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信州蓼科の旅(1)官製割引システムのデザイン(旅で★深読み)

「信州割」という県民割が9月末まで延長になり、隣の愛知県民も利用できる、と聞き、蓼科に出かけました。

信州では、南信の駒ケ根エリア北信の白馬エリアと並び、八ヶ岳・蓼科山を中心とする一帯は、大好きな地域です。
このあたりは、北・中央・南アルプスの中間にあり、いずれの山々も眺めることができる好位置を占めています。
本格的な登山もできるし、ハイキングコースも各種揃っています。

「信州割」とは、5千円以上の宿泊費に対して定額2500円の、1万円以上の宿泊費に対して定額5000円の値引きに充てる補助金システムです。
この割引体系はなかなかユニークです。
・宿泊費4999円なら恩恵は無く、その金額を払う。
・1円上乗せ5000円になると、アラ不思議、宿泊費は半額の2500円になってしまいました!
・宿泊費9999円は「-2500」で7499円に値引きされます。
・ところが、やはり1円値上げして10000円だと、5000円と半額に!
つまり、本来の料金順位と割引後の料金順位の間に「逆転現象」(しかも、かなり大きな額の!)が生じてしまうのです。

「おかしいだろ!」
税金の使い方として不公平だ、という人もいるでしょうし、論理的なシステムではない、と批判する人もいるでしょう。

私はと言えば、この手の補助だったり、ペナルティーだったりが必ずしも公平である必要はなく、
《もし、政策として何らかの方向性があり、その方向への誘導意図があるのなら、それで良し》
と思うのです。

例えば《SDGs観点》から、
日本人の履物はきものを合成繊維製の靴から天然素材の草鞋わらじに変えるべきだ
と政府が真剣に考えれば(そんなことはないでしょうが)、
《観光割引は、草鞋わらじをはいた旅行者のみに適用する》
というルールを定めるのも「アリ」と思います。

だから、2020年に政府が《GO TO トラベル》キャンペーンという観光割引を始めた時、
どうして対象を、開発・公開した「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」を利用中の旅行者のみ、に限定しないのだろう?
と不思議でなりませんでした。
(結果的として、野放図なキャンペーンは感染急拡大を引き起こしました)

「それでは、スマホを持っていない人、使い方に習熟していない人に対して不公平になる!」
との声は多いでしょう。
でも、
① 政府が本気でこのアプリを普及させたかったら、そして、
② このアプリが感染爆発防止の鍵になる、と本気で信じているなら、さらには、
③ 本気で《デジタル化推進/デジタル社会実現》を考えているなら、
観光割引の《必要条件》にすべきだった
でしょう。

「公平性」だとかなんだかんだ言い訳をするかもしれません。「省庁間の壁」という本質的な問題もあるでしょう。
でも結局は、政治家(特に司令塔である総理大臣)に、

・覚悟が足りない

・本気じゃない

のだと思います。

だから、「信州割」のユニークなシステム(もちろん、皮肉です)も、何らかの《政策的方向性》を反映したものならば納得できます。
あるいは、
「実はこの方がシステム・コストが安く済む」など《隠れた合理性》があるのなら、理解できるかもしれません。
理由をネットを調べてみましたが、わかりません。
このシステムに対する《疑問》も見つけられませんでした。
出てくるのは、
「信州割でお得になり、うれしいな♬」的ブログばかり。
私にはわからない、システム・デザインの《ヒミツ》があるのなら、どなたか、ぜひ教えて欲しいものです。

夏にやはり隣県の《岐阜割「ほっと一息、ぎふの旅」》を利用したことがあります。
ここでは、
・旅行代金の半額を補助(上限 5 千円/人泊)
であり、《信州割》とは異なり、
・宿泊費4999円→2500円に割引
・5000円→2500円に割引
・9999円→5000円に割引
・10000円→5000円に割引
ということで、きわめて合理的な設計であり、「逆転現象」は起きません

うーん。《信州割》のシステム設計にはどんな理由があるのだろう?

いろいろ考えましたが、たどりついた結論は:

(まさか……)

電卓(機能)を持たない(つまり、「×0.5」の計算ができない)宿泊施設に配慮した!

(としか考えられない!)

中央道の諏訪インターを降りて、蓼科方面に向かう途中、

民宿 素泊まり3500円

と書かれた看板をいくつか見ました。

(この宿に泊まっても、《信州割》は受けられないんだな……。それではお客が来ないかも……。どうしてるんだろう? 一時的に5000円に値上げして2500円の補助を受けるのだろうか? それなら客は2500円で3500円のサービスを受けられるけれど……本来発生しない1500円が、サービス付加なしに税金から引き出されることになる)

あるいは食事を付けて5000円を超えるように工夫するのかもしれません。

(《岐阜割》ならば、単純に3500円→1750円となるのでしょうが……)

《謎》は深まるばかりでした……。

しかも、長野県の隣県のシステムを調べてみましたが、《信州割》ほど大きくなくても、宿泊費の《逆転現象》が起きる県は石川県など他にもありました。一方で、新潟県のように、岐阜と同じ基本半額補助の県もありました。

学校の《校則》についても、

なぜ、その校則があるのか?

《理屈》を問われたら、説明できなくてはいけない、と思うのです。

ましてや、多額の税金を投入する観光割引システムです。
デザインの《理屈》を説明して欲しい。

次は……

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