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子育てな日々によりそってくれる、iimaのうたのこと

耳にした瞬間にすうっと、それでいて後からもじわじわぁっと、日常のなかでしみこんでいく音楽がある。

溶かしたチョコレートに乾いたビスケットをひたすみたいに。

かさかさした日常に、すうっと、じわじわぁっと。

* * *

私がiimaの音楽に出会ったのは昨年4月のこと。

夫が南阿蘇のある復興イベントにかかわっていて、イベント当日、さまざまなクリエイターの作品が上映されたなか、とくに印象に残った作品としてこのムービーを教えてくれたのだ。

『最終回のうた』


まだ慣れない育児に翻弄されるなか、ぽん、と紹介されてちょっと聴いてみただけにもかかわらず、からだのなかの深いところにすっと染み込む感覚があって、心がびりびりとふるえた。

当日イベント会場で、そしてこれまたすばらしいアニメーションとともに大スクリーンで聴いていたら、まちがいなく涙していたな、と感じたのをおぼえている。

そのときはそんな感じで、ああ、いい曲だなあ……、としみじみ思ったものの、そこから何をするでもなくそのままにしていた。

ふれた瞬間に感動する、ということは結構いろんなうたで私はあるのだが、それに加えて、彼らのうたのすごいなぁと改めて感じるところは、それが継続的にというか長期的にというか、冒頭につぶやいたみたいに、ゆっくりと日常のなかにも染み込んでいく感覚があるところだ。

なんだかまたあとから聴きたくなって、何度か聴いているうちに自然とくちずさむようになって、だんだんと詩や曲の世界にひたっていって。

動画が公開されてからは夫にギターのコードを起こしてもらい、私はネットを頼りにそれをコード変換し、妊娠中にはじめた下手なウクレレでぽろんぽろんと弾き語っていた。

気づけば当時0歳の娘を抱っこしながら、子守唄にもこのうたがたびたび登場するようになり。

そんな心地よさに包まれたうた、というか、このうたの心地よさにいまの日常の暮らしが包まれている、というか。


* * *


そのiimaが先日、近くでデビューアルバム発売記念ライブをするというので、わくわくと家族で行ってきた。

ボーカルのマキさんが最初の曲『はじめはひとりで座っていた』で歌いだしたとき、ああ、と心のなかで思った。

ああ、これだ、しみこむ。

すうっと体内にとりこまれて、溶け込んで、気持ちいい。

やさしくて、身を委ねたくなって。なんというか、自然のなかにいるときと似ている。木々の間のこもれびとか、ほどよい陽射しでひなたぼっことか、そういう心地よさに似ている。

そんな感覚を、iimaの曲からは受けとる。


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ライブで聴いた多くの曲を紹介したいところだけれど、アルバム全曲については私がつぶやくよりも公式の特設サイトにマキさんご本人の解説があるのでそちらを読んでいただくことにして。

ここではあくまで主観的に、今の私にとって特にタイムリーで、日常の支えになっている、子育てや新天地での生活にまつわる3曲、をぜひ紹介させていただきたい。

まずは、『はじめまして赤ちゃん』

FBS福岡放送の番組に同名のコーナーがあり、そのテーマソングとして使われている曲なので、見たことのある人には耳なじみのある曲だと思う。

聴いたことのない方も、FBS福岡放送の公式ページで歌詞とともにフルバージョンが聴けるので、小さなお子さんをお持ちのかたにはぜひ、ぜひとも!聴いてほしい。

もう、なんというかね、胸のおくのほうからじんわりと、あたたかい気持ちがわきあがってくる。

明るく軽快なメロディで楽しい曲なのに、こどもの寝顔を見ながら、うでのなかに抱っこしながら、そんなときに聴くと、あったかい涙があふれてくるね、これはね。

生まれたばかりのころをうたっている曲だけど、逆にいま娘は1歳という時期だからこそ、新生児のころを思い返して、あのときはあんなに何もできなかったのに、いろんなことできるようになったなぁ……と思わせてくれる。

