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【創作】詩や小説や絵や

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#旅する日本語

手をつなぎて睦ぶ父と母 大内宿にて夫婦を知る

手をつなぎて睦ぶ父と母 大内宿にて夫婦を知る

それぞれに大きな病を抱えた父と母と、僕の恋人と。
2019年秋。
福島県大内宿旅行をした。

2度結婚して2度離婚した僕だから、籍こそ入れていないがタマキが3人目だ。
「バカ息子が。」とため息をつきつつも、年に1度の親孝行旅行を両親は楽しみにしている。

「レンタル車椅子あるよ。」という僕の言葉を笑顔で断わって、父と母はトボトボと歩く。

脳梗塞の後遺症で上手く言葉の出ない母と。耳の遠い父と。

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恋人のタタキ思いて喉鼓(のどつづみ)

恋人のタタキ思いて喉鼓(のどつづみ)

酒好きの僕らは高知ひろめ市場へ旅に出た。

そして鰹のタタキの美味さに叩きのめされた。
僕らの街の鰹のタタキは、大根のつまを血で赤く染める「チープな酒の肴」の代表だ。
ところが、さすが高知の鰹のタタキは絶品で、ニンニクと塩で食べるそれは、ステーキにも引けをとらない。

  鰹も恋をするのかな
  切り身に裂かれた恋心が赤く光っている

  鰹も眠れぬ夜があるのかな
  藁に焼かれた恋心が恥ずかしそ

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已己巳己(いこみき)の神々

已己巳己(いこみき)の神々

秋田男鹿半島に厳しい冬が来て
山からなまはげが下りて来る

「泣ぐ子は居ねがー」と練り歩く

主人は酒を注ぎ
嫁は肴を出し
子供は泣き叫ぶ

みな同じようでどこか違って
みな恐ろしいようでどこか優しい
今年も
なまはげが暴れて年が明ける

人は鬼であり鬼は神であり神は人である
人は鬼になり鬼は神になり神は人になる

已己巳己(いこみき)の魂に手を合わし
八百万(やおよろず)に神は宿る

そこここに

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不連続の連続

不連続の連続

ヒトヒラの雪 川面に溶け
信濃川の大河 海に流れる
大正の繁栄を懐かしむような万代橋に人影少なく
初冬の新潟は墨絵

この大河のはじまりも
一滴の水
一滴と一滴 集まり
滝に落ち 湖に漂い
沢となり 川となり
ぶつかり 抱き合い
また
海となり 雲となり
また
一滴となる

命はどこから生まれどこへ行くのか
愛は何から生まれ何に形を変えるか

不連続の連続の中に
答えなき問いを繰り返す

ヒトヒラ

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