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プラネタリウムみたいな映画「恋する宇宙」

※この記事は映画「恋する宇宙」の内容のネタバレを含めた感想となっています

星空の思い出

小学生の頃、運良く「しし座流星群」を見ることができました。
午前2時、目覚ましで起きると真っ暗な夜空から溢れんばかりの流星雨。
あの瞬間に空を見ている人は日本中にたくさんいたと思いますが、星空を独り占めしているみたいで「この静寂を誰にも知られず真空パックに入れてとっておけたらいいのに。」なんて真剣に考えていました。

誰かにこっそり伝えたい映画


15年後「恋する宇宙」を観た時、真っ先に浮かんだのはあの時の夜空。

原題は「Adam(アダム)」

邦題だとウォンカーウェイ監督の「恋する惑星」と勘違いされがちですが
静かな夜空が似合う温かくて、ちょっぴり切ない2人の男女の物語です。

【あらすじ】ニューヨークで暮らす天体オタクのアダム。
アスペルガー症候群のため、人付き合いが苦手だった。アダムの住むアパートの上階に童話作家志望の女性ベスが引っ越してくる。
2人は徐々に惹かれ合いやがて恋人同士に。
仕事をクビになったアダムはベスの協力もありカリフォルニアで職を得ることになる。
アダムはベスも一緒に来て欲しいと頼むが…。


純粋で不器用なアダム

アダムは凄いところは、好きなものに対してはどこまでも一途で知識が豊富なこと。

自分の部屋に本格的なプラネタリウムを作り、天体の話を始めたら専門家並みの知識で延々と止まらなくなってしまう。
とても真っ直ぐで純粋な人です。
  
その一方で拘りがとても強く毎食マカロニチーズだったり、融通が効かず自分のルールを崩されるのは大の苦手です。
知らない場所に行くのが怖くて一度も1人で街の外に出たことがありません。

彼を理解していたのは亡くなった父親と、父の友人で長い付き合いのあるハーランだけです。(またこの人が良い人)

彼にとって恋愛以前に友人を作ることが困難。
相手がどんな気持ちなのか想像できない。
相手に寄り添った会話ができない。

「時々難しくなるんだ。
なかなか人とうまく付き合えない。
人の考えがわからない。」


そんな苦悩をベスに打ち明けた時、彼女は少し戸惑いながらもアダムの優しくユニークな一面を見て彼に歩み寄りました。

孤独なパイロット ベスという女性

小学校で美術教師の傍ら絵本作家を目指しているをしているベスは、アダムと真逆でロマンチストで母性の強い女性です。
付き合っていたエリート金融マンとは彼の浮気が原因で別れ、自信家でエリート志向の会計士の父とは意見が食い違いながらも仕事で訴訟を起こされた父を誰よりも心配しています。

ベスは自分のことを「星の王子様」に出てくるパイロットに例えていましたが、本当は自由に生きて行きたいけれど、周りを気にするあまり孤独や寂しさを感じている人生だったのかも。

アダムのピュアで可笑しくて突拍子もない行動はそんなベスの心をほぐしていきます。


宇宙服を着たアダムがベスの部屋の窓掃除に現れるシーンがお気に入りです。

アダムなりの成長


ベスとの関係が進む中でアダムは成長していきます。

転職活動では苦手な面接の練習に励み、ぎこちないけどジョークを言ってみることもありました。

ベスが落ち込んでる時のアダムの行動も、やっぱりぎこちないのだけど人の気持ちを感じ取ることが難しい彼なりの誠意だと思うと切ないのです。


大切なものは目には見えない

ベスにサンフランシスコに来て欲しいアダム。
「なぜ一緒に行ってほしいの?」
というベスの質問の意図を理解することが出来ず、彼女の望んだ答えを伝えることが出来ませんでした。

「愛しているから」たったその一言。
目に見えない感情を伝えることがアダムにはできない。

星の王子様の物語の中では「本当に大事なものは目には見えない」と王子様は気が付くのですが、映画の中でベスはパイロットでもあり本当に大切なものを教えるキツネでもあったのかもしれません。

How far we've come

1年後カルフォルニアの天文台で働くアダム。
ベスはいないけれど彼は変わりました。

衛星の説明をする時には、空気を読んで相手に合わせて話す内容を変えたり、同僚からの仕事後の誘いにも付き会えるようになっていました。

一方でニューヨークに残ったベスは夢だった絵本を完成させていました。
タイトルは「アダム」
いつか2人で見たセントラルパークに住むアライグマの物語です。

この本を読んだ時のアダムの表情が、背景に広がる青空とマッチしていてとても素敵でした。アダム役ヒューダンシーの演技力が光ります。
「目には見えない大切なもの」を彼はきっと知ることができたのでしょう。


ベスのメモに書かれた 【how far we've come】
「やっとここまできました」の一文。

直訳すると 私たちはどこまで来たのか。
どれだけ成長したのかを考える時に使う言葉だそうで素敵な言い回しです。

自分の事だけではなくアダムの事もずっと考えていたのでしょうか。 
アダムに対する深い愛情が伝わります。

実は映画を観た当初は…
「もう2人は別々の道を歩んで再び重なることはない。」と思っていたけれど、メモの意味を知った今「いつかまた出会って一緒に歩いていける2人であってほしい。」と感じています。

サントラも必聴

noteを書くにあたって改めて観たのですが
本当に音楽が素敵。




真夜中のセントラルパークを思い浮かべながら、愛おしくなる素敵な作品に出会えて良かったと心から思います。















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