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絵本をDIGれ! 第2話:フリマに眠る宝の山 『もん太と大いのしし』編

「絵本をDIGれ!」とは、意外と知られていないポプラ社の隠れた名作絵本をピックアップして、DJっぽいノリで紹介していくコーナーです。

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第2話  フリマに眠る宝の山  「もん太と大いのしし」編

漫画:小山ゆうじろう

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※漫画内では、マスクは省略しています。

☆彡

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『もん太と大いのしし』 作・絵/馬場のぼる
レア度 ★★
友情度 ★★★★★
大いのしし無敵度 ★★★★★

夏の暑さにも負けず、絵本ディガーとして精進する日々ですが、第2話目となる今回は1975年8月刊行の『もん太と大いのしし』(ポプラ社)を取り上げます。

「カラー版・創作えばなし」と題されたシリーズのなかの1作で、その名のとおり、カラーの絵とモノクロの絵が半々くらいのバランスでたっぷり入った、小学1年生くらいから楽しめそうな読み物です。「えばなし」って、今あんまり聞かないワードで、なんかイイですねー。今後使っていきます!

作と絵は、あの「11ぴきのねこ」シリーズ(from こぐま社)で有名な、馬場のぼる先生!
そこまで絵本に詳しくない友達からも、「あのねこカワイイよね~!」と聞こえてくる昨今ですが、こちとら乙事主並みにデカい「いのしし」ですよ! みなさん知ってましたか? なんか隠れたレアグルーヴ名盤的なムードありますなあ。


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まず表紙で目を引くのが、主人公もん太と大いのししの背景の、ほんわか可愛いピンクと黄色のカラフルさ。あれ、この模様なんか見たことあるなー。そうだ、こういうタイダイ染めのTシャツってあるよね? これってヒッピー文化に影響を受けたお話なのかな? でも、もん太の格好ヒッピーっぽくないなあ? そんなことを思いながらページをめくってみます。


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見返しは、イエローとグレーの2色刷りがおしゃれ! 山の上を山鳥が飛んでいく、おだやかな風景です。どうやらヒッピーの話じゃないみたいだな。


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これが主人公、村の少年「もん太」。
もん太って、何度も言いたくなるような名前ですよね、もん太。顔も、馬場先生独特の表情で、なんかまさに「もん」って感じ。


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こちらが、もうひとり(1ぴき)の主人公、山に棲む「大いのしし」。
夏の青空が今の季節にぴったりで、のどかさに満ち溢れている!  ああ、旅に出たい!!
「11ぴきのねこ」もそうですけど、馬場先生の描く動物たちの表情ってめちゃくちゃ最高ですよね。
シンプルなやわらかい線で、読んでる人がそこに感情移入をする隙間がある感じ。元々漫画家としてキャリアをスタートして、深い交流があったという手塚治虫先生とも通じるような、いつまでも古くならないタッチがほんとに素晴らしいです。


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お話はというと、こんな感じ。ある日、もん太は山奥でうわさの大いのししに出会います。射止めようと弓を放ちますが、とてもかなう相手ではありませんでした。ひえー。


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村の若者たちからも、「もん太にゃあ、とても無理だろうよ」とゲラゲラ笑われる始末。
そこへ長者のおきちばあさまがやってきて、「あの大いのししを射止めたものには、わしの馬をやろう」と言いだしました。
柵の向こうから、なんか面白いことねえか?と、こっちを見てるばあさまの表情がベリーナイス。

その言葉に喜び勇んだ村の若者たちでしたが、大いのししの強さを目の当たりにして、みんなすっかり参ってしまいました。しょぼーん。


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もん太も、頑張って弓の稽古を毎日続けますが、大いのししを射止めることは出来ません。
月日は流れ、やがて冬になりました。ある雪の降る夜のこと、大いのししは寒さのあまり、もん太の家にあがりこんで、ゴロリと横になって眠ります。
実際のところ、自分よりもデカいいのししが、家のリビングでいびきかいてたら死ぬほどビビりますが、ほっこり感さえ漂ってくる馬場先生の絵の凄さよ……!

この状況なら簡単に大いのししを射止められるはずなのに、もん太はあえてそうしないんだよね。真のライバルってのは、ただの敵対関係じゃないんだよ。ルパンと銭形、ジョーと力石、花道と流川……分かるよ、もん太!
このシーンが、あたしは一番好きっすね。


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次の日の朝、もん太の家から続く雪の上の大いのししの足跡に、村中は大パニック! 興奮した村人たちは、そのまま大いのしし狩りを決行します。
大いのししの背中を目がけ矢が乱れ飛ぶ中、なんと、もん太の放った矢が命中! 大いのししは転がり落ち、沼のなかに……。

この後、どうなるの?! じつは最高のエンディングが待っているので、これを読んでいる人はDIGとCHECKお願いします!!


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ところでこの作品、よく調べてみると1975年の刊行後、2000年にシリーズ全体の改定版が出ていることが分かりました。
先日、たまたま近所の古本屋をDIGしていたところ、その初版版を発見!
なんと豪華なケース入り。これからはもん太を箱入りで育てますね!


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左が初版版、右が現行の改訂版。背のデザインが、ちょっとだけ今と違うね。写真だと分かりづらいけど、表紙の紙もちょっと違う。
でも、表4のおきちばあさんの笑顔はいつまでも変わらないね。

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奥付のプロフィール脇の馬場先生に見送られて、今回の記事はおしまいです。では、また次回の「絵本をDIGれ!」でお会いしましょう!
DIGGIN’!

(文/ポプラ子 漫画/小山ゆうじろう)

小山ゆうじろう プロフィール
1990年東京生まれ。2012年漫画家デビュー。「週刊少年ジャンプ」のギャグ漫画新人公募賞で『ランニングディ』が受賞。「少年ジャンプ+」にて連載していた『とんかつDJアゲ太郎』(原案: イーピャオ)が話題になり、2020年10月に実写映画化。少年ジャンプの連載「巻末解放区!WEEKLY週ちゃん」のイラストを担当中。

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ただいま練馬区立美術館では、「没後20年 まるごと馬場のぼる展 描いた つくった 楽しんだ ニャゴ!」が開催中です。
「11ぴきのねこ」シリーズや、ポプラ社から2017年にリニューアルして復刊された「くまのまあすけ」シリーズの原画も展示中です。是非、この機会に足をお運びください。


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