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霊犬早太郎伝説の光前寺を散策し南アルプスの峰々をながめる 雪山歩けば [3/3] (山で★深読み)

<2/3よりつづく>

標高2600 m超の千畳敷カールが悪天候で凍えそうになったので、ロープウェイとバスで地上(といっても標高850 m)に下りてきました。

「じゃあ、時間があるので、地上ハイキングでマルスウヰスキーか光前寺のどちらかに行きましょう!」
とガイドさん。
駒ヶ根フリークの私はどちらも訪問済ですが、時節柄マルスウヰスキーに行っても《試飲》はできないのでは、と光前寺に。

光前寺仁王門。金剛力士(仁王)像は大永8年(1528年)に作られた。

光前寺は天台宗の別格本山で、
➀ 《ひかりごけ》の自生
➁ 霊犬《早太郎》の墓で知られています。

《ひかりごけ》は、いわゆる「ひかりごけ事件」を扱った武田泰淳の小説表題で有名ですが、仁王門をくぐって伸びる参道の両側、石垣の上に自生しています。
《ひかりごけ》はわずかな生育環境の変化でも枯れてしまう《準絶滅危惧種》で、原糸体のレンズ状細胞が僅かな光を反射するため、暗闇でエメラルド色に光ります。

仁王門から三門へと続く参道。石垣の上に《ひかりごけ》が。

従って、この《エメラルド色の光》を見たければ、夜来なければなりません。光をさえぎって見ようとしたが難しい。残念!

雪の中の鐘楼も風情があります
スギと雪と静寂に囲まれた光前寺本堂
霊犬・早太郎クンの木像。すぐ脇の仏像は撮影禁止。

さて、霊犬・早太郎の伝説とは(少々長い引用ですが):

昔、信濃の光前寺の床下で山犬が子犬を産んだ。光前寺の和尚は親子の山犬を手厚く世話してやった。やがて母犬は子犬達を連れて山に戻ったが、子犬のうちの1匹を寺に残していった。この子犬は早太郎というたいへん強い山犬となり光前寺で飼われた。ある時、光前寺の近くで怪物が現れて子供をさらおうとしたが、早太郎が駆け付けたため、怪物は逃げて行った。さて、その頃、信濃の南隣、遠江の見附村には、毎年、どこからともなく放たれた白羽の矢が立った家の娘を人身御供として神様に差し出さねばならぬ恐ろしい仕来りがあった。これを破ると田畑が荒らされ、村が困窮しきるため、村人は泣く泣く矢奈比売神社の祭りの夜に娘を棺に入れて差出し、これを鎮めていたのだ。
延慶元年(1308年)8月、この地を旅の僧侶が通りかかり、見附村の鎮守であるはずの神様がそのような悪行をなすはずがないと考え、祭りの夜にその正体を確かめようと神社に向かい身を潜めていた。すると、そこに現れたのは神様ではなく神を騙る恐ろしい怪物であり、その怪物が「信州の早太郎おるまいな、早太郎には知られるな」と言いながら娘をさらっていった。怪物が恐れる「信州の早太郎」に怪物退治を頼む他ないと考えた僧侶は、信濃へ行き、1年近くもの間に方々を探しまわった末、光前寺の早太郎を見つけ出し、事情を説明して和尚から早太郎を借受けた。僧侶と早太郎が見付村に辿り着いた時には既に8月に入り、その年も又、村のある家に白羽の矢が立っていた。僧侶は村人と相談し、早太郎を娘に代わって神社に差し出すことを承諾させた。そして次の祭りの日、早太郎は娘の身代わりとなって棺に潜み、現れた怪物と一夜にわたって激しく戦い、見事退治した。人身御供に差し出させた娘を毎年喰らっていた怪物の正体は歳を経た猿の化生「猩々」であった。
戦いで深い傷を負った早太郎は、光前寺までたどり着くと和尚にひと吠えして息をひきとったと言われている。 早太郎を借り受けた僧侶は、早太郎の供養のために大般若経を光前寺に奉納した。これは寺宝として経蔵に保管されている。また、本堂の横に早太郎の墓がまつられている。

Wikiediaより

つまり、光前寺で飼われていたヒーロー犬《早太郎》が、隣の遠江見附村に出没する怪物を退治するためレンタルされ、見事怪物《猩々》を倒したが深手を負い、必死の思いで故郷・光前寺に戻り、和尚に《帰還報告》して力尽きた、というお話です。

ガイド氏がこの話を紹介したら、浜松から来ている女性が、
「遠江側でも、『北の信濃から早太郎がやって来て化け物を退治してくれた』話は伝えられています」
《証言》したため、この伝説は一挙に信ぴょう性が増しましたね。

すごいぞ! 早太郎!

五重塔の脇に早太郎クンのお墓が
早太郎クンの石像もありまっせ

ところで、極悪キャラの《猩々》ですが、こんなヤツらしい:

「和漢三才図会」より

うーむ。ロン毛の《お調子者》っぽい絵ヅラでいけないね、これは。
ただ、若い娘をかどわかしそうな《好きモノ気配》は、顔つきに漂っていますな。

さて、光前寺を後にして、ガイドさんおススメの《南アルプス一望スポット》に向かいます。中央アルプスに比べると少々距離はありますが、雪を被った峰が連なっているのが眺められます
やはり、贅沢な場所だね、駒ケ根は。

富士山に次ぐ標高の「北岳」をはじめとする南アルプスの山々

ハイキングを終えた後は、近くの「早太郎温泉こまくさの湯」で温泉につかり、少々早い夕食を取ります。

スノーブーツとスキースーツから解放され、湯に漬かり、……いてててて、やっぱり凍傷になっちまった! と手首から先だけお湯から上げる《降参》姿で、でも、標高2600 mで冷えた体を温めました。

今回の旅最大の後悔は、入浴後、「こまくさの湯」併設のレストランでとったご当地グルメトリオの写真を撮り忘れたことです。

まずは、「駒ケ岳醸造所」でつくられた《南信州ビール》のゴールデンエール生中ジョッキ! 
細かい話になりますが、通常、地ビールの生って、一般の生より少し高価だったりしますよね。でも、ここはむしろ(30円ですが)安い!
だったら当然、地産地消でしょう。

メインは伊那谷のB級グルメソースかつ丼」からご飯を抜いた《ソースかつ皿》。ソースが2種類あって、市販品よりこの食堂オリジナルの方を強く勧められましたね。
ビールのおつまみその1としてよく合いますな。
生中おかわり!

レストランHPよりソースかつ(といっても、明らかにソースをかける前)

そして「ローカル珍味」は《馬モツ煮込み》。これが柔らかくてうまい!
馬の、たぶん小腸なのかな、片側だけヒダヒダが出ているモツがコンニャクや根菜と煮込んである。

馬肉は熊本が有名ですが、南信州(伊那谷、木曽谷)も馬の産地で、馬刺しなど馬肉はよく知られています。でも、馬モツは今回、初めて食べました。これはイケます!
(写真が……)

さて、最後はJR木曽福島駅から、特急しなので帰りました。
駅には、ホームに氷で作られた器の中にろうそくの灯がともされ、木製ベンチの上に並んで、旅人を見送ってくれました

〈完〉


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