目の前のことだけで一日が過ぎてしまう育児のなかで、生まれてきてくれたときの気持ちを何度でも思い出させてくれる、初心に立ち返らせてくれるうた。ありがとう。


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つぎに、『おっぱいぺったんこ』


これはもう、私の場合はまさに今、卒乳にさしかかって「ぺったんこ」へまっしぐら中なので、さらにタイムリーで。

妊娠中に『とある妊婦の脳みそ【1】「宿る」という感覚』でも書いたけれど、誰に教えられたわけでもないのに、生き物として、妊娠したらからだが勝手にお腹のなかで赤ちゃんを育てはじめて、生まれたら母乳が出てそれを赤ちゃんが吸って生きる、という生物的な一連の流れ。

そこで感じたふしぎな感覚が、マキさんの言葉と歌声とでやさしくぽつりぽつりと紡がれて、そうそう、そうそうとひとり頷きながら聴いてしまう。

自分も古来から続く大きな命の流れのなかにいたにすぎないのだな、と気づかされたあの感覚。不思議さ、たくましさ。そして母になってまた新たに見えてきた世界と、出会った気持ち。

そんな、どこか自分のなかにも渦巻いていたその思いをiimaのアウトプットにのせるとこんなふうに明るく、かつ深く、ひびくものになるんだなぁと感動する。

タイトルは『おっぱいぺったんこ』だけれど、母乳育児でもミルク育児でも関係なく、母になったすべてのひとに聴いてほしい一曲。


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そして、『はじめはひとりで座っていた』

これは、マキさんが福岡へ引っ越してきた当初の思いをうたっているもの。

似ているなんておこがましくてとても言えないけれど、ピンポイントに状況だけをみれば、関東からなんのゆかりもないこの地へ引っ越してきた自分としては、たしかに重なる部分があって。

さらに、妊娠中の安静期にもnoteにつづっていたのだけれど、あまりに「ぽつん」とひとりぼっちでいると、自分がいったい何者なのか、わからなくなる感覚にはとても覚えがあり。

人は人との関係性の中でしか自分を見出だせないのだと気づき、それを失ったとき、いったい自分が「今まで自分だと思って生きてきたもの」はなんだったのかなと、ぐるぐる思い悩んでいた当時の気持ちを思い出す。

けれどこのうたは、そんな切実な思いをまっすぐにうたっているのだけれど、やっぱりiimaらしく、どこかあたたかくて、やさしくて、包み込んでくれるところがあって。

『はじめはひとりで座っていた』の「はじめは」という言葉は、今はちがうということの表れでもある。

ライブのMCでもマキさんが「はじめはひとりぼっちだったけれど、本当にいろんな人に出会って、支えられて、この日を迎えられることができて感謝している」ということを語っていた。

こんなに人にしみこむような、すばらしい音楽をうみだす彼女ですら、はじめはひとりでいろいろなことに立ち向かっていたのだ。そう思うと、4月から人脈のないこの地でぽつんとフリーランスを再開しようとしている自分も、がんばるかぁ、と勇気をもらえるのです。

* * *

ああ、あれ?

気づいたら壮大なPR記事みたいになってしまった。もちろん純粋に書きたくて書いているので一銭も発生していません(むしろ個人の趣味でiimaのアルバムは買ったけど笑)。

ライブの終わりに、せっかくひとこと直接感想を伝える数秒のチャンスがあったのに、元来口下手なうえに後ろの行列も気になって、あまりにつまらないコメントしか出てこなかった自分に失望したので、本人の目に入る保証なんてないけれど、インターネットの大海原に感想を放っておきたかっただけなのです。マキさん、違うんです、本当はこういうことが伝えたかったんですと(笑)。

いやしかし、デイリーに消費されるコンテンツじゃなくて、こうやって純粋に自分が興味があって書きたいことを自分のことばで丁寧にことばにすることが、この先じぶんも仕事になっていったらいいなぁ。そのためには相当ながんばりが必要だ。

日々に寄り添ってくれるiimaの曲にはげまされながら、子育てと仕事と、暮らしを、日常を、楽しみたいと思っている。



※以下、2018年7月5日追記:

なんと、まさにこの記事を、数ヵ月の時を経て、マキさんご本人に発見していただくことができました。その一部始終は下のnoteに。後日談としてぜひお楽しみください。

さらに後日談はこちら。ついにマキさんとお会いしました。


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