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ヒミツの書庫《小説・詩・マンガ・アニメ》

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からくり部屋の「隠し本棚」にそっと入れたい、個人的テイストのnoter創作。
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#短編小説

ブルーベリー

「シフォンにブルーベリーがたくさんついてる」  下の娘がいうのを、野崎は気にも留めずにい…

FouFou
2か月前
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応答セヨ #6/6

6  鍵を開けたのはスミスだった。  部屋のなかは真っ暗だった。真夏のことで、室内はサウナ…

FouFou
1年前
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新年の挨拶

 例年仕事納めのあとは川に入るのが日課となるのはご承知のとおりで。胸まであるゴムの胴長を…

FouFou
1年前
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真野さんと吉田くん 9話〜アフタークリスマス〜

12月に入り、空気はだんだんと冬らしい寒さをたたえ、街のそこかしこには、クリスマスを彩る電…

camyu
1年前
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短編「ことに朝は忙しい」

 ソウのお母さんはふくよかなお腹とお餅のように柔らかい頬が自慢で、子どもは全部で十一人い…

いち
1年前
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下北沢『燻製レコード』 【短編:約1400文字】

いつものように下北沢の街をぶらぶらしていると、古めかしい店構えなのに、初めて目にする店が…

camyu
1年前
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小説『マダム』

 何故だ。何故このマダムはスーパーマーケットの生鮮食品売り場で見知らぬ男に乳を揉まれて一切の抵抗をしない。声を上げることはおろか、身をよじって振り解こうという素振りさえない。突然の出来事に思考が停止してしまったのか。それならば有り得る。しかし不可解なのはその表情だ。全身が凍り付いているのなら茫としていい。そうでない場合も、僅かでも苦悶が浮かんでしかるべきである。にもかかわらず、むしろ、男の性的な視線を受け止める愉しみをいち早く覚えた早熟の乙女のように、マダムは仄かな艶めかしさ

【ショートショート】「廻る旅人」(5,531字)

「ごめんください」  玄関のあたりから聞こえた声で、私はまどろみから覚めた。時計を見ると…

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『古いグローブ』

夜勤明け。 アパートの脇に軽自動車を停める。 決まった駐車場ではないが、誰の邪魔にもならな…

マー君
1年前
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ラッキーアイテム(ショート)

 占い師さんにこんな話をするの変だとは思うんですけど、ちょっと聞きたいことがあって。これ…

師走
1年前
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【短編】Misfit13

 今では考えられないことであるけれど、その昔、二十五年程前、私は上場会社の正社員であった…

かんやん
1年前
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ピアニスト (掌編小説)

 ぼんやりツイッターの画面をスクロールダウンしているときだった。その記事に遭遇したのは。…

『流された神様』

いつからその男が住み始めたのかは誰もわからなかった。 気がつけば、その橋の下に住み着いて…

マー君
1年前
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【短編】黄昏の殺人者 後編

 ぼくはしだいに佐々木さんから目が離せなくなっていった。牧さんも、そうだったと思う。それは他の利用者さんを蔑ろにすることではむろんないけれど、重要性において劣るというのか、もはや関心が持てなくなってしまったのだ。なんだろう、仕事に慣れてきて、日々の業務をテキパキと片付けてゆくことができるようになったせいかもしれなかった。  週に二回、朝夕の送迎で佐々木家を訪れるとき、中年の女性が見送り、出迎えに門扉まで出てくるけれど、とくに特徴のない容姿からは、血縁かどうかの判断がつかない