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こんにちはPoBといいます。世界の最果てにあるブログ「PoBtanのブログ」→https://pobtan.hatenablog.comから生まれた謎の生命体です。 ブログではなかなか書けない文章、小説やら長い評論などを書いていくつもりです。 ネットは広大だわ。

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  • 【小説】すべてと無とはじまりと終わりについての話【全8話】

    群像小説です。

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すべてと無とはじまりと終わりについての話(1)

 ぼくは上着を着てビールを買いに外に出た。  すでにもう相当量のビールを飲んでいたが、酔いはほろ酔いと言うのに近く、どちらかといえば精神が解放されて穏やかになっているように思えた。午前3時近くなっていたが、眠気は感じなかったし、喉が渇いていた。立ちあがり上着を着るときに少しふらついた、やはりそれなりに酔っているのだろう。でも不思議だ。頭は心地よく穏やかで、おそらく明瞭だった。そうしてあと何本か飲めば、気分は眠りに落ちるのに丁度よく穏やかになり、頭もそれを受け入れ、眠りに収

    • すべてと無とはじまりと終わりについての話(8)終

       音楽を聞きながら、ふと時計を見ると午後1時近くになっていた。ぼくは思いついて、ユカリからもらった時計を初めて出した、リューズを巻くと、針は少しづつ動き出した。ぼくは午後1時ちょうどに針を合わせ、日にちを合わせた。午後1時近くなると、時報を聞きながら、午後1時ちょうどに時計を合わせ、腕にまいた。ステンレス・スティールのベルトは買ったときに調整してもらっていた。そして窓から雲に隠れた薄い太陽の光を見た。12月22日の正午を過ぎ、13時になった太陽の光だ。 正確に言えばグレゴ

      • すべてと無とはじまりと終わりについての話(7)

        目が覚めた時、時計は12時過ぎを指していた。 ぼくはコーヒーを入れようとしてやめ、昨日の残りのビールを飲んだ。 音楽をかけた、スティーヴ・ライヒの「18人の音楽家のための音楽」。 13時をすぎてエリちゃんから何も連絡がなければ、ユカリに連絡しようと思っていた。 ビールを2本飲み、時計は13時過ぎになっていた。ユカリにメールを入れた。「どうやら一応事態は落ち着いたようだ。君に話をしたい、説明しなければいけないことがある。時間があるときに会いたい。」と。 すぐ

        • すべてと無とはじまりと終わりについての話(6)

          少しベットで寝てしまったようだった。 ユカリからのメールで目を覚ました。「今帰るところ。私もあなたに会いたい。でもまだ出来ないんでしょう? あなたのことは信頼している。私は何も心配していない。だから、落ち着いたら連絡してね。」と書かれていた。「ありがとう、君は何も心配しなくていいことだ、ただ説明ができないってだけ。プレゼントを考えておいて。」とぼくはメールを返した。 時間は午後5時少し前になっていた、バイトに行かないと。メールが来て助かった。 服は学校にいくその

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        すべてと無とはじまりと終わりについての話(1)

        • すべてと無とはじまりと終わりについての話(8)終

        • すべてと無とはじまりと終わりについての話(7)

        • すべてと無とはじまりと終わりについての話(6)

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        • 【小説】すべてと無とはじまりと終わりについての話【全8話】
          8本

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          すべてと無とはじまりと終わりについての話(5)

          エリちゃんは電話口でまた少し泣いていた。 「どうしてかはわからないけど、加藤くんが私に連絡して欲しいって言ったみたい。」 秘密を知る人間は少ないほうがいい、それに彼女に知らせれば、少なくともぼく達には伝わると判断したんだろう。彼らしい。相変わらずクールで、そして冷酷だ。しかしそれが彼にとっての優しさなのだ。 「ねえ。これは飽くまでおれ達だけの問題だ。君に迷惑をかけて申し訳ない。それはおれが謝るよ。加藤はそうすることがおれ達のためになると思ってそうしたんだから。でも

          すべてと無とはじまりと終わりについての話(5)

          すべてと無とはじまりと終わりについての話(4)

           朝9時に電話がかかってきた。まだ寝てはいたが、昨日は早く寝たからそれほど眠くはなく、すぐ起きて、携帯電話を見た。加藤からだった。珍しいことだ。 「綿谷がパクられたらしい。」と加藤は言った。 ぼくは少し考えて言った。「ドラッグか?」 「ああ、なんのクスリかはわかんないけどな。綿谷の女からさっき連絡があった。」「昨日の夜取引してる時にパクられたみたいだ。」「お前、ガンジャはもう吸ったか? まあ綿谷が喋るわけないけど、何かあったら全部捨てておけ。」と加藤は言った。

          すべてと無とはじまりと終わりについての話(4)

          すべてと無とはじまりと終わりについての話(3)

          ぼくがいった後も、ぼくたちはしばらく抱き合っていた。女の子が本当にオーガズムに達しているのかどうか、ぼくにはわからない。あまりに多くの要素がそこにありすぎる。男に比べたら1+1=2の足し算とフェルマーの最終定理ぐらい違う。いや、それはある意味では違いがないのかもしれない。どっちがより難解だと誰に言えるだろう。ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学を比べるようなものだ。それは星のように遠くにあるのだ。  しるしのように短いキスを何度かして、そのあと深くキスをした。ぼくは

          すべてと無とはじまりと終わりについての話(3)

          すべてと無とはじまりと終わりについての話(2)

           昼休みが終わり、3時限目が始まった。 ぼくはユカリが少し怒っていたことを考えた。「まあそうだろうな。」とぼくは思った。 思い出してみればぼくは友達と飯を食って、麻雀をして飲んでいる間、彼女のことを考えもしなかったのだ。友達が「彼女に連絡しなくていいいのか?」とちょっと聞いてきて、大丈夫だよ。と答えた。それぐらいだ。 「可愛い娘なのに。明るくて気さくだし。頭もいい。」と友達は言った。まあね。とぼくは言った。ぼくは少し照れていたのだ。子供みたいだ。中学生の頃からそう

          すべてと無とはじまりと終わりについての話(2)

          【ショート・ショート】「ぼくは本当にそこにいたんだろうか?」

          親戚に不幸があった。長い間疎遠になっていた伯母だった。もう会うこともないと思っていた。でも聞かされれば行かないわけにはいかない。 家に伺って、死に顔を観て、焼香をした。 あとはお決まりの流れ。通夜と葬式。誰もやらないから受付役。べつに気は進まないが無難に親戚としての役割を終え、それで本当の終わり。もう関わりを持つこともない。そう思っていた。 でもそうではなかった。まったくそうではなかった。 ぼくは死の強い匂いをそこに感じずにはいられなかった。 「それはぼくの死なのだ。」「ぼ

          【ショート・ショート】「ぼくは本当にそこにいたんだろうか?」

           【小説】「からっぽの部屋」

           序  からっぽの部屋があって、からっぽの男が住んでいた。 どうしてからっぽになったのかはわからない。からっぽの部屋がかれをからっぽにしたのか、それともかれが住んだためにそこがからっぽの部屋になったのか。いずれにせよ、そこはからっぽの場所だった。  からっぽの男は、からっぽのまま恋をして、恋人を作った。恋人はやがて男と一緒に住むことになった。女はからっぽではなかった、しかしそこにいるうちにやがてからっぽになっていった。その場所が女をからっぽにしていった。  からっぽになった

           【小説】「からっぽの部屋」