見出し画像

11、日本に必要な経済政策

ここから具体的な経済政策について論じるがインフレ、デフレなどの用語の解説を先にしたい。現代のリフレ派の言葉を借りるなら景気が良いということは緩やかなインフレの状態である。インフレとは需要過剰と供給不足から起こる現象だ。インフレは貨幣価値が低いため人々はモノを欲しがるようになり、消費と投資が促進される。その高い需要に合わせて生産規模、効率を上げるということが経済成長だ。つまり経済成長はインフレを前提としている。しかしひとえにインフレが良いわけではなく、インフレが進み過ぎると貨幣が紙切れ同然となり経済の前提が崩壊する危険性があり、過度な人々の資金需要を抑えるため増税や利上げといった引き締めがある。また1970年代の中東情勢悪化からくるオイルショックも石油の供給不足から狂乱物価と呼ばれるほどの物価上昇を招き人々を混乱に陥れた悪いインフレの一例だろう。一方デフレは百害あって一利なし。デフレは先ほども述べたように貨幣価値が上昇し人々に消費と投資の需要を抑制させ金回りを悪くするためデフレ下で経済成長はあり得ない。このインフレとデフレの見解は数々の著名な直近の経済学者、評論家で一致しており、通説とみていいだろう。

日本は長期のデフレであるが世界で見てもデフレに悩まされ続けているのは日本だけであり他の先進国は基本的にインフレである。そして1995年から2015年の経済成長率を見るとアメリカは約130%、ドイツは30%と他の先進国は微々たるところもあるが成長しているが、日本だけ-20%と成長するどころかむしろ後退しているのだ。日本の識者に「日本は成熟した社会であるからこれ以上の成長は望めない」と述べる人間がいるがデータで見るとこれほど成長していない国は日本だけなのである。ではデフレを脱却するにはどうすればよいか。デフレが消費と投資を控えさせている状況ならば逆に消費と投資を意図的に拡大すればよいことになる。しかし個人や企業がデフレで不景気の時に消費と投資を控えるのは全くもって合理的で非難の余地がないのが重要な点だ。投資を控えるのは物が売れないため損失を被る可能性が高いからであり、このような状況で事業を拡大する経営者は愚の骨頂であると揶揄されるだろう。自分の給料が上がっていないにも関わらず消費を拡大しては社会を生きてゆくことはできない。これは合成の誤謬といいミクロの視点だと間違いのない行動や判断でもマクロの視点では好ましくない結果をもたらすことがある。デフレやインフレは市場の内部の人間というミクロな存在では変えるすべがなく市場と一定の距離を置け、マクロ経済全体を司ることができる政府の介入が必要なのだ。

ここから先は

2,462字

今年の3月、4月にコロナ禍真っ只中で暇なテルが書いた人口問題に関する論文じみた文章です。人口や少子化という概念を歴史的に分析し、主に人口と…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?