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「ああ嫌だ! 髭を剃ったお前の顔を見る度に、お前のWIFEの事を考えてしまう!」 (再勉生活)

米国の大学で電子材料の研究をしていた時、Pという非常に優秀な技術者と、1年ほど仕事をした。
彼は190センチを超える長身で、頭部の毛髪が薄いのを補おうとするかのように、黒々とした口ひげとあごひげを生やしていた。
僕たちが所属する研究室で、彼の他にひげを生やしている者はいなかった。
僕は30代半ば、Pも似たようなものだった。

単に怠惰の産物だったが、僕の顔に髭が伸びてくると、Pはいつも、うれしそうに言った。
「おいPochi、ひげ、伸ばすのか? 伸ばした方が似合うぞ」
数日して髭のない顔を見ると、
「なんだ、剃ってしまったのか」
と落胆したような素振りを見せた。

彼は非常に優秀で、教授に依頼された測定装置の回路設計も、部品を組んでの試作も、易々とこなした。けれど、感情の起伏が激しく、そのため研究室の他の学生と衝突することも多く、どちらかといえば孤独だった。
もちろん、独身だった。
髭の伸びた僕の顔を見ると、《仲間ができた》感を持ったのかもしれない。

僕の髭に関する、Pの《期待》→《失望》が数回繰り返された後、半分ジョークで彼に言ってみた。
「I shave when I need to access my wife once in a while(僕は妻にアクセスしなきゃならない時に髭を剃るんだ)」
彼は苦笑しただけだった ── その時は。

それから数か月が経ち、彼と学内のプールに泳ぎに行った時のこと。
プールサイドで休んでいると、彼は僕の顔(髭を剃ったばかりだった)をチラと見て、首を振り、大声で嘆いた。
「ああ嫌だ! 俺はお前が髭を剃る理由を聞いて以来、髭を剃ったお前の顔を見る度に、考えたくないのに、お前とお前のワイフの事を考えてしまう! ── 考えたくないのに!」

そこで、僕はダメ押しした。
「But, it also depends on the positions(体位にも、よるけどね)」

Pは両手で頭を抱え、さらに大きな声で叫んだ。
「ああ! そんな事はもっと知りたくない!」

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