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【腐っても鯛】(新釈ことわざ辞典)記事版

腐った鯛は、腐ったイワシよりはるかに有害である ── 腐った後も「私は鯛だ」と高いプライドを持ち続けるから。

正しくは、
【腐ったのに鯛】
【腐った後も鯛】

と言うべきかもしれません。

《腐った鯛》はなかなか始末に負えないものです。

総理大臣とか、知事とか、社長とか、要職を退任した後、まだ影響力を保持している人は、後任になんだかんだと口を出したがりますね。
まあ、これは仕方がないかもしれません ── たぶん本人は《責任感》からそうしているのだ、と信じているのでしょうから。
現職の人にとっては迷惑かもしれませんが、この種の《鯛》は、まだ腐っていません。

本当の《腐った鯛》は、実質的にほとんど力はなく、元の部下や仲間にも《ウザい》と思われているのに、
「まだ影響力がある」
と錯覚
して、Twitter、講演、カキモノなどを使い、後任や現役で頑張っている人たちに手榴弾しゅりゅうだんを投げてきます。

こういう人たちの多くは、本人は必ずしも納得していない「辞め方」をしており、複雑に屈折した《プライド》や個人的な《恨み》からテロ活動を行うのです。

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一方で、要職を退いた後、前の仕事にはあまり口をはさまず、家族のために時間を使ったり、引退後のライフワークを見出したり、別の世界で光を放つ人もいます。

精力的に爆弾を投げ続けるドナルド・トランプ氏をほとんど唯一の例外として、米国の歴代正副大統領にはそのタイプが多いように思えます。
2000年の大統領選挙でジョージ・ブッシュに惜敗した後、《環境活動家》として活躍するアル・ゴア氏などは、《引退後ライフワーク》型のいい例でしょう。

日本の総理大臣退任者にも、引退後のライフワークとして、(政治的ではありますが、アル・ゴア氏のそれにも通じる)《原発廃止運動》を訴えたり、《陶芸》という、まったく違う芸の世界に生きる人もいます。

《鯛》でなくなった後も、いや、《鯛》ではなくなったからこそ、伸び伸びと自由に海を泳いでいます。

── かく、ありたい。

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