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Missionary Positionで愛を交わすSiberian Husky犬に、隣家の弁護士は何て声をかけたのか ──《can》と《can’t》の発音聞き分けは難しい!

米国イリノイ州の大学町で、英語学科の教授がsabbatical(長期休暇)で1年間不在の家を、格安で借りて住んでいたことがある。

垣根を隔てた隣家には、米国人弁護士Mと日本人の奥さんが住んでおり、庭で大きなSiberian Husky犬を《つがい》で飼っていた。1頭の体重はおそらく、60キロぐらいはあっただろう。
裏庭から外に出る時に、この《コワモテ》カップルが隣家の庭を縦横無尽に走り回ったり、じゃれあっている姿をよく見かけた。


ある日、僕が仕事(研究室)から戻ると、妻が声をひそめて言った。
「ねえ、犬って、人間と同じように……できるんだね……
「え? どういうこと?」

その日、裏木戸から庭に入ろうとする彼女が、ふと目をやると、隣家の庭でSiberian Huskyのカップルが《正常位》で《イタシテ》いたのだそうだ(もちろん、ヒト・バージョンでいう《正常位》だ)。

「ええ? じゃれ合っていただけじゃないの?」
「ううん、そんなことない。確かに《してた》!
「本当かな。……飼い主の、を見て学んだんだろうか?」
「よく確かめようと立ち止まったら、庭にMがいて、犬に声をかけたのよ。それで私、あわてて家に戻ったの」
「へえ。じゃあ、Mもその《している》のを見ていたってこと?」
「そう。それでね、犬に言ったの ── “You can’t do that” って」
「え、それ、語尾を上げた?」
「……わからない。でも、そんな感じ。『お前たち、そんなことしちゃだめだ』って、たしなめたんでしょ」
「ちょっと待て。語尾を上げたなら、“You can do that?” じゃないの? 『お前たち、そんなことできるのか?』って、驚いたんだよ ── 叱ったんじゃなくて」

この「can」「can’t」の発音の違いは、本当にわかりにくい。「’t」のところは(少なくとも僕には)ほとんど認識できない。
どう区別するかといえば、「YOU can」と「you」の部分にイントネーションを置くのが肯定、「you CAAAN’t(もちろん、大げさに表記すればだが)」と「can’t」側にイントネーションがあって「キャーン」と若干伸ばすのが否定、とそこで判断するぐらいだ。

「『can’t』よ。そのやり方はダメだ、犬なら犬らしくヤレよ、って言いたかったのよ」
「『can』だってば。そんなやり方でスルの、初めて見たから、お前ら、犬なのにすごいな、と感心したんだ」


この《can/can’t 論争》は、僕たちの間でしばらく続いた。
しかし、そもそも、その体位(英語では《Missionary Position/宣教師の体位》)は、犬に可能なんだろうか?

それとも彼女は、とても貴重な《進化の瞬間》を目撃したんだろうか?


追記:この記事を書いた後、友人から連絡がありました。
「The Beatlesの名曲"You Can't Do That"も、《't》は聞き取れないね」


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