天邪鬼な竹野内豊🇰🇭【スーパースターを目指すカンボジアの若者たち】第8話
🇰🇭ノリ
ケンの設立した芸能プロダクションの事務所は年がら年じゅう解放されていましたが、土日だけ来ていた青年がいます。
彼の名前は、ノリ。
彼の名前、本当はナラッ!みたいな発音をするんだけど、日本人には難しいのでノリ、と呼んでいました。
「ノリじゃないってば。ナラッ!」
「うっせー、ノリを受け入れろ!」
って感じでね。
ノリは昼間は大学、夜は英会話塾の講師という二足の草鞋生活で、事務所に来られたのが土日だけだったのです。
ノリはダンスには興味なく、事務所にあったピアノに触れたくて通っていました。
ピアノを教えてあげるのはレナの役目でしたが、ノリはタタと同様に、いやそれ以上に!生意気な男でした。
下手くそなレナの英語をうすら笑い、レナのピアノの説明に「何言ってんのかわかりづらい」と物申し、挨拶もお礼も言わない男に、レナはこう思っていました。
「せっかく時間を割いてピアノを個別に教えてあげているのに、なんてイヤなヤツなんだ。もうピアノを習いに来なければ良いのに。」
しかも、みんながスーパースターになるぞ!といきり立ってる事務所内で、
「俺は将来、ビジネスマンになって月500ドル稼ぐ」
とドライな口調で言うのです。
じゃあ、なんで毎週欠かさず事務所に来るわけ?
ノリにピアノを教える意味がわからなくなる一方のレナなのでした。
レナのことをイライラさせていた青年・ノリですが、抵抗できなかった人間がいます。
ケンです。
ある日、ケンはノリにこう命じました。
「・・・・お前、毎週ここに来てるな。お前も歌って、踊れ。」
「え?俺はピアノをやりたいだけで踊ったりするのは・・・」
「いいから、レッスンに参加しろ。」
横暴が滲み出る顔のケンの脅しに対し、ノリに拒否権はありませんでした。
みんなと一緒に、ダンスや歌のレッスンに参加するようになったノリ。
・・・あれ?ノリ、リズムが取れる!!
みなさん、ライブ会場なんかで歌に合わせて手拍子した経験はありますか?
楽しいですよね、会場が一体となって手拍子が重なるその時間。
前途したけれど、音楽の授業が無いカンボジア、「音楽に合わせて手拍子」ができない人もたっくさんいます。
ケンの事務所に来たカンボジア人の若者たちもほぼ、リズムが取れませんでした。
ただ、ノリはリズムが取れた。「裏打ち」もすぐに出来ました。
さらに歌のレッスンでも
・・・あれ?ノリ、音程が取れる!!
レナが弾くピアノに合わせて、ノリは音程を外さず綺麗な美声を披露したのです。
ノリ本人も、なぜ自分がリズムと音程が取れるのか?ってことは分かってなかったし、自分がリズムと音程が取れている自覚すらなかったけど、ノリのおかげで他のメンバーは理解できるようになりました。
何がリズムで、何が音程なのかを。
ケンに言われるがままにダンスや歌の練習を始めたノリは、土日だけではなく、平日の夜遅くにも事務所に顔を出すようになります。
毎日毎日、やって来ます。
それでも彼はこう言うのです。
「俺はスーパースターになんかならない。ビジネスマンになるんだ。そのために英語を勉強しているんだから。」
ちなみにノリの顔は、竹野内豊に似ています。かなり細身だけどイケメンよ。
「ノリをアタシの夫にするわ~!」
って、ソヒャップが言ってました。
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