ぱっと見誰でもかけそうで、実はかけないというのが、やっぱりすごいところですよね。白い紙地を残して絵の輪郭線にするやり方とか、デザイナー的な感じもありますし、大人っぽいクレヨンの使い方だなって思います。ほんとにうまくないと、こんな風にはかけないですよね。

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『カシャッ!』表紙絵の原画

北村 たとえば混色をしていくと、もっと色の幅も増えるんですけど、この絵は2色でかこうとかあえてルールを作ると、それ以外の発想が出てくるところがあって。(紙地を残して、絵の輪郭線にするやり方は)色がぶつからないようにように隙間を空けるようになったことが発端で。だんだんその輪郭線の見え方が、いびつで面白いなと思うようになったんです。

ラフの絵からはじまった独自のスタイル

坂川 うまく出来すぎて、なんか違うなあ、みたいなのはないんですか? 線が慣れてきてうまくなりすぎちゃったとか。昔のほうが良かったなーみたいな。

北村 あります、あります! だから、ところどころでバランスはとるようにしてますね。

坂川 左手でかくとか?

北村 あはははは。それをやると、元々の絵よりも下回りそう。(笑)驚かれることもあるんですが、僕は絵をかく時にラフっていうのは出さなくて。イラストレーターの仕事の進め方って、別に決まりがあるわけではないので、これで良いのか最初は分からなかったんですけど。
今の作風に至った経緯として、最初はアクリル絵の具とかでかいていたんですけど、その下絵として、コピー用紙に木炭でかいていたのを友だちが面白がって、「このままでいいんじゃない?」って言われたことが、現在のようなかき方に繋がるきっかけになったんですよね。だから、元々ラフの絵っていうか、それをさらにラフをかくってなんか……。(笑)

坂川 そうやって、はじまったんですね!

北村 はじめてお仕事させてもらう時には、一応ラフがないことを伝えて、その代わりいくつも案を出します、と。なので、基本的にはラフをかかないようにしています。最後に清書ってなると、緊張もするし、かいてる紙がコピー用紙なんで、失敗したらどんどん変えられるっていう気軽さがあるんです。

Honeyview_はいっチーズ(P3-P4)

Honeyview_はいっチーズ(コップ3)

本作りの試行錯誤の中で、じつは食べ物以外にも
採用されなかった沢山の「いいおかお」が生まれていました。
アザーカットだけで、展示が出来そうです。


単なる「笑顔」ではない、それぞれの「いいおかお」


坂川
 こどものころから、ずっと絵はかいてたんですか?

北村 いや、ほぼ大学からですね。どうしようもない生活をしてた中で、突然大学受験を目指して、美大だったらいけるかも?って思って、はじめたので。小さいころは、ドラゴンボールの絵をかいたりはしてましたけど……どこか美術部に入ったり、そういう経験はしてないですね。

坂川 大学の時は、画材は違うとしても、今に近いようなシンプルなテイストだったんですか?

北村 いや、何をかいたらいいか分からない中で、当時流行っていたような作品を模倣しながらやってました。画材もアクリル絵の具でしたね、

坂川 ご両親はふたりとも、デザイナーなんですよね?

北村 両親からの影響って考えてみるんですが、坂川さんの自宅みたいにセンスのいい物が並んでいたりしてなくて、ちょい田舎のちょいダサな家なんですよ。(笑)

坂川 はははは!(笑)

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北村 だから、何かこう、デザイン的なセンスを学んだり、具体的な絵のかき方を学んだりってことはないんです。でも父親が物事を面白いって言う目線には、影響を受けてるなって、大人になって思います。普通とはちょっと違うデザイナー的なその価値観が、ちょっとひねているというか。

坂川 今回の『カシャッ!』も、そういう独自の目線に近いような気がしますね。

北村 ああ、なるほど。

坂川 普通にやると振り向いてニッコリ、とかですけど、カメラのレンズを向けて食べ物の顔が現れるのとか、なんかレントゲンみたいな。(笑)

北村 ひねくれようとしてはいないんですが、そうした素養は身についてるのかもしれないですね。
僕としては、この本は笑顔じゃなくて、「いいおかお」っていうのが好きなところで。「笑う」とはまたちょっとニュアンスの違う、カメラを向けられた物(人)自体の、その物(人)らしさが出る場面をえがいていて。だから、カメラというものを媒介にして、その目線で物事を見てみると面白いんじゃないかな、という提案というか。
好きなミュージシャンの曲で、顔にまつわる歌詞があるんですけど、メンバーのひとりが映画評をやっていて、登場人物に対して「イイ顔出てきた!」みたいに言うことがあるんです。たぶんその流れから歌詞が出てきていると思うんですけど、その「イイ顔」ていうフレーズの幅の広さが、この絵本にもある気がしてるんですよね。

坂川 私はこの本の食パンが、まさかの金太郎飴みたいになってるのが、すごく好きなんですよね。(笑)こぼれた牛乳も笑顔ではないけれど、まさに「イイ顔」ですよね。

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北村 あと、巻末にオマケでついている紙製のカメラを使っていろいろなものを覗いて見てみると、いつもの風景や物も異なった見え方が出来て面白いと思います。ぜひ、いろいろな「いいおかお」を探してみて欲しいですね。

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――次から次へとエピソードが飛び出し、終始笑いっぱなしのお二人の対談、まさに「いいおかお」でした!
北村さん、坂川さん、ありがとうございました!

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(文・写真/ポプラ社 齋藤侑太)


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『カシャッ!』 作・北村人
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https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/2084019.html