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時々怒るアートin NY

かなり昔のことになりますが、NYの歴史の長いアートスクールにいた。貧乏な若い学生とパトロンと呼ばれる多額な寄付をしてる富裕層のシニア学生が混在する不思議で自由なスクールだった。どこでも学校というものは、存続させるために寄付金がものすごく大切だ。


裸婦デッサンクラスのモデルは
・引退した黒人の老ボクサー
(ちょっとした下ネタ言いがち)
・元ストリッパーの白人おばあさん(顔は老人だが豊満ボディ、ロッカーで半裸で話し込む)
・ヨガ好き自由女子
(きわどいポーズで「普通にしてください」マネージャーからよく注意ww)

学期末にはクラスで持ち寄りパーティがあったりします。

クラスマネージャーのニッキは父が解剖学医。筋肉や骨の仕組みをよく研究したい学生を連れて週末、遺体のデッサンに。私?「お願い✋やめて〜」お誘いは断固拒否。

「彫刻のクラスにいる日本男子が沢山の男性器の彫刻を作ってるから見て来い」とロビーでたむろしてるアメリカ人達。
「話題らしいじゃない。私にも見せて」
「いや、もう見せるのやめた」
「なんかデビットが"あれはかなりコンプレックスがあるな"って言ってたよ」
「なんかオリエンタルシェープ(東洋人の形)で俺たちのとは違うって言われたんだ」
みんな集まって来て爆笑。

アメリカは国土が広く多種多様な人種がいるが、その中心にあるのは正義感かもしれない。時折オーバーに感じることもあるが、秩序には必要なようだ。

西欧には古くからの騎士道が潜在的に存在し、アメリカの男子は小さな頃から家を守る父の手助けが出来たり、レディーファーストが出来たりして一人前の男として扱われる。扉を押さえて必ず女性を先に出す。男性の中でも若い力持ちが1番やらなくてはならなくて、女性の高齢者が1番トップだ。子との同居がなく離婚が多いNYの金持ちは孤独な人は多く、こじらせて性格がとんでもないワガママ老女(ガッツリ寄付金払うので高慢)の学生がいるのだ。

日本人は長く国際結婚してようと、何十年在米してもそういうのに反論しない。いつも無視。アメリカ人も首を傾げる反応の無い穏やかで静かな人種。で、欠落した相手は図に乗る。友人女子達は「ひどいの聞いて〜あの人よ」私にチクる。私にはニコニコしてるが目の奥に「許さねぇ」悪魔が見えるのか言って来ない。で、高慢婆さんをとっ捕まえる。

「ミセス、あの子に何か言いました?」
「何を?言ってないわ〜」 
「"国に帰れ"って言ったそうじゃない。へぇ、じゃあさ、あなたはアメリカンインディアンなの?」

別は
「"あなたの安い絵の具は臭いからあっち行け"ってあの子に言ったんですって?」
「ん?…」
「クリスチャンネームが泣きませんか?何を祈るんだか、ああ恥ずかしい」

男性は老いた女性をいじめてるように見えるので反論は高度なテクニックが必要でお手上げ🤷‍♂️たどたどしい外国人女子の真っ向正論に貧乏学生のロビーは、よく映画にあるあれ。マネージャーは目をキラキラさせ腕をグルグル回すは、知らない人まで立ち上がるは…お祭り騒ぎ。でもサンクスみんな。

私が思うに、白人には時々ビックリするくらいの変わり者がいる。突き抜けてる?
学校で1番人気のMグレーサーというthe芸術家!彼の授業だけに来る絶大な信仰者も多く、毎回長い巻紙(模造紙)で立って描くデッサンのクラスは1時間前からモデルのよく見える場所を取るのに大変。団体写真のように"この隙間から後ろの人、その隙間からその後ろの人"鰻の寝床のような奥深い教室に熱心な人達が見事に詰めたレイアウト、準備万端いた。

Mグレーサーは人の話は聞かないし、何言ってるか聞き取れない学校1の天才肌老人なんです。なぜなのかとにかくよくわからないんですけど大の日本人好き(男女とも)。若く頼りなく見えるのかなぁ?同居する弟子も精神不安定な若い日本人男子がいたりして。こんな感じの風貌(もっとお爺さん)

私は学生ビザを貰ってるので、午前の2クラス終え疲れて帰りたいけど帰れない、午後の授業はマストで出席しなければならない。ギリギリまで近くのカフェで「やだやだ」クダを巻き、遅刻気味に教室へ。満杯なので、もうモデルなんて見えない出口あたりにダルそうに脚立を立てて描き始める。良いのだ、私はやる気がなくて最後になった。自分で選んだんだから良い勿論。

しかし皆さんの憧れの先生Mグレーサーが到着し、出口の辺りにいる私を見て「ん?見えないね」空気は1ミリも読まない老人だがものすごい力持ち?私と私の脚立を持ってグイグイ前へ進み、みんなのセットされた道具をバタバタとドミノのように倒して(やめて〜ああすみません〜)教室は騒然。
「じゃあ君ここで」
周りの人達を蹴散らしてギューッとねじ込まれた私と私の脚立。ヒーッどうしよう…すみません、すみません…でも私がやったんじゃないんです…
全員の「はぁ?何あの子」怨みの視線は私に集中。針のむしろとはあの事だった(汗)


数年後、天才Mグレーサーは路面電車に轢かれて亡くなってしまったのだが。思い出深い人だったなぁ〜。アートスクールのみんなはどうしているだろう?実り多き楽しい日々でした。

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