【短編小説】ノアと亡き夢の花屋 #1
その日は「起きて」という言葉から始まった。
ノアは少し寝ぼけながらも、体を起こして声の主を見た。
「起きて。ノア」
日輪島の伝統衣装を身に着けたシノがそこにいたので、さすがにノアもびっくりした。着物と呼ばれる上着をアレンジした半袖の服に、袴に似せてあるスカート姿だ。一体どこから入ってきたのだろうかと思ったが、ラスターがよく窓から出入りしているのを思い出してちょっとだけ落ち着いた。
「アルシュが大変なことになってるの。もう無事なのはあなたぐらい」
「……アルシュが?」