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異国の言葉で《異世界転生》した堅物クン やがてややこし《外国語》(3/3) (再勉生活)

〈2/3からつづく〉

母国語で《聴く》のが苦手な人間は、《外国語》でもやっぱり《聴く》のが苦手 ── 母国語と外国語はあざなえる縄のごとし ── そう書きました。
しかし、少し違った《例》を目撃したことがあります。

新卒で入社して2, 3年経った頃、会社がいくらか補助を出して、就業時間後に希望者対象の《英会話クラス》が設けられました。
若いアメリカ人の女性教師で、クラスには若手ばかり、男女比2:1ぐらいだったでしょうか。
2か月ほどして、アルコール入りの懇親会をやろうよ、という話が持ち上がり、いつもの英会話クラスの時間に社員クラブで開催しました。

先生が最初に、会のルールを宣言しました。
「いい(Listen)、今日の会は全て英語しか話しちゃだめよ。日本人どうしの会話でも日本語は禁止 ── でいきましょう」
すると、驚くことが起きました。

クラスに私と同期入社で、超《カタい》男がいました。同期会(男女半々ぐらい)でも女性には話しかけない。女性から話しかけても通り一遍の応答しかしない。男同士の会話も、仕事の話ばかりしたがる、という困ったヤツでした。
《英会話宴会》が始まって間もなく、この《堅物かたぶつクン》は、総務だか経理だか憶えていないが、とにかくそのクラス1の美女の傍らに直行し、快活に話し始めたのでです。
しかも、いきなり、
「Hi, How are you? My name is KATABUTSU(仮名)」
はともかく、
「You are pretty. Your dress looks nice」
にとどまらず、
「I like you. Do you have a boyfriend?」
まで、一気に突っ走ったのです。

私も他のクラスメイトと歓談を始めたので、その後どうなったのかはわかりません。
でも、このシーンはけっこう強烈でした。
(会話が《外国語》に替わるだけで、《性格》が大きく変わるってこと、あるんだ!)
《堅物クン》の豹変ひょうへんぶりはもちろんすごかったけれど、女性の側も、合コンでもないのに、いきなり《日本語》で、
「彼氏いるの?」
と聞かれたら、普通、引くでしょう。でもなんだか、にこやかに、たどたどしい《英語》で応対していました。

もちろん、このふたりが、《英語の勉強》と割り切っていただけ、という(つまらん!)解釈もあるでしょう。

いや、私は思うのです。
《堅物クン》は、いつもと異なる《言語》を使うことによって、《異世界転生》したに違いない。

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